SS小説「ひとつの愛しか抱けない」

私の居場所は知ってる。でも自由な場所は知らない。
包まれるような愛をくれるあなたが重ねる言葉は、ピンと来ないまま時間が過ぎていく。

だって、選ばれるのは私以外じゃなくちゃダメなの。
傷つけられて、奪われて、削られて。
脳髄が痺れて吐き気のする愛の抱き方しか知らないの。

足らなくて、寂しい。


穏やかな気持ちになれる人を知ってる。でも安らげる人と一緒にいられる方法は知らない。ほんとうはあなたとずっといたい。

だけど、首輪を付けられ管理されなきゃダメなの。
歪まされて、躾られて、凹まされて。
狭い箱の中で与えられる愛の抱き方しか知らないの。

いびつで、満たされない。

昔からの愛を手放せない。
欲しがることしかできない。
立ちつくしてる、今も。

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