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鍵穴

鍵をさす。石と石をぶつけたような音がして、扉が開く。玄関でブーツの紐を外して、ブーツを廊下と玄関の間に落としながらリビングに入る。
彼が私に声をかける。遅くまでお疲れさまやら、リオの好きな番組録画しといたやら、冷蔵庫に具が入ってるからスパゲッティ茹でるよだの、私が求めている優しい声をかけてくる。その声を無視して、ソファに座ってた彼を押し倒して、灰色のシャツを脱がした。
彼は私のヒモだった。
ソファの上で彼のシャツを脱がせる。彼の体は細くもないし、肉がある訳でもない。食べても美味しくないだろう。彼の乳首を舐めると羊が原っぱを駆ける姿が脳裏に浮かんだ後に、うっすらと汗と牛肉の内臓のにおいがした。
長ズボンとスイカ柄のパンツを脱がすと、上へと向かう男根が見えた。彼は麺だの冷蔵庫だのテレビだの戯言を言わなくなり、クッションで顔を隠しながら、おちんちんをおっ立てていた。
私は彼の乳首に舌を這わせながら、彼の陰茎に目をむけた。赤黒く膨張している彼の先から、透明な液体が漏れ出ていた。
私はそれを見た瞬間、全てに満足した。彼がつけたテレビのナレーション、鈍く光る電灯、うっすらと漂ってくるトマトを炒めた匂い、それらの中で眠りについた。
下半身に違和感を覚えながら、枕元に目をやると時計は丁度長針も短針も真下を指していた。後ろに目をやると、目を充血させた彼が上下に揺れていた。
身体に意識を集中させると、下半身に違和感があった。潤いを失いながら、太陽が照りつける河原に転ぶ石のように固くなったものが、ガムのように柔らかくなるのを待っていた。時計はいつの間にか短針が7をさしていた。