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ファンと生み出す唯一無二の世界観。クリエイター・原田ちあき流“自分らしさ”の保ち方

個人の能力を活かして独自のフィールドを作り、活躍の場を広げるクリエイター。私たちSNS時代のプロモーション企画集団『餅屋』では、そんなクリエイターと共に企業の課題解決に向けたお取り組みを実施しています。

今回、私たちがお話を伺うのはイラストレーター・漫画家の原田ちあきさん。鮮やかな配色と、どことなく懐かしさを感じられるようなレトロなタッチ、そしてほのかに尖りのあるセリフをあしらったイラストが多くのファンを魅了しています。

そんな原田さん、肩書きこそイラストレーター・漫画家と名乗られていますが、実のところは展示やイベントのキュレーション、コラムの執筆、コラボカフェの開催、衣装デザイン、京都芸術大学の非常勤講師など一つの肩書きや在り方にとらわれない豊かな活動をされているんです。

どんな場所に置かれてもその原田イズムは溶けることなく強く生き続け、一人、また一人とファンの輪を大きくされている様子がとても印象的。そこで、原田さんに無二の世界観を作り出すまでの軌跡と、ファンコミュニケーションの極意を尋ねてみました。

原田ちあき  イラストレーター/漫画家
キュレーター、アパレルデザイナー、コピーライターなど活動が多岐にわたる為、現在自らの職業を「よいこのための悪口メーカー」と称し活動している。
【著書】
誰にも見つからずに泣いてる君は優しい(大和書房)
手から毒がでるねこのはなし(ソニー・ミュージックエンタテインメント)等

話題になるものは分析して取り入れる。「原田ちあき」ができるまで

原田ちあき様_4

── お話できることを楽しみにしていました、今日はよろしくお願いします。本当に多岐に渡って活躍されていらっしゃるので伺ってみたいことがたくさんあるのですが……SNSでの創作の発信はもう随分と長いですよね?

原田:今ファンの方が最も多いSNSがTwitterなんですが、Twitterを始めたのが2009年……なので約12年前。Twitterの前にもmixiやpixivで描いたイラストを投稿していたので、もう随分長いこと描き続けて発信しているみたいです(笑)。

── 日本版のTwitterリリースが2008年と思うと、すごく早い段階からSNSに触れていたことになりますね。当時からカラフルなイラストを描くことが多かったのでしょうか?

原田:いや、昔はペン画を描いていることが多かったんですよね。今のように艶やかな色合いではなかったですし、モノトーンのイラストもありました。

── たしかに作風は今と大きく違いますね……! 今の世界観に至るまでには、原田さんの中でもさまざまな変化があったのかなと感じます……。

原田:それはもう、本当に。「紆余曲折」という表現がぴったりです。Twitterを始めるまではただ好きなイラストを描いて投稿するだけだったんですが、Twitterという“拡散”の文化があるSNSが面白くて……のめり込んじゃったんですよね。

── ご自身の作品が多くの方の目に触れたり、リプライやファボ(当時)などの反応につながることが面白かった……?

原田:そうです。特にフォロワー数が増えていく様子がなんというか快感で。まるでゲームのような感覚で「このイラストはどうだろう?」と描いたイラストを通してユーザーの反応が見られるSNSという仕組みそのものを楽しんでいました。

── イラストを描いて投稿するというアーカイブとしての楽しみから、誰かに見てもらうイラストの楽しみへと変化があったんですね。SNSでの反響はいかがでしたか?

原田ちあき様_3

原田:ある程度の反応はありましたが、同じようにイラストを投稿している方と比べると全然人気がありませんでした。そこから作風をいろいろと変え始めたんです。「もっともっと自分の作品を多くの人に見てもらいたい!」と思うようになって。

── モチベーションは「作品を広めたい」という気持ちに宿ったんですね。ということは、カラフルな作品にチャレンジしたのもその頃ですか……?

原田:そうです! 当時のわたしのイラストは白黒が中心だったので、SNSのタイムライン上では目に留まりにくいのかなと思いました。そこで、あえて派手な色使いのイラストにチャレンジしたんです。

人の肌をあえて青く塗ってみたり、線を大胆に太くしてみたり……周囲のクリエイターさんの発信を参考にしながら、自分らしい作品を模索している期間がありました。

そんな創作と発信を繰り返すうちに、今の作風の基盤である「カラフルな女の子のイラストにネガティブなセリフを添える」というアイデアにたどり着いたんです。

── カラフル、女の子、ネガティブ、セリフなど、原田さんの創作にはいくつかのキーワードが関わり合っていますよね。カラフルなイラストはテイストを試行錯誤する中でトライしたものだと思いますが、その他はどういった運びで取り入れたのでしょうか……?

原田:「女の子」と「ネガティブ」はプライベートで失恋をしたことがきっかけでした(笑)。当時、イラスト界隈はポジティブな雰囲気をまとった作品の発信が多かったのですが、等身大の自分らしく失恋したときの悲しさや悔しさなんかを創作に取り入れてみようかなって。

それから、セリフを添えるという漫画の手法は友人であり漫画家の七野ワビせんちゃんの創作から学びました。

彼女は当時から、Twitterで“今日の漫画”と呼ばれる一枚漫画を投稿していたんです。それがすごく面白かったし、実際にバズっていて。「ワビせんちゃん、すごい! うらやましい〜!(笑)」なんて思いながら、わたしも自分の創作に漫画らしい要素を加えてみることにしたんです。それが2014年頃でした。

誰よりも自分が「原田ちあき」のファンであるために

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── 原田さんらしい作風にたどり着く過程を伺っている中でも感じますが、一つのアイデアや考え方にとらわれずに軽快なフットワークでチャレンジされていますよね。新しいフィールドへ飛び込むことに対する不安はあまり感じないですか?

原田:むしろ新しいことが大好きなんだと思います。今も昔もいろいろなことに興味があるし、やってみたいこともたくさんあるんです。今となってはイラストレーターと名乗らせていただいてますが、昔はお笑い芸人になりたくて養成所に通っていたこともありましたし……(笑)。

── 他のインタビューで仰っていたのを拝見してすごくびっくりした記憶があります(笑)。イラストに固執したわけではなく、たまたま縁やタイミングが生まれたのがイラストだった、という感覚のほうが近いですか?

原田:そうだと思います。もちろん、イラストを描くのが趣味だったからという背景はありますが、たまたまライブハウスの方と仲良くなってイラストを用いたフライヤーデザインを頼まれたり、知り合いの本屋さんで長期の店番をお願いされたつながりでその本屋さんを会場に個展を開催できたり……。ある意味、覚悟を決めすぎずに飛び込んだことで開けた道なのかもしれません。

── 新しい環境に飛び込んだり、初めての挑戦をするときって体力も精神力も使うと思うんです。原田さんの中でチャレンジしてみようと思える源泉ってどういうものなんでしょう。

原田:自分自身を“面白い状態”で保てているかどうか、だと思います。わたしって、自分のことをすごくナルシストだなあと思うんです。“原田ちあき”の一番のファンは自分だなって。

「こんなことをする原田は面白いか?」「今後、原田が楽しめる企画はなんだ?」のように、頭の中で“原田会議”を開催しているんです。原田の思う、面白い原田を目指しているし、その過程そのものも楽しんでいるような。

「原田の描いたイラストが楽しめる空間があったらめっちゃ良い!」「わかる!」みたいに脳内で会議をしていたら、それが未来でコラボカフェの開催につながっている。そういう風に、仕事や肩書きに依存しない自分の理想の姿を考えるのが趣味なんだと思います。


「応援していることが誇らしい」と思える人になりたい

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── ご自身のワクワクする創作を叶える過程で、原田さんは多くのファンの方に出会い、そのファンの方ともまっすぐに向き合っているのかなと日頃の発信から感じます。原田さんにとっての“ファン”ってどのような存在なんですか?

原田:今も昔も一切変わらず、本当にありがたい存在。この一言に尽きます。だってこれだけ創作に携わる方が多い世の中で、自分の描いたイラストに出会って好きだと思ってくれることってほとんど奇跡だといっていい。

── 原田さんのその思いがブログやコラムなどの言葉選び、向き合い方などからも溢れていますよね。ファンの方との距離感や振る舞い方で意識することはありますか?

原田:「偉ぶらないこと」でしょうか。

── 偉ぶらない……?

原田:「原田ちあきを応援しているなんて……」とファンの方が周りのお友達や家族とかに言われてしまうことのないようにしたい、というか。

── ご自身の発言やスタンスがファンの方を傷つけてしまうことのないように、ということでしょうか。

原田:そうですね。応援することが恥ずかしいと思われないようにしたいんです。わたしの作品は比較的サブカル寄りな作風ですし、ネガティブなセリフを用いた創作も多い。ただでさえ一癖のあるわたしの作品を好きだと言ってくれる方のことは本当に大切に思っているし、ファンであることが誇りであるような人でいたいです。

── ご自身の認知度やフォロワー数などに左右されず、常にその気持ちをお持ちだからこそファンに愛される関係性を築けるのかもしれませんね。最後に、原田さんがこれからチャレンジしたいことを教えていただけますか?

原田:本当にたくさんありすぎて……難しいですね(笑)。新しいことにチャレンジしてみたい気持ちもありますが、今までやってきた楽しかったことをまたやりたいなって気持ちも強いかもしれません。

以前、SPINNSさんとコラボして作ったグッズ制作も楽しかったですし、コラボカフェもすごく楽しかったなあって……。これまでは拠点である関西を中心としたイベントが多かったので、せっかくなら東京でコラボカフェを開催してみたいですね。あとは、海外ですね。台湾とかアメリカとか、興味のある地域で個展やイベントなんかも開催したいです!

とにかく自分自身が楽しいと思えること、そしてファンの方が楽しんでくれること、それらを常に考えながらワクワクする人生を生きていたいと思っています!

── お話を伺っていたら、なんだかわたしまでエネルギーをいただけるようでした。今日はお時間をいただきありがとうございました!


写真・文:詩乃

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