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新たな長寿価値『貢献寿命』とは、どんなもの?

9月28日開催「人生100年時代、新たな長寿価値“貢献寿命”の延伸に向けて」ニッセイ基礎研究所主催のwebセミナーを聴講しました。
講演者は、秋山弘子先生(東京大学名誉教授)。秋山先生のご講演は初めて拝聴しました。

●いつまでも豊かに生きるには

人生が50年と言われていた時代から、人生100年時代と言われ、2倍となった今、定年後は余生というにはあまりに長く、セカンドライフとしてどう生きるか、どうデザインしていくが問われています。

一昔前までの
「高齢期になると年とともに体力も能力も衰えていくもの」
といった高齢期を否定的に捉えるのではなく、
「人は年をとっても、健康で自立し社会に貢献できることが重要」
という「サクセスフル・エイジング(Successful Aging)」の理念がアメリカで提唱されました。高齢期をよりよくポジティブに生きるための研究(そしてビジネス)がここから盛んになったそうです。
そして、サクセスフル・エイジングの実現の条件として「病気や障害がない」「なるべく高い身体能力や認知機能を維持する」「人生の積極的な関与」という3つを挙げています。

●日本の高齢者は「就労」によって社会参加?!

この中でも「人生の積極的な関与」(→社会参加?)として、日本では「就労」が注目されています。日本人は「働く」ことで、つながりをつくる人がとても多いからでしょうか。

日本の現状として、少子化による労働人口の減少、定年以降の収入の確保の必要性があること。
内閣府調査では、現在働いている人50-60代(という限定ですが)の約4割は「働けるうちはいつまでも働きたい」と回答があり、高齢者の働く意欲が高いこと。
秋山先生からは、この「いつまでも働きたい」というのは、日本特有のもので、欧米は早くリタイアしたいと考えるとのこと(文化、価値観の違いなのか、日本だけ? 他のアジアは? どうなんでしょうか?)。
そして何よりも、今の高齢者の健康レベルは向上しています。
高齢者の就業率が高い都道府県ほど、医療費が低くなる傾向にあります
(健康だから働いているのか、働いているから健康なのかという、鶏と卵論争はありますが…)。
「高齢者の就労」は、社会ニーズと高齢者の心身の健康づくりの視点からはメリットであることは確かなようです。

●高齢者の就労が「個人」にも「社会」にもよりよくなるために

秋山先生は「貢献寿命」とは「社会とつながり、役割を持ち、誰かの役に立つ、感謝されるといった関わりを持ち続けられる人生期間」 と定義されています。
(貢献寿命は、Engage Life Expancyの訳語で、貢献寿命というネーミングでよいかなどはかなり議論されたとのことでした。) 健康寿命は、自立した期間を指しますが、貢献寿命は社会や人とつながりを維持した期間ということになるようです。

「何歳になっても社会とつながり、役割をもって生きる、収入を伴う仕事に限らず、些細なことでもありがとうと感謝される、そうした自分であり続けられる、そうした高齢期の日々を最後まで歩んで行ける社会」

セミナー資料

をコンセプトとした研究プロジェクトが、文理融合+ビジネスノウハウを兼ね揃えた学際研究チームで進行しています(東京大学、一橋大学、リクルートマネージメントソリューション、ニッセイ基礎研究所等)。
具体的には、

○ 新たな長寿価値「貢献寿命」を開発し、社会に広く提唱する
○ 貢献寿命の延伸につながるシニア向け就労・社会活動の選択肢を拡げる
○ ICTプラットフォーム『GBER』で社会実装を実現する

セミナー資料

といった内容らしいです。これにより、

「シニア労働の特性として個人で働くことにかかる制約を克服する、複数人の力を合わせるモザイク型就労と、個人目線で就労・社会参加の機会を拡大するICT基盤「GBER」」の実現

セミナー資料

を考えているとのこと。
高齢者の就労に限らず、時間的、身体的などさまざまな制約があったり、自由度を高く働きたい人たちなどが働きやすくなる仕組みとして、モザイク型就労は最近よく耳にします。
『GBER』は、地域活動を検索したり、予定を管理したりできるマッチングアプリのようです。このアプリでここらへんを上手にマッチングすることができるのかもしれません。

また「高齢者の選択肢を拡げる」「ICTプラットフォームの社会実装」。
どこかで聞いた内容だなと感じましたが、厚労省の総合事業の検討会でした。

こうした事業に、上記の研究プロジェクトなど、民間を活用した展開が考えられているということでしょうか。新しい試みとしての民間活用、継続的に使われるものとなり、地域にも個人にもよいものになるといいですね。

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こちらのWebセミナーはメルマガ会員向けの無料公開セミナーでした。聴講を希望する方は、ニッセイ基礎研究所サイトで会員登録後、直近に開催したWebセミナーのアーカイブ配信URLが表示されるようです(←たぶん、サイトより引用)。

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