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ぼくの空

空を見上げることが好きだ。
今日の空は、ぼんやり霞み空。
桜の花ってどうしてこんなに一斉に咲くんだろう。
鼻歌混じりの河川敷。
今日もおじさんが、
いつもの場所で、いつものように、
「アルハンブラの思い出」を奏でている。
おじさんのギター、いつも同じ個所でつまずくんだよな。
アルハンブラの空は、
ここの空とは違うのかな。
さぁ、明日は、なにを着ていこう。

空を見上げることが好きだ。
今日の空は、新緑の隙間に見える青空。
君の顔にかかる影に、
ときどき、きらきらと太陽が眩くて、
太陽にくらんだのか
君にくらんだのか
分からなくなる。
なんてな。
明日も、君と帰る時間が一緒になればいいな。

空を見上げることが好きだ。
今日の空は、もくもく入道雲。
みんなで遊んだあのうだるような夏の暑い日を思い出す。
蝉がこれでもかと大声で鳴く。
夏休みって暇だな。
田舎のおじいちゃんの家の庭先で
大きな蟻の巣を掘り返す。
洗濯竿に干された白いシーツがはためく。
明日はなにをしよう。

空を見上げることが好きだ。
今日の空は、どんより曇り空。
だよねえ。
どうしてあんなこと言っちゃったかな。
そんなこと言うつもりじゃなかったのに。
また、勘違いさせちゃったかな。
でも、自分でも本当はなにをいいたかったのか
よくわからない。
なんだろう。このもやもや。
明日こそは、ごめんって言おう。

空を見上げることが好きだ。
今日の空は、ふわふわうろこ雲。
ところどころに残る夏の跡。
少し汗ばむ体に、
秋風が心地よく吹き抜ける。
来年の今頃、
ぼくはどこにいるのだろうか。
明日がくるのが少しだけ怖いな。

空を見上げることが好きだ。
今日の空は、夕焼け小焼け。
真っ赤な太陽。
金木犀の花が香る。
ちくっ
なんでこんなに胸がいたいのかな。
つがいを追いかける赤とんぼ。
カラスと一緒に帰りましょう。
ぼく、この歌、寂しくなるから嫌いなんだよな。
まだ、家に帰りたくない。
明日も不自由だ。

空を見上げることが好きだ。
今日の空は、高いなぁ。
手を伸ばしても届くわけないのにね。
でも届きたいんだ。
空っ風に吹かれて、
くしゃみを1つ。
やれるだけのことはやったさ。
明日はきっとなにが起きてもだいじょうぶ。

空を見上げることが好きだ。
今日の空は、外国の空。
色も、雲の形も、流れる早さも、
聞こえる言葉も、
街の匂いも、
こんなに違うんだね。
明日を不自由だと感じた僕に、
こんなに自由になれる日がくるんだよと
教えてあげたい。

空を見上げることが好きだ。
どうしてこんなにたくさんの色が
存在するのかといつも驚いてしまうんだ。
どんなに落ち込んでも、
空を見上げると、
俯いてた顔が上を向く。
顔が上を向けば、
明日を生きる勇気が湧いてくる。
だから、空を見上げることが好きなんだ。


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