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灰色の地平線の中で

聞き覚えのない大きな音が
耳に鳴り響いたかと思うと、
なにかが窓を叩きつけた
私はすぐさま窓の外をみた
地上から巻き上がる一陣の風が
残っていた木の葉を
一瞬にして吹き上げていた
大量の葉が宙に舞い
空はあっという間に黄色に染まった
それは自然の摂理の反する動きのようで
私の鼓動は早まった
外では大地の怒りをかったかのように 
大粒の雨が地面に急降下しはじめた
豊かな秋色を携えていたはずの木々は
幹と枝だけがあらわとなって
寒々しく揺れている
嵐と雨のつづく街
道に落ちた 腐った果実
なにひとつとて
私を鎮めてはくれない

私は部屋を飛び出し
駆け出していた
雨に打たれながら空から降る黄色を
ただ茫然と眺めていた
それはほんの束の間の出来事だったが
永遠のようでもあった
孤独のなかに差し込んだその色は
あまりにも綺麗だった
あれは幻だったのだろうか

私が見上げていたはずの空には
いまやどこまでも続く灰色しかない


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