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0. 海が好き。だから始めたのかは分からないけど。

私がサーフィンを始めたのは、
大学入学とほぼ同時期。 

正確に言えば
父が本格的にハマり出した頃にも
幼かった私も何度か連れていってくれて
自力で立てていたらしい
が、ほとんど記憶にない。

ただ、海は好きだった。
東京から2時間ほど車で走った先で
山を越えるとがらりと空気が変わり
時間の流れがふわっと緩む場所。

小学4年から吹奏楽を始め
夏休みはほとんどなくなった。
中学高校も部活に勉強に
結構忙しく過ごしていた。

そんな中でも
半年に一度くらいは海に行き、
その度に”好き”を実感していた。

夏の海は暑い。
そしていろんな人で賑わう。
そんな海ももちろん好き。

だけど私は冬の海の方が好きだ。

キンッ、と音が聞こえるほど
空気は鋭く澄んで
目の前の海は目に刺さるほどに輝く。
夕焼けの時間はさらに綺麗に。
(海の中で見る夕焼けはまた一段と素敵。
特別すぎるから別の機会にじっくりと。)

そして、日が落ちると
あっという間に暗くなり
夜がくる。

眺めているといつも
吸い込まれそうになるのだ。
自然の陰の力みたいなのが
より強く濃く、滲んでる。

サーフィンはやらずに
一日中海辺で過ごしていた
あの頃からすでに、
ほとんど無意識的に
”もっと全身で感じたい”
と考えていたのかもしれない。

高校2年でオーストラリア留学に行く頃には
サーフィンをやりたい気持ちが
高まっていたことを覚えている。

だけど残念なことに、
私の派遣先は海より森の方が身近な
ブリスベンの内陸側の端っこ。
サーフィン文化の栄えた素敵な国にいるのに
あまり味わうことができないまま、帰国した。

(留学のこともそのうち書くつもり。
私の人生には大きな影響を与えたのは
間違いない。)

そして、大学受験を終えた春休み、
久々の海へ向かった。
変わらずそこにある景色に
心が癒やされると同時に
胸は高鳴っていた。

着慣れないウェットスーツに足を通し
重いロングボードを抱えて海の中へ。

そこで、私は自然の力に圧倒された。
押し寄せる波でうまく前に進まない。

板を持っていかれそうになるのを
ギリギリで堪える。
ボードを持って海に入るのは
こんなに大変だったのか。

見た目よりも何倍も苦労して
足の着くところで
まずはスープにトライする。

※スープ: 波が崩れてからの白波のこと。
本来であれば、波が崩れる前のうねりの段階から追いかけて、崩れるギリギリの1番パワーがあるところでいろいろな技をかけていく。

案外あっさり立てたので、
次はうねりから乗ることに挑戦。 

これがとんでもなく難しかった。
まず、どれに乗るのかさっぱり分からない。
父親の声を頼りに必死にパドルをしても
置いていかれるばかり。

おかしい。
思っていたのと違う。
なんか、楽しくないかも。

そう思い、ちょっと体も冷えてきた頃
私はたまたま一本の波を掴んだ。
少し胸を張り、立ち上がらずに
そのまま岸まで腹這いだった。

それでも、
波を捉えた瞬間の海との一体感、
そして波が自分を運んでくれる感覚に
心を掴まれた。

暗くて波が見えなくなるまで
何度も何度もトライし、
ヘトヘトになって海から上がった。

結局、その日自力では
立てなかったと思う。

だけど、間違いなく私は
サーフィンの持つ魅惑的な力に
吸い込まれたんだ。

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ここまで読んでくださり、
本当にありがとうございました。
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