田中真吾@医薬品開発

田中真吾(Shingo Tanaka) 職業:製薬メーカー開発戦略担当←臨床薬理コン…

田中真吾@医薬品開発

田中真吾(Shingo Tanaka) 職業:製薬メーカー開発戦略担当←臨床薬理コンサルタント←製薬メーカー臨床薬理担当

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医薬品開発における臨床薬理/Clinical Pharmacologyとは何なのか?

はじめまして。田中@臨床薬理屋です。 医薬品開発業界で約10年臨床薬理担当をやってきましたが、この「臨床薬理」って何なのかを人に説明するのがかなりしんどいんです。 業界に詳しくない人たちには、そもそも医薬品の「研究」と「開発」の違いもわからないわけで、臨床薬理を説明するのが面倒なので「医薬品の開発をしてます」と自己紹介したところで、「普段は白衣を着て試験管とか振ってるんですか??」とかなります。合コンとかでね…。 このアカウントはそもそも医薬品業界向けに立ち上げた部分が

    • 製薬企業のR&Dサイエンティストの生み出す価値

      ご無沙汰してます。田中です。 昨年、ダラダラと執筆をしていたら1年が終わってしまい、なんならシン・臨床薬理屋を廃業することになってしまいました(笑) 廃業記念ポストはまたいずれ執筆するとして、昨年1年間も使ってダラダラと書いていたシン・臨床薬理屋が感じていたことを、今回は紹介できればと思っています。 コストが高すぎる日本と、それは正当だと考える現場これは過去記事でも書きました。とにかく日本で医薬品を売ろうとすると、その初期薬事コストが高すぎるのです。 驚きのポイントは

      • 臨床薬理屋は今後も食っていけるのかー製薬ビジネスの側面から考える臨床開発サイエンティストの価値

        こんにちは!田中@臨床薬理屋です。 だいたいどのエントリーも同じ書き出しから始めていますが、これに代わる新しい書き出しを考えないといけないかもしれません。というのは、年末恒例の振り返りをTwitterで行ったのですが、こんなことを書いてしまったのです。 これは結構正直な気持ちで、自分のサイエンス力のみで食べていくのは難しいなと思ったのです。やっぱりそれはアカデミアでの仕事なんでしょうか。 製薬会社の中のサイエンティストの存在価値今でも臨床薬理屋の「看板」は掲げてはいて、

        • 日本で最新の医薬品が使えなくなる日―日本の医薬品開発をめぐる公衆衛生上の重大な問題

          こんにちは!田中@臨床薬理屋です。 どこかで書いたかもしれませんが、現在私は某海外公衆衛生大学院のオンラインMPH(Master of Public Health)コースに通っています。海外大学院のオンラインコース、結構いいですよ。日本の大学院に変に通うよりもはるかに融通が利きます。 当初は、医薬品開発における細分化された専門性としての臨床薬理専門家からいかに外側の領域に専門性を広げていくかという観点で、統計や疫学を勉強する機会を持とうとの目的で始めたことなんですが、大学

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        医薬品開発における臨床薬理/Clinical Pharmacologyとは何なのか?

          提言:Clinical PharmacologistはClinical Strategyを担うべきではないか?

          どうも、田中@臨床薬理屋です。ご無沙汰してます。 これまでの記事で、製薬メーカーの一開発担当者がリストラを経て臨床薬理屋として小さなコンサルティングファームで働くまでの過程や、製薬メーカー外部に医薬品開発の専門家が位置していることの意義をお話ししてきました。 驚くべきことに、同じような考えを持った投資家集団が、医薬品開発コンサルティングファームのグローバルネットワークを作るという事業に乗り出し、僕の所属している会社を買収してしまいました!! 35歳にして小さな会社に移り

          提言:Clinical PharmacologistはClinical Strategyを担うべきではないか?

          製薬R&Dのサービス化&外部化と臨床薬理屋の「成立」

          こんにちは!田中@臨床薬理屋です。 このnoteを始めて以来、僕は自身の仕事を「臨床薬理屋」と称していますが、「臨床薬理屋」の「屋」は、八百屋の「屋」、よろず屋の「屋」、電気屋の「屋」で、何かを売る人の意味です。電気屋さんは家電メーカーのことではなく家電小売サービスを行うお店のことですが、僕自身も自身の専門である臨床薬理をサービスとして売ることによって当面の生計を立てようとしているというのは、前回の記事「なぜ製薬会社キャリアから降りたのか:"独立系"臨床薬理コンサルタントキ

          製薬R&Dのサービス化&外部化と臨床薬理屋の「成立」

          なぜ製薬会社キャリアから降りたのか:"独立系"臨床薬理コンサルタントキャリアを選んだ理由

          テーマ設定で自分を縛りすぎてノート更新が滞ってしまうのもよくないと思い、あえて前回からの続き物を書くのをやめ、徒然なるままに思いついたテーマで書こう、でないと続かないと思いました。。 プロフィールには「臨床薬理コンサルタント」なる怪しげな職種で自己紹介を行ったのですが、今日はここに至った背景をお話できればと思っています。 振り返り:なぜこの業界にやってきたのか?僕が学生生活を送ったのは、まだ薬学部が4年生だった頃で、僕の薬剤師免許証を交付したのは当時の舛添要一厚生労働大臣

          なぜ製薬会社キャリアから降りたのか:"独立系"臨床薬理コンサルタントキャリアを選んだ理由

          BIA10-2474事件ーTGN1412事件との違いは何か?

          どうも。田中@臨床薬理屋です。 少し間が空いてしまいましたが、前回までのTGN1412の特集はいかがだったでしょうか? 実は、この特集をやるにあたってTGN1412事件について改めて調べることになり、記事を書きながら考察を深めていくことで、初めて気づいたことがいくつかありました。ちゃんと調べるというのは大事なことですね。 TGN1412事件については原因がなんとなく見えてきたこともありここでいったん一区切りとさせていただいて、次の事件に進もうかと思います。 臨床薬理業

          BIA10-2474事件ーTGN1412事件との違いは何か?

          ヒト臨床試験の初回投与量設定ーMABELの概念があればTGN1412事件は防げたのか?

          こんにちは。田中@臨床薬理屋です。 前々回、前回とTGN1412事件について考察をしつつヒト初回投与試験における臨床薬理屋の仕事を紹介しているわけですが、pvは伸びているんですけど、なかなかお金を払ってまでという方はなかなかいらっしゃいませんね。 そこで若干反省いたしまして、もう少し有料部分に何が書かれているのかがわかるようにしなくては、と思いました。 前回はTGN1412事件の原因について、僕なりに核心に迫ったつもりです。 今回のテーマとしてMABELを取り上げてい

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          ヒト臨床試験の初回投与量設定ーMABELの概念があればTGN14…

          ヒト初回投与試験のための安全性担保ーTGN1412のリスクは把握できていたのか?

          こんにちは。田中@臨床薬理屋です。 記事を書いている側としても、お読みになっているみなさんとしても、時間がたってしまうと何をしようとしていたのかがわからなくなってしまうことがあると思います。今回はまさにそうです(笑) 復習をしましょう。TGN1412事件について現在取り扱っているのですが、前の記事で紹介した熊谷先生の解説論文を使って、もう一度事件のoutlineをさらってみます。 3月13日,英国北部に位置するノースウイック病院に併設された臨床試験ユニットで行われた初め

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          ヒト初回投与試験のための安全性担保ーTGN1412のリスクは…

          ヒト臨床試験を始めるための非臨床試験ー臨床試験のリスクを担保する毒性試験

          どうも。田中@臨床薬理屋です。 前回記事で、 医薬品開発において重要なことは、この次のアクションのリスクの把握にあります。と書きました。TGN1412事件では、薬理作用は期待通りに発揮されたのにも関わらず、サイトカインストームという重篤な全身炎症状態を引き起こしてしまいました。 何故そのリスクを予測できなかったのか?これを考察していく必要があります。 しかしその考察にはかなり時間がかかります。note数回に渡って記載していきますので、一歩ずつ進めていきましょう。 医

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          ヒト臨床試験を始めるための非臨床試験ー臨床試験のリスク…

          TGN1412事件ーヒト初回投与試験の抱えるリスク

          どうも。田中真吾@臨床薬理屋です。 このnoteとtwitterのオフィシャルアカウントを開設して1週間がたっているのですが、フォローワーはなんと0人のままです! このアカウントはオフィシャルアカウントとしてあくまでコンテンツで勝負し、フォローバックを期待するようなフォローは行わないと心に決めているので仕方ないのですが、何のレスポンスもないというのは寂しいものです。 ただ、まだコンテンツがほとんどないので仕方ないですね!少しずつ書きためて行くこととしましょう。 さて、

          TGN1412事件ーヒト初回投与試験の抱えるリスク

          臨床Phase 1試験で起きた3つの事故について

          こんにちは。田中@臨床薬理屋です。 Twitterでも言ったのですが、僕がこのnoteを始めようと思ったきっかけは、去年(2019年)に日本で実施された健康成人ボランティアを対象とした臨床Phase 1試験において死亡事故が起きたこと、これがきっかけになります。 一般に臨床薬理屋は、臨床Phase 1試験の企画立案を行う、具体的には用法用量を決定する最も責任の重い(と本人は少なくとも思っている)立場にあります。 臨床薬理屋の立場でこのニュースを聞いたときには大変衝撃を受

          臨床Phase 1試験で起きた3つの事故について