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皆既月食とオムライス


皆既月蝕だったらしい。
2時間の残業を終えていつも通り地下鉄に乗り込み、スマホに目を向けると、家族のライングループで父と妹が月が欠けるのを面白がっていた。日頃の出来事はツイッターで確認するのでトレンドを見ると、見事に、何年に1回だとか、iPhoneでうまく写真を撮る方法やらで賑わっており、そうか月蝕だったのかと知る。昨日とかから言ってた?まったく知らなくて情報遮断されていた気持ちになる。ネットニュースもテレビもほとんど見てないので自ら遮断しているに等しいけど。こういうのを前日とかからちゃんとわくわくできる人が結局幸せを掴むんだろうと思う。

遅ればせながら、月蝕まだ見えるかなと家族に問うと、妹が最寄り駅の歩道橋からよく見えたと教えてくれた。最寄り駅に着いて歩道橋に向かいながら、どの方向に月があるんだろう、見つけられるかな、見つけられずきょろきょろするのはなんとなく恥ずかしいななど考えていたが完全に杞憂だった。同じ方向の空を見上げる人集り。一眼レフを向けている人もおり、間違いなくその先に月があると察して向かった。

欠けた月があると思い見上げた空にあるのは、完全にいくら...赤く、端の方だけ少し薄く見えるのが、いくらの中の気泡に見えた。かわいい。写真のクオリティに限界のあるiPhone8しか持ち合わせていないため、とりあえず1枚だけ写真に収めて帰路につくことにした。お腹がすいた。

今から帰ってなにか作る元気もなく、近くにあるポムの樹に駆け込んだ。選択肢の中にそれがあれば、だいたいいつも迷った末に選んでしまう候補が存在する時がある。私にとってポムの樹はそれにあたる。つよい。

ポムの樹に来ると、クリームソースとあのやたらに美味いバターライスのマリアージュが圧倒的存在感を放ち、だいたい似たようなものを食べる。一応あの壮大なメニューを全て確認し、その上でちゃんとクリームソースを選ぶ。そのためそこそこの時間悩む。
今日はホタテとエビのクリームソースかホタテのトマトチーズクリームオムライスかでかなり悩んだ。多分いつもなら、最終的には白いクリームソースの前者を選ぶのだが、今日はなんと後者を選ぶことにした。意外だった。ポムの樹ではいつもいろいろの選択肢のうちで悩んで、えい!と頼んでしまうので、もし注文したものと持ってこられたオムライスが違っていたとしても、あ、最終的にはこっちを選んだのかと納得してしまうかもしれないとか思いながら待ち、来て、食べた。やっぱりかなり美味しく、満足して帰る。

あとになってカメラロールの月の写真とオムライスの写真を見て、今回トマトチーズクリームを選んだのは赤い月の影響だと思い至る。無意識の単純明快さ。

帰り道ではさっきの赤い月とはうって変わって、白く輝く三日月と、円を影みたいな黒で補う月が見えた。30分程度でこんなに変わるのかと見蕩れていた。信号を待つ合間に。

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