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未明、私、東京という街

ある日、未明。



ほんのわずか、そよぐカーテン。
小刻みな振動が駆け抜けたかと思えば、今度は身を翻すように緩く波を打ちながら、少しずつ広がっていく。

それを認めながら脚にシューズを履き、怠そうなスウェットにハーフパンツを纏いつけただけの大胆な扮装で、鍵をかける。


今宵は月のいい晩だ。
あてどなく漂うように歩く自身と、仄白い灯りが重なる。
まるで舞台照明のようにさらされた自身が地面に浮かび上がった。








10月4日







語らいやグラスの触れ合う音、粋な音楽に擦れ合う靴の音、皮膚の声。


平日と言えど、東京という街は飾燈(ネオン)と人熱れでざわめいていた。



都会の喧騒……というやつだろうか。
私にはどうも合わない。



「戻ろう……」




小さく呟いた言葉など、この場所では掻き消される。
私は足早に人熱れの中を潜り抜け、自家へと歩を進めた。





15分後。


奥まった一軒家の、屋根や窓ガラスは月光で冷たく輝き、暗い木立の遥か上を雲が走り、その切れ目から鈍色の月が陰気にこちらを伺ってくる。






これだ。私が求めていたものは。





これだから、散歩はやめられない。









昂る心を鎮める。
が、その眼は青い燐光を帯びていた。
そして、そのまま彼の意識は闇と空気に同化していった。










月が彼を見放すまで、あと2時間。






2019年10月4日

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