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【インパクト投資】Impact Investing Bootcamp

11/4,5の土日でインパクト投資に関する集中講義がありました。

OxfordのフェローであるAunnie Patton Powerさんがファシリテーターとなって、実務家のゲストを招きつつ、インパクト投資の概観をつかむという2日間の集中講義です。

この集中講義のメインターゲットはインパクト投資について学びたい学生ですが、受講のための選抜もあります。
CV(履歴書)の提出、ファイナンスや社会的インパクトに関する経歴があるか、といった一般的なものに加え、「インパクト投資界隈の人と話して、その内容を記載せよ」というネットワークを重視した応募条件もありました。

「選抜がある」とはいったものの、結局100人弱が合格していたようです。
平日の疲れを取りたいはずの週末にインパクト投資を学ぶ意欲のある学生が100人弱いるということは、それ自体すごいことだと思います。

講義は以下の構成で進みました。

1日目
・インパクト投資入門
・IMM(インパクト測定・管理)概論
・インパクト投資のキャリア
2日目
・インパクト投資とデュー・ディリジェンス
・インパクトファンドの組成
・インパクトファンドのポートフォリオ組成

各講座は90分構成で、間に休憩を挟みつつ、9:30から15:30まで講義を聞きました。各講義のざっくりとした内容は次のような感じです。

・インパクト投資入門

そもそも「インパクト投資」とは、というところから始まって、GIINの公表資料を踏まえながら、インパクト投資の市場の大きさや投資家・投資先の分布等について確認しました。
リアルタイムの集計機能を使って「インパクト投資に関わるならどの業界で働きたいか」「経済的リターンとインパクトの両立を求めるならどの業界に投資するか」といった質問について学生にアンケートを取ったりもしました(ちなみに「ファンド」「ヘルスケア」が学生間では最多の回答でした)。

・IMM(インパクト測定・管理)概論

ホットな論点であるIMMについて導入的な講義が行われました。
インパクトの5次元(5 dimensions of impact)について各要素に分解しながら解説がなされたり、Theory of Changeについて説明がなされました。
学生からの質問が盛り上がり、IMMの実務的な適用については時間切れになってしまって言及がなく、残念でした。

・インパクト投資のキャリア

インパクト投資に関与するためのキャリアは誰にでも広く開かれているという話と、なぜインパクト投資にコミットするのかという自己分析のために時間が割かれました。
また、インパクト投資ファンドへのインターンシップの機会を大学が提供するプログラム(Project Aspire)の紹介も行われました。

・インパクト投資とデュー・ディリジェンス

Big Society CapitalのManaging DirectorであるDouglas Sloanさんがインパクト投資ファンドの案件ソーシングとDD(デュー・ディリジェンス)について実務的な観点から説明されました。
案件ソーシングについては、①インパクトテーマの設定、②案件の創出方法、③スクリーニングに細分化の上で話がありました。③スクリーニングの際にどのようにバイアスを排除するかという話は面白かったです。
また、DDについてはリスク評価として以下のリスクに注意するべきという話がありました。

1. Evidence risk
2. External risk
3. Stakeholder participation risk
4. Drop-off risk
5. Efficiency risk
6. Execution risk
7. Alignment risk
8. Unexpected impact risk

https://impactfrontiers.org/online-curriculum/impact-risk/

・インパクトファンドの組成

どのようにインパクトファンドを組成するかという方法論ではなく、実際に稼働しているインパクトファンドについての説明が2つのファンドの実務家からなされました。1つはアフリカの企業に投資するインパクト志向のファンド(フィランソロピーによる出資がメイン)であり、収益は全て再投資に回すというものでした。もう1つはマーケットリターンを追求するカーボンクレジット制度を利用したファンドでした。

・インパクトファンドのポートフォリオ組成

どのようにファンドのポートフォリオ構成を組むかというテーマですが、一般的な理論というよりも、講演してくれた実務家のポートフォリオと組み入れの基準・指針について解説がなされました。

講義を受けた感想

上記の通り、講義内容は一般的なものと具体的事例に寄り添ったものに二極化していたため「まぁこれは知ってるな」というものと「1つのケースとして参考になるな」というものに分かれた感じでした。

どちらかというと、講義後にゲストスピーカーに質問をしに行った際の対応の方が印象に残っています。
例えば、ファンドオブファンズを運営するBig Society Capitalの方には「企業のインパクト評価とファンドのインパクト評価は同じか?」という質問をしたところ「基本的には5 Dimensionを利用しているので同じと言えるが、投資先ファンドのトラックレコードや投資への意思決定プロセスも評価対象となる点で差が出てくる」という回答をいただきました。
また、「ホールセラーとしてイギリスのインパクト投資業界への影響力は強いと思われるが、BSC内でインパクトのあり方を定期的に見直しているのか?」という質問にも「定義を変えることはできないが、定義の解釈を変えることで柔軟に対応している。例えばJust transitionやAIの登場はその契機となった」という興味深い回答をもらえました。

学生の参加姿勢に関しては、講義中は常に質問が飛び交っており、意欲と関心の高さを感じました。
Aunnie Patton Powerさんがクラスの最後に「MFE(MSc in Financial Economics)からは例年参加者がいないのだけれど、今年は参加者がいて嬉しい。だって、彼ら・彼女らの興味は経済的な点であって、インパクトには興味がないからね」と冗談を言って教室の笑いを取っていましたが、学生の間でインパクト投資への認知・関心は確実に高まっているのだと感じました。

また何かインパクト投資関連で書けそうなことが出てきたら記事を更新しますので、よければ覗きにいらしてください。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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