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ゲームブック制作日誌2【元剣士と雪の民】・その3・印刷について(+オンデマンド印刷本の波打ち修復法)・誤字脱字のお詫びとお知らせ

先日制作したゲームブック、「元剣士と雪のたみ」の、印刷に関する覚え書きと、誤字脱字のお詫びです。

今更感もありますが、2023年末に発行した三冊目のゲームブック制作日誌の前に公開いたします。
記事のまとめは↓こちらです。「元剣士と雪の民」と、「竜姫のために 光る木の実と灯台守」の制作日誌です。




「元剣士と雪のたみ
・判型:文庫判(A6)
・表紙:カラー。ダストカバー無。帯付き。
・ページ数:140P
・付録:しおり兼冒険記録用紙
・価格:600円
・表紙:マットコート紙180kg・本文:コミック紙(クリーム)


印刷について

自主制作本は、お金をかけてよい仕上がりにするのも、できるだけ安く刷るのも、そしてそれをいくらで売ろうとも自由です。

今回、一冊目(初版)の本とは別の印刷会社様に依頼いたしましたが、結果としては、単価がやや高い、前回利用した会社様の仕上がりの良さを実感いたしました。
といっても、今回はその分安かった上に短納期で仕上げていただいたので、不満はありません。むしろ納得というか。両社とも値付けが絶妙です。
 
少部数を現実的な値段で印刷してもらえる会社様が複数あり、
・「少しでも安く」に応えてくださる会社、
・それに多少上乗せ(仕上がりの差に納得できる額です)することにより、充分に満足できる品質で仕上げてくださる会社、
内容と予算に応じて比較検討でき、選択の余地があることが大変ありがたいです。

覚え書き
表紙の厚さと本の開きやすさの関係
今回の本の表紙はダル系のマットコート180kg(紙厚0.21mm)です。
表紙が固く、少々開きづらいです。
厚さだけの問題ではなく、依頼した印刷会社様は、表紙は逆目になる可能性があると書いてあるので、逆目だったのかもしれません。
世の中のオンデマンド本を参考にノドの余白を計算しているので、ものすごく読みづらいということはないかと思うのですが、一般的な商業文庫本や、(当方が発行した)一冊目と比べると開きません。

・表紙が厚い・固いと本の開きが悪くなる。版型が小さいほど影響が大きい。
・厚さだけでなく紙のコシの強さも影響するので、可能な限り見本などで現物確認するとよい。
・薄すぎると背のり付近が波打つとか、別の問題が発生する感。
ちょうどよかった:コート紙160kg 0.18mm、クラフト129.5kg 0.17mm
開きづらい:ダルコート紙180kg 0.21mm
★本文にコミック紙を使ったのも開きづらい原因の一つかもしれません。名前の通り、主にそれほどページ数のない、A5-B5などの大判まんが同人誌を刷るために作られた紙かと思うので、多分文庫サイズで使うことは想定されていない=コシが強めなのかも。
私は割と嵩高紙が好きなので、今回印刷セットの選択肢にあったコミック紙を使ってみたのですが、今後同じ印刷セットを使うことがあれば、無難に小説系でよく使われている淡クリームキンマリの70kgあたりを選びたいと思います。
 
表紙のフルカラー印刷について
・薄い色が飛びました。具体的には、C8%+M1%など、総インク量10%未満のところが真っ白です。
(今回依頼した印刷会社様、カラーはRGB印刷対応ということで、RGBモードで入稿したのですが、CMYK値で書いた方が分かりやすいのでそうしております。あと、オンデマンド印刷なので正確にはトナー量ですが、PsやIlでの表記に合わせています)

https://printking.co.jp/doujin/concept/

↑印刷を依頼したのとは別会社様ですが、プリントキング様による説明ページでは、オンデマンド印刷機で印刷する場合、10%未満の薄い色は飛ぶ(ことがある)と書いてあったので、その現象が発生したようです。
なお、上記のページは、本の波打ち現象等の印刷特性についても書かれているので、オンデマンド印刷の利用を検討されている方は一読の価値ありです。

全体の色味は想定内で、色転びはありませんでした。
なお、描画の際、CMYK印刷に出ない色(彩度の高い色)はほぼ使用しておりません。CMYKモードで入稿したらどうだったか、少し気になるところではあります。

対策:薄いところは飛ぶものと思うか、色が飛んでほしくない場所については、仕上げた後に色調補正(レベル補正かトーンカーブあたりで、薄い色の総インク量を10%より増やす)をしてから入稿するとよい。その場合、多分ギリギリを狙うより、12,3%以上とか、余裕を持たせた方がいいような気がします。
うすーい色がうすいまま出てほしい場合は、オンデマンド刷りはやめてオフセット刷りにするとよいかもしれません。
 
表紙の紙について
表紙はダルコート紙、PP貼等の加工なし、良くも悪くも「白い紙」そのものなので、(色の薄い部分が飛んだこともあり)率直に言って安っぽい感じであることは否めません。
★実際安かった上に、短納期で刷っていただいておりますので、そういうものと納得しております。
きれいな仕上がりを求めるなら、時間をかけ、出すもの¥を出すべし。

オンデマンド印刷の紙にPP加工をすると反る、固くなるので開きが悪くなる、という問題もありますが、素朴すぎる仕上がりはちょっと……という場合は、PP貼りを行うか、特殊紙に刷るとよいかもです。
キラキラ系で、コート紙より少し薄い紙を候補にしていたのですが、そちらの方がよかったかもしれない、と思っております。

本文印刷について
本文は白黒刷です。文字部分については問題なし。ルビもきれいに出ていました。データと出力内容が異なるということもありませんでした。
(サードパーティ製のアプリで書き出したのではなく、InDesignで作ったデータをPDF書き出し(PDF/X-4)して入稿しているので、文字化け等が起こることはよっぽどのことがなければないはず)
挿絵は、原寸1200dpi(InDesign上での拡縮なし)の白黒二値画像ですが、細かいところが飛びました。
 
★今回、初版を別の印刷会社様に刷っていただいた本の第二版も同じところに依頼したのですが、初版だと出ていた線が出なかったので、明確に差があります。印刷機の違いなのか、RIP処理の違いなのか。詳しい方がいたらぜひご教示ください。
1200dpiの画像を600dpiに落として印刷している、または1200dpiの画像をそのまま出力できる能力がない印刷機で刷ったような見た目です。
 
黒が白になったというほどではなく、能力不足だったな……という感じの差なので、元データを見ていなければ、こんなもんかなーという仕上がりです。
 
対策:今回の印刷会社に依頼するなら、細かいところは飛ぶものとして依頼する。妥協したくない場合は、料金は上がるがしっかり印刷してくださる会社に依頼する。
★今回は、印刷費と売価を下げたかったので安い印刷会社様に依頼しましたが、万一在庫を売り切ることがあれば、重刷分は初版を刷った印刷会社様に依頼することを検討しています。予定は未定のため、実際にはどうなるか、どうするかは分かりませんが……。
 
余談。イベントにて、印刷会社「ねこのしっぽ」様のブースで、本文印刷見本をいただいてきました。オンデマンド、オフセット、それぞれの印刷方式で本文用紙数種類に刷ったもの。ねこのしっぽ様のオンデマンド印刷は、半マット系のトナーです。
興味深いのが、オフセット印刷はインクなので紙にしみこむ、オンデマンド印刷はトナーなので紙に乗っている、ことによる見た目の違い。
オンデマンド印刷の方が明らかに黒い。こってりと、しみじみと黒いです。


オンデマンド印刷本の波打ち問題と修復法

今回、オンデマンド本の特性が出てしまい、本にかなりの波打ちが発生しました。
波打ちとは、文字通り、本が波のようにぐねぐねと曲がる現象です。
(オンデマンド印刷はトナーの定着に熱を使うため、印刷によって紙が一気に乾燥し、その後外気に触れて水分を吸った際、紙がヨレてしまう) 
初売りイベントでは検品して影響の少ないものを販売いたしました。
波打ちが激しいものは、数日漬物のように重しを載せてみましたが改善せず。
横がだめならと縦置きにしてさらに数日経過したところ、なんとだいぶ落ち着きました。
そこで、改めて重しを載せたところ、ほぼ問題なくまっすぐになりました。
★オンデマンド本の波打ちにお悩みの方、縦置きをお試しください。
(縦横関係なく、単に時間の経過によって落ち着いた可能性もあります)


参考:一番最初に依頼した本もオンデマンド印刷ですが、全く波打ちしておりませんでした。紙の相性などもあるかもしれないし、その印刷会社様にはオンデマンド本を落ち着かせる技術があるのかもしれませんし、加熱対策機能のある機械をお持ちなのかもしれません。

最初に依頼した会社様は、余部1に対し、角がつぶれてしまっていた本が2部あったことと、背厚計算ページで算出された予定背厚が実際より-1mmぐらい薄くなったこと以外は大変すばらしい印刷会社様でした。
なお、厚さについては印刷会社様に問題があるのではなく、紙は公称の厚みに対し±10%のブレが仕様で、たまたま薄い方にブレただけなので運が悪かったという他はないのですが……。
何となく厚い方にはブレにくいような気がします。


誤字脱字のお詫びとお知らせ

以下の箇所に誤字、脱字がございました。前回に引き続き、大変申し訳ないことです。深くお詫び申し上げます。
一覧と、自力貼り込み修正をしていただける方向けのpdfデータがございますのでご確認ください。
 
締め切りがあれば完成する、というハナシもありますが、ぎりぎりすぎると確認がおろそかになってしまうという悪例となってしまいました。
今後は、最も大事にしたい、初版を発売直後に購入してくださる方々にご迷惑をおかけすることは(可能な限り)ないよう努めます。
今年(2024年~)は、充分な校正・校閲を行う時間と、完成後、寝かせて見返す時間を必ず作って印刷工程に進みたいと思います。
しかし、この「〇〇日までに形にする」という区切りがなかったら、多分今も完成しておりません。うう、難しい問題だ……。

★10/1の「ボドゲガレージ」でご購入くださった方へ:
(新刊として販売しましたが、重大なエラーがある状態(行き先パラグラフの指示が抜けているパラグラフがあります)で販売してしまったため、交換対応いたします)今後「XS」が直接参加するイベントに現物をお持ちいただければ、修正済の本と交換いたします(第二版との交換になります)。または当方にて貼り込み修正させていただきます。
お手数をおかけいたしますが何卒よろしくお願いいたします。

★10月~11月の通販、11/11の「文学フリマ」でご購入くださった方へ:
上記エラーは修正済ですが、その他の部分に誤字脱字があり、追加修正が必要です。今後「XS」が直接参加するイベントに現物をお持ちいただければ、当方にて貼り込み修正させていただきます。


また、イベントで修正用紙を配布しております。
上記ページに出力用pdfデータを上げておりますので、ご自身で修正していただける場合はご利用ください。
★在庫分につきましては、当方にて貼り込み修正を行ったうえで販売いたします。何卒ご了承ください。

通販はBOOTHで行っております。今まで発行した三冊のゲームブックを販売中です。良かったらご利用ください。
★追記:いろいろ書きましたが、件の初版は完売いたしました。皆様ありがとうございました。2024年春に諸々修正した改訂版を重版いたします。第二版は予価700円です。
初版ご購入の方で、第二版もご希望くださる方には、印刷費の一部をご負担していただく形となり大変恐縮ですが、予価200円で販売いたします。
何卒よろしくお願い申し上げます。
イベントでの初版修正対応につきましては、当方がイベント参加している間は必ず対応させていただきますので、大変お手数をおかけいたしますがお声がけください。
修正用紙はお声がけ不要でお持ちいただけるよう、手前に置いておきます。


↓続きはこちら