筑波凜

作家|ポッドキャスト、ラジオ、文章、コントなど|Podcast「年中花見東京」

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マガジン

  • foever young

    若気こじらせエッセイ集 - "foever young" - 日常の気になるアレコレを、妄想と勢いで800字程度のエッセイにまとめています。 電車に乗った5分でも読めますので、生活の狭間で是非。

最近の記事

渋谷のタワレコ前

 流行はF1かのように、ものすごい速さで目の前を通り過ぎる。メディア業界で仕事をしていると、「知らない」を可能な限り減らすため、あらゆるツールを駆使して流行をキャッチ、時には先回りする必要がある。スマホのホーム画面には、アプリが増えるばかり。「エンタメ」と名付けたフォルダは、五ページにわたってアプリを収納し、画面を見ているだけでも重い。 「なんとしてでも、データの使用量を最低限に抑え、効率的に流行をさばけ!明日までにやれ!」  そんな司令が脳内に通達された。その日から、私の流

    • 地球上のストレス値

       高校時代の私は、地球上のストレス値は一定であると、本気で思っていた。  ストレス社会と言えど、誰かが多大なストレスを感じているということは、地球上のどこかで、その分のストレスが解消されているのではないか…逆も然り。簡単に言えば、そういった理屈である。  月曜日。襟足の髪の一部が外へと跳ね、直せど直せど頑固に跳ね続ける髪に嫌気がさしていた頃、荒川の河川敷のラグビー少年が見事なスクリューキックを蹴り込む。  火曜日。アルプスの山々に囲まれた丘で、ハイジが蝶々を追いかけては、キャ

      • なりたいもの選考会

         この世に名を残す人物たちは皆、時に自分は何になりたいのかを吟味し、作品にして発表する。宮沢賢治も、THEBOOMも、ビックスモールンもそうだろう。私もここいらで、自分がなりたいものについて吟味してみたいと思う。その選考会を行うため、私は先日、一ヶ月の募集期間を設けて「なりたいもの」を募った。すると、年度末で忙しいこの時期にも関わらず、七名からのエントリーがあった。  エントリーナンバー①「山手線の駅名を全て暗記しており、何も見ずにスマートに言える人」理由:東京、神田、秋葉原

        • "大泉洋"というあだ名

           これまでの人生、人並みにあだ名というものを経験してきてはいるが、ひとつだけ、未だよくわかってないあだ名がある。それは、小学校6年生の頃につけられたあだ名で、私の座っている席の給食班という、極わずかなコミュニティだけで流通していたものだった。  "大泉洋"というあだ名。それはある日突然発生し、瞬く間に"大泉くん"というあだ名へと変化した。先に言っておくが、当時の私も、今の私も、顔の見た目において大泉洋さんの要素を感じられるところはひとつもない。バイト先のおばさまたちからは、「

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        • foever young
          13本

        記事

          奇抜なペットボトルで

           どこで作っているのか、どうして作ろうという話になったのか、どれだけ生産されているのかがまったく見えてこない、キャラクターの形をしたペットボトルが気になる。中には決まって水が入っている、謎多きペットボトルたちのことである。  初めて出会ったのは、小学校の低学年か中学年かの、記憶がぽやーっとしている頃。友達の家からもらったお土産で、ぶりんとしたシルエットの見たことがないペットボトルがあった。鳥取県にある、水木しげるロードからやってきた、目玉おやじの形を再現したペットボトルだ。大

          奇抜なペットボトルで

          運命

          「運命」ってなんなのか。結局のところ、誰も知らない。夢、前世、奇跡、必然…。「運命」という言葉は、さらにフワッとした言葉たちに囲まれて、あたかもそこに存在しているかのように私たちの生活に溶け込んでいる。洗い場に溜まった食器たち、風呂場の排水溝に溜まった髪の毛、いつどこに持っていくべきなのかもよくわかっていないベルマークの山などとは、相容れない関係にあるはずなのに。 「初めて会った時に、きっと私、この人と結婚するんだろうなって思いました」 新婚さんは皆、口を

          インドカレー屋のうまい丸いやつとうまい粒

           「カレーが食べたい!」と思う日は、一年に二十日ある。「ナンが食べたい!」と思う日は、一年に五日ある。「ラッシーが飲みたい!」と思う日は、一年に一日ある。そして、「インドカレー屋の、パリパリのうまい丸いやつが食べたい!」と思う日は、五年に一日ある。だがしかし、「インドカレー屋のレジ横に置いてある、カラフルなうまい粒が食べたい!」と思う日はない。  私の地元には、インドカレー屋が多い。もし今、ネプリーグのファイブボンバーに出場し、「地元のインドカレー屋の店名、五つ答えよ。」とい

          インドカレー屋のうまい丸いやつとうまい粒

          スポーツマンシップにのっとられた世界

           「スポーツマンシップにのっとり…」とは、どういうことなんだろう。小学生の頃の私は、頭の上に"?"を浮かべながら、運動会の開会式に立ち尽くしていた。今ならわかる。スポーツマンシップって、結構大事なのである。まあ、何がとは言わないが、とにかく、ないと、ダメなのである。「スポーツマンシップにのっとらないと、大変なことになるよ。」と、昔の自分に伝えてあげたい。もし今、「無人島に一つだけ持っていくとしたら何を持っていきますか?」と聞かれたら、おそらく私は「スポーツマンシップ」と答える

          スポーツマンシップにのっとられた世界

          許可しない男

           スマホを開けば、されたこともない質問を突然投げかけられ、控えめな対応をしてしまうことがある。決まって私は、「許可しない」のボタンをスンと押す。この感覚、ティッシュ配りのお兄さんの前を、「大丈夫です。大丈夫です。」と言わんばかりに、小さく二回ほど会釈をしながら通過する時の感覚に近いものがある。内心、「今日もお疲れ様です。」と念を送っているが、どうも控えめな返しをしてしまうものである。こんな私のように、何事も許可をしない人間は、スマホの普及によって、今もなお増殖を続けている。

          許可しない男

          歯科医院スタグラム

           すきっ歯で歯にストレスを感じたことがなかった私は、長年、歯医者さんとは縁遠い生活を送ってきた。  小学生の頃、三年連続で保健委員となり、仕舞いには保健委員長の座まで上り詰めた私は、健康体そのものだった。そんな私にとって歯医者とは、"手に三本槍を携えた、いかにも悪さをしそうな黒ずくめのヤツに、歯を攻撃された不運な子たちが、我にもすがる思いでかけ込むところ"といったイメージでしか認識していなかった。幼い頃に、弟の付き添いで訪れた歯医者さんで、歯磨きの指導を受けた記憶と、ラグビー

          歯科医院スタグラム

          妬み、嫉み、僻み

           「妬み」、「嫉み」、「僻み」の言葉たちを明確に使い分けられる自信がある人って、この世に何人いるのだろうか。 私もここ数年で、ようやくそのフワッとした概要を頭に入れたところである。使い分けられるかは、その時になってみないとわからない。今のところ、「これは僻みだ!」、「おっ、今回はちょっと悔しさが残るから嫉みに違いない!」などと、心の中のコナンくんが閃いたことはまだない。この三つの言葉を習った後に、漢字テストに挑む機会があるとするならば、せめて女編、女編、人偏であることは

          妬み、嫉み、僻み

          若気のミリタリー

           唐突だが、嵐とBTSって、なんか似てると思う。この「なんか」というのは、顔や曲調が似ているということではない。ふと、この二組がデビューして間もない頃の記憶を呼び起こした時に思い出される、モヤ〜っとした淡い記憶が似ているのだ。  嵐にまつわる昔の記憶を思い出そうとすると、迷彩柄の衣装を身に纏ったメンバーたちが、銃やバズーカを構えて臨戦態勢を取っている画が浮かんでくる。(一旦、スケスケ衣装は置いといて。)そして、歌を歌う時には、イカちめの煽りを筆頭に、聴衆に向かって五人が全身全

          若気のミリタリー

          昼グモは挙動不審

           気持ちよく晴れた日のお昼時。見晴らしのいい公園のベンチに座って、本でも読んじゃってみる。午後の生産性を失わないよう、「それじゃあ、十ページだけ…」と、心に決めて読み始める。すると、毎度のことながら、五ページほど読み進めたところで、何かしらの虫に集中力の持続を一時停止させられる。その割合は大体決まっていて、もし、一週間立て続けに公園のベンチに腰をかけさせていただいたとしたら、こんな感じだ。アリ、アリ、ちっちゃい赤い変な虫、アリ、トンボ、昼グモ、アリといったところである。時々お

          昼グモは挙動不審