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スポーツマンシップにのっとられた世界

 「スポーツマンシップにのっとり…」とは、どういうことなんだろう。小学生の頃の私は、頭の上に"?"を浮かべながら、運動会の開会式に立ち尽くしていた。今ならわかる。スポーツマンシップって、結構大事なのである。まあ、何がとは言わないが、とにかく、ないと、ダメなのである。「スポーツマンシップにのっとらないと、大変なことになるよ。」と、昔の自分に伝えてあげたい。もし今、「無人島に一つだけ持っていくとしたら何を持っていきますか?」と聞かれたら、おそらく私は「スポーツマンシップ」と答えるだろう。それは少しばかり、言いすぎたかもしれない。
 ただ、スポーツマンシップとの付き合い方は考えた方がいいと、私は思う。スポーツマンシップにのっとられたら大変である。全てのSNSから「いいねボタン」は消え、「ナイスゲームボタン」に切り替わるだろう。ハート型のアイコンは固い握手のアイコンになり、タップをすれば「バチッ」と固く鈍い音が鳴り響く。
 LINEで別れを告げられ、失恋をした友達がいれば、「肩を貸す」ボタンが突如出現する。タップをすれば、スクイズに入った水をギフトとして送ることができたりする。ただし、粉ポカリは別料金である。
 Xで怪しげなアカウントからDMが届いたのなら、すぐにブロックするのではなく、フォローを返し、エナメルバッグを地面に下ろし、全員が揃ってからお礼を伝えなければ垢BANされる。送迎バスの運転手さんと同じである。
 仲のいい友達と一緒にインスタライブをしたならば、終わり際にはまず、友達側のフォロワーに挨拶をし、その後で自分のフォロワーに挨拶をするのが所作である。
 mixiで足あとをつけたならば、最後にはトンボで綺麗にならしてからログアウトしなければ、翌日の朝練の時に先輩から、「昨日練習に参加した一年、全員集合。」と招集がかかる事態になりかねない。
 SNSがスポーツマンシップにのっとられた世界、一度見てみたいものである。LINEでスクイズを送ってきた友達のプロフィールには、「すみません、スポーツマンシップにのっとられました。使ってません、ブロックしてください。」と、ささやかな謝罪文が書かれていることだろう。

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