柔軟にしなやかに生きる3つのコツ
取材記事を書くことの一番のメリットは
「特等席でインタビュイーのお話が聴ける」
ことだと思う。
わたし探求メディア「Molecule(マレキュール)」にて、取材記事を書かせていただいている。
働く子育て世代の生き方・働き方のヒントとなるような、「わたし」主語のワクワクを大切にした記事をお届けするのがコンセプトである。
インタビューでは、普通に生きていたら出会うことすらできないような方が、とっておきの話をしてくれる。
「人の話を聞く」ことが大好きな私にとっては、とんでもなく嬉しいことである。
お話を聞いた後や文字起こしをした後、頭の中はインタビュイーのことでいっぱいだ。
「どうして、こんな考え方ができるんだろう?」
「何が、この方をこんなふうに育てたのだろう?」
「自分もこんなふうに生きられたらいいのに……」
インタビューで感じたことすべてを記事に投入することは、とてもできない。
そんな「書ききれなかった思い」を、ここで昇華させることができればと思う。
今回はこちらの記事から。
このストーリーに登場する上田充憂さん(以下、上田さん)はフリーランスのシステムエンジニアであり、ご自分の法人をもつCEOでもある。
そしてプライベートでは、奥様をご病気で亡くされ、娘さんを育てるシングルファザーだ。
上田さんは、一人きりで娘さんを育てているわけではない。
なんと、「妻亡き後も義両親と同居して」育てているのである。
それってすごくないですか?
いきなり自分の話になってしまうが、私の義両親はとてもやさしい、いい人たちだ。
しかしそれでも、同じ状況で同じことができるかと問われたら、たぶん私にはできない。
「すり合わせが大変だから」だ。
他人と一緒に生活して子供を育てるということは、たくさんの面で意見を出し合い、交渉し、考えていかなければならない。
生活習慣、食事のメニュー、子育てに対する考え方etc……。
すべてが完全に一致することなどありえないから、互いに主張すべきところは主張し、譲るべきところは譲って、折り合いをつけながら決めていくことになる。
その際に絶対に必要なのは「柔軟さ」だ。
そしてその柔軟さをふんだんにもっているのが、上田さんなのである。
さて、私が上田さんのお話から学んだ「柔軟に生きる3つのコツ」について、今日は書きたいと思う。
これからお伝えする3点は、上田さんが「これがコツですよ」と提示してくださったポイントではない。
私が上田さんのお話から勝手に受け取り、解釈したことである。
あくまで中村というフィルターを通したものであることをご了承いただきたい。
シンパパCEOから学んだ、柔軟さのコツ
1. ジャッジしない
相手の言動に対して、私たちはとにかくジャッジしがちだ。
「あの人はいつも棘のある言い方をするけど、私のことが嫌いなのかな。ああいう態度はいかがなものか」
「家族がまた食器を下げ忘れている。そのうち私が洗ってくれると思っているんじゃないか。そういう頼り方はやめてほしい」
こんな思いをもつことはないだろうか。私はよくある。
上記の太字の部分、これはジャッジである。
おそらくほとんどの人は、自分が「ジャッジしている」ことにすら気がついていない。
なんなら「真理だ」と思っている。
正しいのはあくまで自分。悪いのは他人。
しかし上田さんのお話からは、自分に起きたことや周りの人をジャッジしたり批判したりするような雰囲気がみじんも感じられなかった。
たとえば転売のエピソード。
転売目的でチケットを買い占めている人のせいで、妹が好きなアーティストのチケットを取れないということがあったのだそうだ。
私だったらここぞとばかり、転売ヤーたちを糾弾するところである。
しかしそのエピソードを話している時も、上田さんは淡々としておられた。
ちなみにこのことが、上田さんがご自分のビジネスを構築する大きなヒントになった。
ジャッジするマインドだと、批判で終わってしまう。
しかし上田さんのようにしなやかにありのままに、起きたことを受け止めるマインドであれば、このようなアクシデントもビジネスチャンスに変わるのである。
2. 多様な生き方に触れる
上田さんは子供の頃から個性的な人に囲まれ、多様な生き方に触れて育ったそうだ。
また海外経験も、上田さんのしなやかさに磨きをかけたのだという。
個性的な人たちの間にいると、否応なしに「普通じゃありえない」生き方や考え方に触れることとなる。
その結果、「みんな違ってみんないい」ではないが、「うんうん、そういう考え方もアリだよね」と許容できるようになるのではないか。
この点では、私にも少々思い当たるふしがある。
仕事でさまざまな障害のある方と関わってきた経験は、自分にある種の柔軟さを与えてくれたように思うのだ。
障害をもつ方の個性の多様さと、定型発達の方がもつ多様さ。
そこには別に違いはない。
誰だって楽しいことは好きだし、おいしいものを食べたいし、面倒くさいことは避けたい。ウソをつくこともあれば、ケンカすることもある。
ただ、特性のある方は、人間のもつすてきな部分も苦しさもむき出しで生きていることが多い、と思うのだ。
読書からはさらに直接的な影響を受けた。
物語を読んでいると、現実世界ではまずお目にかからないような強烈な人がわんさか出てくる。
それら「ぶっ飛んだキャラクター」の生き方に触れることで、現実世界で少々変わった人と出会っても、「まあ、そんなこともあるよね」と流せるようになったと思う。
仕事と読書。
私の場合はこの2つが、多少なりとも柔軟性を育ててくれたような気がする。
3. 大きな夢や志をもつ
最後に、上田さんのすごさは視座の高さであると思う。
それは、上田さんがもっている夢や志からくるもののように思えてならなかい。
私の好きな言葉に、
「着眼高ければ、則ち理を見て岐せず」
というものがある。
江戸後期の儒学者、佐藤一斎の言葉だ。
視点が高い人、着眼点が高い人は、小さなことで迷わない。
つまり、どうでもいいことであーだこーだ言わず、目の前のことに柔軟に対応できる。
たとえば仕事で大きなプロジェクトに取り組んでいたとする。
「着眼低き」人は、些事にこだわる。
「君は私を飛び越して課長に相談に行った。私の面目丸つぶれだ」
周りから見たら、それどうでも良くない?と言いたくなる。
「着眼高き」人は、そのプロジェクトが志しているものを見ている。
さらに、社会にどんな影響を与えるのか、ということも考えている。
だから、自分が自分がということがない。
上田さんは最新の技術を使って社会を良くしたいという志をもっている。
しかしその実現は「自分が」やらなくても良いのだという。
自分が考えたこと、取り組んできたことが、いずれ世の中のためになれば……
その考え方、めちゃくちゃかっこいいと私は思った。
そしてこの「着眼の高さ」が、「小さなことにこだわらない」「目的の達成のためにしなやかに行動する」柔軟さに直結しているのではと感じたのだった。
しなやかさは、軽やかさ
柔軟であることは、軽やかで自由であることだと思う。
もちろん自分の大事なことに対してこだわるのはとても大事。
たとえば上田さんご自身も、「今は娘の育児が優先」ということにはこだわりをもっておられた。
その一方、「これにはしがみつく必要がない」と思えるものごとに対しては、こだわりを手放した方がずっと軽やかに、自由に生きられる。
自分を省みると、余計なこだわりを鎧のようにいっぱいくっつけて生きている。
人に認められない自分はダメ。
お酒が飲めなかったら人生終了。
スマホ?絶対必要でしょ、ないとムリ。
家族にも家事をさせないと、自分が大事にされてないみたいで腹が立つ。
方向性も重要度もバラバラだが、どれも「自分の人生に決定的なものではない」点が一致している。
ジャッジしない
個性的な生き方に触れる
大きな夢や志をもつ
この3つを心がけて、しなやかに軽やかに生きていきたい。
心に響くお話だった。
Molecule(マレキュール)では、他にもたくさんの「わたし探求」ストーリーが紹介されています。
取材から感じたことをライターが思い切り語る「編集後記」はこちらです。
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