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やまじ去りあかつきの星彩色す         

星を見ると薬の副作用で歩けなかった時を思い出す。急に会社を休み毎日毎日毎日自宅で過ごす。体が日々衰えていく事に恐怖を感じながら…。

パソコン日記には3日で1才と書いてあるので、おそらく薬の効能が積み重なるように感じて2ヶ月続き、80才くらいまでの感じだったろう。

今思えば80才の方に失礼だろうの動きで、とにかく何かに摑まらないと立てないし歩けない。脳のバランス感覚がずれていたのだろうが、思ったところに手足が着かなくて、まさに一挙手一投足に全神経使うような感じ…。いつもなら考えもせずに動かすことを…考えながら動かしていた。頭は疲れるし体は疲れるしでほぼ食べて寝るだけの2ヶ月。


さすがに怖くなり…、

夜明け前のカラスも起きない朝…。誰も見てないのに恥ずかしくて、誰にも見られぬうちに散歩に出て、ただ必死に歩く。用水路にだけは落ちないように…。


毎日毎日続けて今がある…という話ではなく、ただ体が慣れただけなのだろうと思う…。


ただその時、普通に会話出来たり普通に箸でうどんが食べられたりすることの「普通は素敵だ…」と、心から感じられたことは幸せ。これまでの人生で…普通が嬉しい…など感じたことのない人間だった。


昨日出来ていたことが今日は出来ない…という普通が壊されていることは分かっても、分かったふりだけだった。


普通が壊れたときのショックは人によって様々であろうが…、

普通でない時…普通であろうとすれば壊れていたと思う。


あの時…、

普通を一旦あきらめて始めた。

あきらかに出来てないことをきわめて始めた。


毎日毎日必死で足元に気をつけて歩いていた時、星は見えなかった。



やまじ去りあかつきの星彩色す



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