未来のスケッチ
旭山動物園の奇跡の物語
廃園寸前の地方の動物園が、「行動展示」で奇跡の復活をとげた。その起点になったのが、「14枚のスケッチ」だったというお話。かなり昔に読んだ本ですが、いまだに印象に残っています。
地方の無名だった動物園のサクセスストーリー、しかも、現場の飼育員たちの熱い思いが起点になったというドラマや小説に出てきそうでも、現実にはなかなかない展開です。
筆者は、旭山動物園の取り組みを 経営学的な視点で考察していますが、同時に成功の背景にあるものは、第一に「現場の人たちがもつ純粋な動物に対する愛、自分の動物園に対する愛」そのものだとも言っています。
何事につけ、自分のしている仕事を寝食も忘れるくらい好きになって初めて、成功があるのでしょう。あなたの描きたい「未来のスケッチ」を思い浮べながら、この本を読んでみることをお薦めします。
旭山動物園の14枚のスケッチとは
旭山動物園は、北海道旭山市にある日本最北の小さな市立動物園。入園者も落ち込み、予算も限られ、一時は閉園の危機にありました。そんな地方動物園が、全国から人を集める人気動物園となり、奇跡の復活を遂げました。
旭山動物園の成功する以前、どの動物園も、スターの動物をいれて人を集める手法をとっていました。予算も限られた一地方動物園には そんなことは到底無理です。
旭山動物園が成功したのは「行動展示」という独自の展示手法で、普通の動物たちのいきいきとした生命の躍動を見せたことにあります。
この手法は、現場の人たちの純粋な動物に対する「愛」・「生命の躍動」を見せたいという思いから生まれたそうですが、いくら 愛や思いがあったとして、予算も限られ、入園者が落ち込んだ地方動物園が投資をできるわけではありません。
そんな旭山動物園に転機が生まれたのは1996年。テーマパーク構想を掲げた新市長が誕生し、水族館建設のためのヒアリングとして旭山動物園の延長と面談します。
この千載一隅のチャンスでものを言ったのが「14枚のスケッチ」というわけです。このスケッチは 苦しかった時代 現場の飼育員の方が理想の動物園像について自分の思いやアイデアをだしあい、イラストにまとめたものです。こういう施設にしたら、もっと動物のすごさを伝えられると熱く深夜まで語り合って生まれたものでした。
市長との面談で園長はこの「14枚のスケッチ」をもって熱く語ったそうです。これに感銘を受けた市長が、旭山動物園への投資を決めたのでした。
「14枚のスケッチ」には、動物たちのすごさを存分にみせたいという共通のぶれない軸があったからこそ感銘を与えることができたのでしょう。
私が感じたのは以下のようなポイント
現場の人たちが、思いを語り合い、共通の信念を醸成し、アイデアを出し合うのが起点
しかし、信念は厳しい現実に風化する
信念に基づくアイデアをビジュアル化することで信念は強化される
ビジュアル化されたスケッチが、千載一遇のチャンスでものをいう
真に成功するには、信念が世間の流行に流されたものではなく普遍の真理基づいている事が重要
時代の変化がどんどん早くなっている現在、時代の大きなうねりを感じながら次の時代の「スケッチ」を常に描き続ける必要があります。そうした事を企画部がやらされ仕事としてやるのでなく、現場とともに楽しみ、語り合いながら形づくっていく。そうしたDNAを持った企業が、次の時代で輝くことができるのでしょう
思いを具象化するスケッチの威力
著者の言葉を借りると
ここが重要なポイントですね。
よく仕事の同僚と飲みながら熱い議論を交わすこともあるかと思いますが、一過性の議論で終わってしまいがちです。それがいかに心理を突いたものであっても、揮発性のアイデアでは何の意味もないことになってしまいます。
スケッチに書き留めることで、時間差を置いて もっとも肝心な時にそのアイデアがよみがえることができます
話は、少しずれますが、レオナルドダビンチのスケッチは いまだに残っていますよね。あまりにもすごい天才の話をしてしまうと、少し引かれてしまうのが怖いですが、、、
スケッチと象徴的にいってしまうと、絵の下手な人はどうなんだということになります。文章と写真で残すとか、企画部が主催するブレストであれば、イラストが得意なデザイナーをメンバーに加えるとか、いろいろやりようはあると思います。
その商品・仕事に愛はあるか
もちろん、旭山動物園の成功は、単に 思いをビジュアル化していたからという単純なことではないでしょう。
ちなみにこの時、スケッチを書かれた方、その後絵本作家になられたそうで、そうした才能のある方が、関係者にいたという偶然も奇跡のストーリーの1ページとしてあったのかなと思います。
仕事で POCやプロトタイプを作るお手伝いをすることも多いですが、旭山動物園の「未来のスケッチ」のように現場の声に輝きを与えるスケッチを描き、さらなる現場のアイデアを触発させるもの作っていけるよう研鑽を続けていきたいと思っています
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