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風に挑む

あれ?風が強くなった?

そんな風に思った次の瞬間
強風が吹き荒れた

揺れる木々

嵐が来た!

晴れてるのに
風が暴れてる

これが
泣く子もだまる
上州空っ風

…というかどうかはわからない(汗)

上州の女性は強いから
滅多に泣かないらしい

私は夫の転勤に伴いこの地にきた

当時、空っ風の話は聞いていたので
覚悟していた。

子供の頃から、冬の風は大嫌いだ

だけど
嫌だ、なんて言えない

私は風に挑むつもりでこの地にきた

最初の一年は、風に負けた
自転車に乗り、呼吸困難になりかけた
こいでもこいでも先に進まない
それでも、手段はそれしかない。
後ろに子供を乗せて、前カゴに買い物したものをつめて、必死に風と戦った。

後から、知った話
自転車競技の選手がこの地出身者が多いらしい。
自転車通学の多い地域で、自然と足腰が鍛えられていく。
わざわざ、トレーニングにくる選手もいるようだ。

今でこそ
アシスト自転車があるが、
この地に来た時には、そんなものなかった

所謂、ママチャリで、
買い物から、通院までこなして行った

「かぁちゃん、がんばれ!」
子供の声を背に、必死に風に向かって走った。

足は筋肉質になり、肺が強くなった

必死に家に辿り着き
子供を部屋に連れて行き
荷物を下ろして、玄関先で
倒れ、しばらく意識が飛ぶ

数分後、意識を取り戻し…

こんな事を冬の北風の頃は繰り返していた

下の子が生まれた頃に
アシスト自転車が発売された

前カゴは、変形型で子供を乗せられる。
子供を乗せない時は、前カゴとして使えるという画期的なものだった

だが!いかんせん、高い!
原付バイクが買えるくらいの値段

悩んだ、悩んだ
そして
強風に煽られたりして倒れたりしたら
子供が危ない!
から、買おうとなった。

楽になった。
楽になったが、やはり、奴は強敵だった。
だけど、帰宅後に倒れることは無くなった。

その自転車は、結局、10年乗った。
途中、バッテリーがダメになり、買い替えた。

みんなが不思議そうに尋ねてきた最初の頃
「これ、漕がなくてもいいの?」
(いや、バイクじゃないんだし)

「これ、坂道、楽?」

当時のアシスト自転車は
今ほど、性能が良くなくて、坂道を楽々…
というよりは、楽に登れるくらいだった。

バッテリーを積んでるから、バイクと同じように考えてる人も多かった。

あるおじいさんが
「バイクは危ないから、自転車にしょうかと思うけど、坂道がね、坂道は楽かい?」と聞いてきた。
70代くらいの方で奥さんに自転車を勧めてるが、坂道が…と言ってるらしい。

「楽には楽ですよ。」というと
「そうかぃ、じゃあ、いいね」
というので
「ただ、まだ、アシスト自転車は高いんですよ」
と言ったら
「いくら?」と聞かれたので
「だいたい、原付バイクが買えるくらい…」

おじいさん、黙って考えてこむ

「そんなにするのか…」

慰めるつもりで
「まだ、ではじめなので、高いですが、
段々と安くなると思いますから、その時に、もう一度、考えてみたらいかがですか?」と
言ってみた

「…そうだな、その時、考えてみるか、
ありがとう」

おじいさんはそういって、行ってしまった

今でこそ、だいぶ安くなってきたけれど、
それでも、高い買い物は違いない

今も私はアシスト自転車に乗っている

ただし、これは2代目
娘が高校3年間、乗り続けたものの
お下がりである。

この自転車に乗り始めた頃
なんと乗りやすいのか、と思った事か。

車体が軽い
平地充電ができる
坂道が楽
(漕がなくていいわけじゃなく、アシストが効いて登りやすいという意味)

なんでも、そうだが、ではじめというのは、
不便さがある。
それが改良されていき、良くなっていく。
それを感じた

今のアシスト自転車もそろそろ、
10年を超える
バッテリーの消費率も激しくなってきた

…とはいえ
気に入ってる自転車である

バッテリーを交換して
まだまだ、乗り続けたいと思っている。

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