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🅂1 貯蓄と投資について

「A little dough」 第5章(Chapter5)貯蓄と投資について
<🅂1(Section1)貯蓄と投資について>

 これまで、私たちが行う意思決定には「認知バイアス」などが原因となる非合理的判断が多発していることを確認してきました。またこうした判断が、結果的に「後悔してしまう」支出と深く関係していることも事実のようです。第5章では私たちのファイナンシャル・プランに組み込まれた「貯蓄と投資」という経済行為を扱いますが、これらもまた人間が行う意思決定とはあまり相性が良くない、といわれています。それはたぶん、支出に絡む意思決定以上に、私たちの意思と対立し私たちを失望させる可能性を持っています。ただ「貯蓄と投資」という経済行為には、私たちの「認知バイアス」による悪影響を低減するいくつかの方法も存在しています。「支出」に比べるとその選択肢や自由度も限られるため、シンプルな習慣とルールを身に着けることが、ファイナンシャル・プランを上手に管理していく鍵となるように思います。いずれにしてもこの章もまた様々な「認知バイアス」を前提にしますので、これまで記載してきたことと重複する部分も出てきますが、確認しながら進めていきたいと思います。

➤最初の一歩、生活防衛資金
 
第3章「働いて自立する」の中で、最初の貯蓄として生活防衛資金について記載しましたが、それは「経済的自立」をより確実なものにするために重要な行為だと考えるからです。生活防衛資金には「リスクに備える」という第一の目的と、生活基盤を盤石にすることで本業の仕事を後押しし「仕事そのものの質を高める」という2つ目の目的があることを記載しました。

 生活防衛資金のリスク対策の部分は、いわば「失業自家保険」とでもいうべきもので、根源的なお金の機能(※注)である「保存」効果を活かしたものです。(※注)①交換手段②価値の保存➂価値の尺度
 一方で、貯蓄が「仕事の質を高める」という点は、貯蓄により生活基盤を盤石にすることで、現在の仕事に必要以上に依存しないメンタリティーを作ることが可能になってきます。結果として自己管理における「心身の健康」や「コンプライアンス」を保持し、「個々の目標達成」にも強い意志を持って臨めるようようになります。

➤まずは積み立ててみる
 具体的には「(月々の生活費)×(1年~2年程度)の貯蓄額」を目標に貯蓄をすることになりますが、これは本来、失職した場合の余裕のある準備期間として考えられています。実際に転職するまでどのくらいの期間が必要かは時と場合によりますが、突発的に転職などを余儀なくされた場合に、数か月程度の失業保険では心もとないので、最低でも1年程度の資金を考えておく必要はあると思います。ただその期間はあくまで目安として捉え、「生活防衛資金」といえども所詮は道具ですから、現在を犠牲にするような無理な貯蓄は避け、可能な範囲で積み立てていくことになります。
 実際の貯蓄方法としては、積立式で給与天引や会社の補助などが利用でき且つ一定の流動性も備えた一般財形貯蓄などが候補になると思います。ただこれまでも何度か触れてきましたが、ついついその先の住宅資金や教育資金まで考えあわせてしまいがちになります。その結果その額の大きさばかりに気を取られて、不要な失望と落胆を繰り返してしまいます。また最初から高いリターンを期待して勤務先から勧められるままに持ち株会などに加入するケースもありますが、その辺りもゆっくり検討すれば良いことです。少ない貯蓄額をリスクを取って勤務先に投資するメリットはあまり見当たりません。最初はそこまで考えずに、まず月々の生活の安定を第一に、余裕があれば生活防衛資金の準備を始めるといった辺りが精一杯だと思います。
 「20歳代」というのは、あれもこれも欲しいというのが現実でしょうから、そうした欲求をことごとく我慢しようとすると、続くものも続かなくなってしまいます。そもそも毎日が楽しくなくなってしまいます。「数々の誘惑をうまくあしらいながら、月々積立していく貯蓄」が実際どのようなものか、体感していくことができれば最初の一歩としては上々だと思います。


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