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ジャパンカップ◎オネスト あの頃のJCよ、もう一度……!

JRAのレースに外国馬が出てきたら必ずと言っていいほど買ってしまう僕としては、今年のジャパンカップはかなり楽しみにしている。

出走頭数こそ4頭とまだまだ少ないのだけど、その内訳はGIパリ大賞を勝ち、愛チャンピオンSも2着のオネスト、昨年のJC5着馬で今年はGIプリンスオブウェールズSでシャフリヤールに先着する3着、凱旋門賞でも5着に健闘したグランドグローリー、前走のGIバイエルン大賞を10馬身差で圧勝したテュネス、GIパリ大賞2着でGIIニエル賞ではドウデュースを撃破したシムカミルと、レベルの高い馬たちが揃って来日した。

これは素直に嬉しい。

本当に、ここ数年のジャパンカップの外国馬と言えば、お世辞にも“ハイレベル!”とは言えない状況でしたからねぇ。

ここ2年はコロナの影響が大きかったから……という理由はもちろんあったでしょうが、コロナ前の2019年に至っては外国馬出走がなんとゼロ。そして、2018年以前からも海外からの出走馬は質・量ともに明らかに落ちていた。

これって、JCやる意味ある?と正直に思いましたし、何より海外のホースマンからJCはもう価値のないレースとみなされてしまったのではないか、JC存続の危機だ――くらいに個人的には思っていた。

だから、ここに来ての外国馬の質の向上は本当に良かったなぁと思うし、と同時にこの一変は何が起きたのだ?という驚きもある。なにせ、ケガのため実現こそしなかったものの、今年の凱旋門賞馬アルピニスタでさえJC出走を前向きに検討していたのだから。

一つは、やっぱり賞金の増額

今年から1着賞金が1億円増の4億円になった。これはデカい。さらに、これは今年からではなく2020年からのことであるが、指定競走1着馬に対しての報奨金も大幅に増額された。

例えば、指定競走であるパリ大賞1着馬のオネストがもしJCを勝ったら、報奨金として300万米ドルが追加される。1米ドル=150円で計算したとすると、ざっと4億5000万円。なので、オネストの場合、JC1着でおよそ8億5000万円もの巨額マネーを手にすることができるというわけだ。これもデカい!

そしてもう一つは、検疫が楽になったこと。

これまでは外国馬は一度、千葉県白井の競馬学校に入る必要があったが、今年から東京競馬場に直接入厩できるようになったという。ニュースを読む限り、東京競馬場に新設された国際厩舎の評判は良く、外国馬にとってより調整しやすい環境が整ったと言えそうだ。

また、これまではJC当週の国際競走といえば、前日に行われる芝1600mのOP特別・キャピタルSくらいのものだったけど、帯同馬も幅広くレースに出走できるよう芝、ダートの条件クラスも国際レースにするなど、JRAも相当の危機感をもって外国馬が出走しやすい環境、制度、施設などを整備してきた。

こうした背景とJRAの努力があって、JCは再び魅力のあるレースと海外ホースマンたちに受け入れられるようになった、と僕は信じたい。

そう、まだまだ油断はできない。今年はたまたま強い馬が何頭か来てくれただけ……という可能性だって現実的に十分ある。国際色華やかなりし90年代のJCを知っている古いファンの僕としては、今年のメンバーでも決して満足はできないし、してもいけないのだろうと思う。

あの頃のJCよ、もう一度……。

そのためには今年、外国馬が17年ぶりの勝利を挙げ、あわよくば複勝圏内に外国馬が2頭くらい、なんだったら掲示板に3頭ぐらい入るぐらいの活躍を見せてくれれば、潮目がさらに変わるのかもしれない。

こういうタイプの馬だったらJCを勝てるし、8億円が転がり込んでくる――と、こういう認識が海外ホースマンの間で共有されれば、また活発に外国馬が参戦してくれるようになるのではないか。

■オネストは欧州でもトップクラスの3歳馬

というわけで、今年のJC本命はフランス3歳馬のオネストとしたい。

前述したようにオネストは今年、パリ大賞1着、愛チャンピオンS2着の好成績。フランスダービーは5着に敗れたが、勝ったヴァデニがその後にエクリプスS1着、凱旋門賞2着の大活躍を見せている。そのヴァデニには愛チャンピオンSで先着しており、能力的に何ら見劣るところはない。

また、パリ大賞は2着シムカミルがニエル賞を制し、3着エルポデゴンが豪GIコックスプレートで3着、4着エルダーエルダロフが英セントレジャー1着と、出走各馬がその後に軒並み好成績を挙げている。このことから今年のパリ大賞はハイレベルだったとされ、英主要ブックメーカーの凱旋門賞オッズでもオネストは単勝10~12倍くらいのダークホースに目されていた。

このように、欧州でも高い評価を受けていたオネスト。前走の凱旋門賞は10着に敗れたが、これは日本馬同様に重馬場で実力を発揮できなかったからだろう。それゆえ、時計の出る日本を次戦に選んできたのだろうし、父はあのフランケル。新たな欧州リーディングサイアーとして数々の活躍馬を送り出し、今年はアルピニスタが同馬の産駒として初めて凱旋門賞を制したが、日本でもこれまでソウルスターリング、モズアスコット、グレナディアガーズと、GI馬を3頭輩出。日本独自の馬場への適性も証明済みだ。

そして、オネストの母父シーザスターズの産駒からは、日本でも大きな話題となったバーイードという超大物が現れた。つまり、オネストは今年の欧州競馬で主役となった血脈を父系、母系の両方から受け継いでいることになる。これは大げさに言ってしまえば、2022年のトレンドが凝縮された血統であるとも言えないだろうか。

血統の話で言えば、オネストは1993年の凱旋門賞馬で同年のジャパンカップにも出走して8着だった牝馬アーバンシーの3×3という濃いインブリードを持つことでも注目ですね。アーバンシーはガリレオ、シーザスターズを産み、そこからフランケル→アルピニスタ、またバーイードと広がっているわけですから、ある意味、今の欧州の血統トレンドはアーバンシーが祖になっているとも言える。そんなアーバンシーの血を濃く受け継ぐ“ひ孫”のオネストが29年の時を経てJCを勝利したとなれば、これはまた一つのドラマになりそうですね。

ただ、ちょっと気になるのは来日してからの調教が軽いこと。木曜の最終追い切りでも時計を出したのがラスト3ハロンからで、と言ってもだいたい15-15のペース。ピリッとした時計は出していない。これは速い時計を「出せなかった」のか、あるいはあえて「出す必要がない」くらいに仕上がっているのか……

まあ、外国馬の調整に関しては昔からですが、よくわからん部分も多いので、あまり気にしないでおきましょう。

ちなみに、最も意欲的に乗り込まれているのはドイツのテュネスか。金曜はダートで長めから時計を出しているし、動きも活発。また、兄がトルカータータッソという血統背景からも怖い1頭だ。

なんしか、今年のJCに期待することは外国馬の活躍。2005年アルカセット以来の勝利とまでは言わずとも、せめて2006年ウィジャボード以来の複勝圏内くらいは見たいし、繰り返しになりますが、将来のジャパンカップのためにも「1頭でも3着以内」は最低限クリアしてほしい。

■ジャパンカップ
◎②オネスト
○⑮シャフリヤール
▲⑦テュネス
△①シムカミル
△⑥ヴェラアズール
穴⑤グランドグローリー

まあ、でも、結局来たのは京阪杯のサンライズ“オネスト”の方だった……なんてオチも現実としてありそうだから困る。

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