見出し画像

“恵まれ”ではなかったジェラルディーナ、真の強さと成長に脱帽……!

エリザベス女王杯はジェラルディーナが大外から豪快に差し切って優勝。ジェラルディーナ号、クリスチャン・デムーロ騎手、斉藤崇史調教師はじめ厩舎スタッフ、牧場スタッフ、オーナー関係者の皆さま、本当におめでとうございました。

■心身両面の成長による完全本格化

いやあ、参りました。ジェラルディーナがここまで強くなっているとは……完全に甘く見ていました。

デビューから3歳春にかけて、また昨年暮れから重賞戦線での勝ち味の遅さがどうしても印象に残っているから、前走のオールカマーを鮮やかに勝ったとはいえ、GIではまた惜しいところで足踏みを続けるのでは……なんて思っていたわけです。

そんな見る目のない僕を横目にあざ笑うかのような、見事な差し脚の一撃。本当にお見事でしたし、これはもう、今さら僕なんかが言うのもはばかられますが「ジェラルディーナは完全に本格化した」ということなのでしょう。

3歳時は430キロ台だった馬体重が、今回は470キロで出走。大きな休養は3歳春シーズンだけで、昨年6月に復帰以降はコンスタントに使われながらも徐々に体重を増やしていた。特に今年の鳴尾記念から今回のエリザベス女王杯までは常にプラス体重での出走。ちゃんと付くべきところに筋肉が付き、この馬が本来あるべき理想の馬体へと完成されてきたのですね。

そして気性面。今回もまだパドックでは多少うるさかったものの、レースではそんな素振りを見せることもなくクリスチャン騎手と折り合いピタリ。無駄なところで消耗することなく、能力を思う存分に発揮してみせた。

また、この気性面の成長というのは何もレースに行ってのことばかりでなく、普段も手がかからないようになってきたから陣営の思い描く調教を予定通りにこなすことができ、また飼い葉もしっかり食べることで、これが成長へとつながっていく。そうした相乗効果もあったのだろうなと、今さらながらに中間のニュースを読み返して思っているわけです。

これまたごく当たり前のことを書いてしまうのですが、肉体面と気性面の成長――これが同時に進んだことで、これまで持て余し気味だった才能を正しく使えるようになった。本当にお手本のような“本格化”“素質開花”ですよね。

そして、それを見抜くどころから様子見してしまった僕の競馬力のなさ、馬を見る目のなさは毎度のことながら情けない。

いや、そうして人は反省し、学び、次の成功へとつなげていくのです。このエリザベス女王杯は本当に勉強になった(と言いつつ僕自身、その学びが“次”の成功につながったためしがほとんどないのが、また悲しいところではありますが……)

■外差し有利の競馬に恵まれただけ?

一方、レースそのものですが、やはり最初の印象として思うのは外を回してきた馬たちが上位を占めたということ。

これは午前中から強く降った雨による馬場悪化の影響が大きく、芝の内・外でコンディションの差が大きかったのでしょう。その分、道中から馬場の良いところをある程度選んで通れる外枠勢には有利に働いたかもしれない。

そうした中、外枠発走から後方で脚をタメたジェラルディーナとライラック、好位にとりついたウインマリリンの鞍上たちは、それぞれの位置、競馬スタイルから最適のコース取りをするという、見事な誘導だったわけですね。さすが、世界の名手たちですよ。

また、外枠勢が上位を占めたのと合わせて、差しに構えた馬たちが台頭した今年のエリザベス女王杯。

時計を見ると、前半の1000mが60秒3。1ハロンのラップで12秒5以上かかっているのは最初の1ハロンと600m~800mの区間のみ。あとは常に12秒4以下のラップで推移している。重馬場という今回の芝コンディションを考えれば、これはかなりタイトなペースであり、先行馬に息の入る楽な区間はなかったとも推測できそうです。

とすると、4角好位から唯一残したウインマリリンは相当に強い競馬をしている。

そして、だったらジェラルディーナは外枠・差し有利の競馬に恵まれただけ――とも言ってしまえるのかもしれないが、そうしたモロモロを味方につけて勝つのが競馬だし、例え恵まれた面があったにせよ、2着以下に1馬身3/4差をつけてキッチリと勝ち切るのだからジェラルディーナの強さはやっぱり本物。

振り返れば、前走のオールカマーも内有利な馬場コンディションの中、内枠からソツなく立ち回っての勝利に“恵まれ感”があったから、僕はこのエリザベス女王杯では軽視してしまったのだけど、同じく内・外有利の恩恵を受けた馬が同じレース内で何頭もいる中で、ジェラルディーナはいずれのレースも決定的な差をつけて続けて勝った。

それはもう、ジェラルディーナが強いから、という理由以外に何もない。

■父母から受け継ぐ成長力

父モーリス、母ジェンティルドンナ。

超良血ぶりは言うに及ばず、古馬になって快進撃を見せたモーリス、そして古馬になってからもGIを勝ち続けたジェンティルドンナの成長力を考えれば、その娘ジェラルディーナも今後のさらなる活躍が楽しみになってくる。

父、母に一歩でも近づくような走りを期待してしまうのは当然だし、斉藤崇厩舎にはクロノジェネシスという偉大な牝馬の先輩がいた。そんな両親、先輩に続けとばかりに国内を飛び越えて海外レースにチャレンジできるくらいにまで成長していってほしいですよね。

と、その前に直近で言うなら、母ジェンティルドンナ、厩舎の先輩クロノジェネシスが制した有馬記念で牡馬トップホースとの激突を見たいところ。ただ、だいたい2カ月に1走ペースとはいえ、ずっとコンスタントに使ってきている馬なので、ここらで長めの休養をとってもいいのかもしれない。

いずれにしても、勝ち味に遅かった馬が1つ勝ちだすとトントン拍子で勝っていくのは競馬の世界でよくあること。ジェラルディーナも条件クラス時代ではあるけれど、1つ勝った途端あっという間に3連勝でオープン入り。そして、重賞戦線では再び足踏みが続いたけど、1つ重賞を勝ったと思ったらあっさりと連勝でGIタイトルを奪取した。

そう、こういうタイプは一度波に乗ったら止められない。父モーリスもそうだった。

だから、どこになるにせよ次走では、また一段とパワーアップした姿でお目にかかれることだけは間違いないのではと思っている次第です。まあ、端的に言うと「次も楽しみ」というわけですね。

■秋華賞上位馬の連続好走はやはり厳しいのか

一方、人気で敗れたGI馬2頭、デアリングタクトとスタニングローズ。

デアリングタクトは内枠が苦しかったにせよ、オールカマー同様に特に見どころなく負けてしまったのが気になるところ。完全復活には「まだ」届かないのか、「もう」届かないのか。もちろん個人的には、3歳時のあの強さを再び見たいと強く願っているのですが……

スタニングローズも道中かなりもまれこんでいたとはいえ、あまりにバテるのが早かった。ナミュールが他馬とぶつかるきつい競馬ながらそこそこ来ていることを考えると、馬場、ペースが合わなかったのか。

そして、ここ数年のエリザベス女王杯の傾向としては、3歳馬も上位に来てはいるが秋華賞上位の馬は活躍できていない。やはり、一度ピークを作って極限の戦いを経た上での中3週でもう一度、というのは相当に難しいのだろう。

僕はそうした傾向を見据えて、3歳が来るならスタニングローズ、ナミュール以外と予想したわけだが、安易にピンハイに行ってしまった。3歳馬から穴を取るなら昨年のステラリアと同じく秋華賞で大きく負けた組(=あまり力を使っていなかった馬)からだったのだ。

この傾向、淀に戻る来年以降も生きているかどうか分からないけど、忘れないでおこう。

そして、我が本命のアカイイト

最終4角をいい手応えで回ってきたときは昨年同様に夢を見たけど、今回はちょっと後ろ過ぎたか。伸びてはいるのだけど、最後まで勝ち負けに参加できなかったところを考えると、幸騎手がコメントしていたように捲り切る勢いでもっと早めに動かしていった方が良かったのかもしれない。

まあ、どっちにしろ僕はジェラルディーナとライラックを一銭も買っていなかったので……ハァ……つらい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?