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JCを制したヴェラアズールの脚と、ムーアの腕

ジャパンカップはライアン・ムーア騎手が騎乗した3番人気ヴェラアズールが優勝。本当に見事な差し切り勝ちでした。ヴェラアズール号、ムーア騎手、渡辺薫彦調教師はじめ厩舎スタッフ、牧場スタッフ、オーナー関係者の皆さま、おめでとうございました!

■いったい、どこからどう伸びてきた?

レース全体の感想としては見どころがたくさんある良い競馬だったなぁ、ということが一つ。そして、ヴェラアズールの脚とムーア騎手の腕。これに尽きる。

前半1000mが60秒1のスローペースの中、内めの枠を生かして前半からある程度のポジションを取りに行った道中もそうだし、最後の直線で狭い馬群を割って抜けてきたハンドリングも凄かった。この日の東京は特にインが伸びる馬場コンディションだったため、各馬・各ジョッキーがテコでもここを動きません!というくらい、最後の直線はインに密集。なんだか欧州競馬の攻防を見ているようだったけれど、だからこそ、そうした戦いに慣れているムーア騎手は何らひるむことなくインにこだわり続け、空いた一瞬のスペースを見逃さなかったのだろう。

パトロールビデオを見ると、ヴェラアズールも決してスムーズではなく、左に行ったり、右に行ったりと進路を探し続けていた。苦しい場面ではあるのだけど、ムーア騎手は焦って強引な進路取りをすることなくチャンスを待ち続け、ついに開けた1頭分のスペースに瞬時に飛び込んでこじ開けてみせた。

例えるならドラマとかでよく見るような、閉まりかけのエレベーターのドアに両手のひらをガっと差し込んで、そんでもってグワッと開けるような……なんか、違うか?

とにかく、馬に乗ったこともないような僕などが言うのは場違いではあるけれど、本当にとんでもないところから割って出てきたな、どうなってるんだ?としか言いようがない。レースをテレビで見ていて「あ、これはシャフリヤールとヴェルトライゼンデの後先勝負になったな」と思い込んでしまっただけに、赤い帽子が2頭の間からグイっと突き抜けたのを見た瞬間、

「え、なんで? どこから?」

と、わけが分からなくなった。

レース後はたいてい馬券が外れているので、「くそ、酒でも流し込んで忘れるか」と我ながら最低の日曜夕方を過ごすのが常になってしまっているのだが(涙)、今回ばかりは何度もレースリプレイとパトロールを見返した。ヴェラアズールとムーアはいったい、どこからどう伸びてきたのか?と。

そして、傍らのテレビで流していたBS11からは、「ムーア騎手はヴェラアズールを『イージーホース』と言っていた(笑)」と渡辺薫彦調教師の声。うーん、これぞ仕事人。しびれますね。

■父エイシンフラッシュを彷彿とさせる“閃光脚”

もちろん、馬群の捌きはムーア騎手の腕があってこそだと思いますが、そこに一気に突っ込める脚がなければ、そもそもこの勝利は成立していない。あの狭い間に瞬時に入り込み、かつ、ダービー馬を競り落として3/4馬身の差をつけるのだから、ヴェラアズールはどれだけの瞬発力と勝負根性を発揮したのか――。

この一瞬の脚、キレはまさに、父エイシンフラッシュがダービー、天皇賞・秋で見せた“閃光脚”そのもの。個人的にもエイシンフラッシュは印象に残る好きな馬だったので、産駒から初GI馬が出たことはうれしい限りですよ。

また、藤原英昭厩舎の2頭目のダービー馬シャフリヤールを負かしたのが、藤原英厩舎初のダービー馬エイシンフラッシュの子供というところがまた、競馬のドラマですよねぇ。

年明けにはダートの2勝クラスを走っていた馬が、わずか10カ月後にGI、しかもジャパンカップを制覇。今年最大の上がり馬には間違いなく、その上、芝ではまだまだ底を見せていない。脚元の問題から大事に使われてきた分、来年6歳になる馬ではあるけれどまだまだ伸びしろがあるのではと期待してしまう。

見たいのはもちろん有馬記念。阪神の外回り、東京で物すごい脚を使っているだけに中山だとどうだろう?とは思うものの、この秋はまだ2走しか使っていないし、もし出走してくれたならタイトルホルダー、イクイノックス、エフフォーリアらとの対決が実現する。そうなったら、今年の有馬はエライことになりそうだ。

また、上位に来た日本馬に関しても、2着シャフリヤールは外枠、スローペースと苦しい展開の中、さすがの強さを見せてくれたし、3着ヴェルトライゼンデは上位の中で一番スマートな競馬をしていたと思う。

そして、デアリングタクト。ここ2走がちょっと心配になる内容だったので、今日の走りはグッと来るものがありました。最後に前が壁になったのが痛かったけれど、三冠牝馬はまだまだ終わっていないことを十分にアピールする競馬だった。

■外国馬は惜しいレースでもあったのだが……

一方、我が◎オネストをはじめ外国勢は今年もダメだった。

ひいき目かもしれないけれど、その中でも惜しかったのがオネスト。1枠2番から経済コースを通り、勝負になるポジションにいたのはさすがルメール騎手。だけど、最後の直線で前が開かなかった。一瞬、伸びかけたところでブレーキを踏まなければならず、そこで勝負あり、だった。

ただ、上位3頭のあの走りを見ると、例え前が開いてスムーズに追い出せたとしても勝ち負けまで行けたかどうか。良くて4着くらいだったかもなぁ……というのが正直なところです。

前日の予想記事にも書いたとおり、今年はこれだけのレベルの外国馬が来日してくれたのだから、何か1頭でも馬券に絡んでくれたら、来年以降もそれなりのレベルの馬が来てくれるようになるかもと期待していただけに、(自分の馬券も含めて)ややガックリ来たのだけど、この結果を海外のホースマンたちはどう受け止めるだろうか?

やっぱり東京の馬場は合わなそう、行くんだったらアメリカか香港にしようと思うのか、それともグランドグローリー、オネストは良い競馬をした、これなら勝算はある、と見て今年以上のレベルの馬を連れてきてくれるのか――その答えは来年までのお楽しみ、ということで。

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