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ばなな太郎ものがたり

ばなな太郎。


昔々、あるところに
お父さんとお母さんが住んでいました。

お母さんは、山へ芝刈りに
お父さんは、川へ洗濯にいきました。


すると、
川上からどんぶらこ、えっちらこと
美味しそうなバナナが流れてきます。


「なんと見事なバナナだこと!」


お父さんは、バナナを持って帰りました。


お母さんが、芝刈りから戻ると
バナナを一緒に食べようと
じゅくっと切りました。


すると、なんと中から出てきたのは、
可愛らしい男の子でした。

細いバナナから生まれたため、
それはそれは細くて華奢な体つきです。


「バナナから生まれたから、
ばなな太郎と名付けよう!」


こうして、お父さんとお母さんは
ばなな太郎をとても可愛がりました。



「姫様が鬼にさらわれた!」

ある日、ばなな太郎は、
鴉の声を聞いて、鬼が島へ
鬼退治をしに行くことにしました。

お父さんとお母さんから黍団子をもらい、
旗を掲げて出発です。


最初にお供になったのは、犬でした。
次に、猿に出会いました。
猿は、ばなな太郎に大喜びです。

「なんて美味しそうないい匂いなんだ!
どこまでもついていきます!」

さらに進んでゆくと、
空からゴリラがやってきて
ゴリラも仲間に加わりました。



鬼ヶ島に着くと、
鬼たちはちょうど宴の時間です。

「おいらは、ばなな太郎だ!
鬼たちよ、覚悟しろ!」

声を振り絞りましたが、
体の細いばなな太郎の声は、
鬼たちに届きません。


「おやっ、お客さんだ。
よくぞここまでやってきた。
どうぞおあがり。」

鬼たちはそう言うと、
ばなな太郎たちに
ご馳走を出してくれました。


鬼の大将の近くには、
なんとさらわれたお姫様がいて
楽しそうに踊っています。

「あ、あのお方は・・・?」

ばなな太郎が
近くにいた青鬼にたずねると、

「あぁ、村のお姫様だよ。
足を怪我して歩けないでいるのを
見かけたから、
手当のためにここまで連れてきたのさ。
今はすっかり元気になったみたいで、
踊っているね。よかったよかった。」

と、言うではありませんか。


おら、鴉の言うことを鵜吞みにして
鬼たちを悪者にしていたみたいだ・・・。


ばなな太郎は、自分のことを恥じました。


そして、その日は、
鬼たちとたくさん話して
それはそれは楽しい時間を過ごしました。


翌日、元気になったお姫様と
ばなな太郎が村に帰ると言うと
鬼たちはたくさんの食べ物やお土産を
持たせてくれました。


「なにか困ったことがあったら、
またいつでもおいで。」

「本当にお世話になりました。
ありがとう。」


優しい鬼たちに見送られて、 
お姫様とばなな太郎たちは村へ帰ります。


お姫様を連れて、
食べ物やらをたくさん持って帰った
ばなな太郎に村人たちは、大変喜びです。

「ばなな太郎がお姫様を連れて帰ったぞ!」
「食べ物にもこれで困ることはない!」


ばなな太郎は、必死に鬼の誤解を
とこうと声を振り絞りました。

「鬼たちは、僕と友達なんだ!」

ところが、
村人たちは首をかしげるばかり。


鴉が飛び回りながら言いました。

「ばなな太郎は、鬼たちを従えた!」



従えたんじゃないやい。
友達になったんだい。


それでも、歩き出した噂は
どんどん村中に広まります。



ばなな太郎は思いました。


もう僕は、絶対に噂を鵜呑みにしないぞ。
しっかりと、
自分の目で耳で確かめるんだ。



そんなばなな太郎に
お姫様は、惹かれていきます。

こうして、ばなな太郎は
その後も鬼たちと仲良く、それはそれは
優しく賢い大人になりました。






〜あとがきにかえて〜

未就園児クラスの子たちに
「桃太郎」を読み聞かせするときがあります。
読み聞かせの後は、記憶クイズです。

「山へ芝刈りに行ったのは?」
「おかあさん!」

「川へ洗濯物に行ったのは?」
「おとうさん!」

「川から流れてきたのは?」
「ばなな!」

ここは、変えましたが、
「桃から生まれたのは?」
「おに!」

「最初にお供にしたのは?」
「いぬ!」

「次に出会ったのは?」
「さる!」

「最後に出会ったのは?」
「ごりら?」


子どもたちは、
あくまで真面目で真剣です。

そんな回答からヒントをもらい、 
ばなな太郎を作ってみました。






記事を見つけて下さり、最後まで読んでいただきありがとうございます。 少しでもなにか心に残るものを届けられていましたら、こんなにも嬉しいことはありません。