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だって変だもの

ヒーン ヒーンヒーン
とかん高い音が響いて真っ黒に潰れたようなグリグリっとした大きな目と膨れ上がった頭だけが異常に大きな、頭身の狂った青い色の化け物が追いかけて来る。


ただ薄気味悪く心臓に悪いだけ。


子供に人気のyoutuberが良く実況していたアレ。


ヒ○キンやら色々UUUMの人が実況プレイしてるアレ。



子供にせがまれてダウンロードしたら、アプリ作ってんのUUUMじゃんってステマにうまくハメ込まれたような気になるアレ。



そう青くて頭のでっかい変な鬼の出てくるゲーム。


青鬼オンライン。



時々子供がガチャ回したいとか言い出して不道徳な気分になって困惑するあの青鬼オンライン。






なぜかその青鬼のオンラインのゲームを見るのもするのも好きだったウチの子は、その事が影響しているのかどうか定かではないけれど、国語でお話しを作る課題が出るとなぜか必ず、登場人物が何者かに襲われて死にかけるだとか、突然牢屋に閉じ込められるだとか、物騒な話しばかりを喜んで書いている。


90年代のサイコサスペンスブームでもあるまいし、ローラ・パーマーかレクター博士かよ。「ハロークラリス」


担任の先生だって一体この子情緒はどうなってるのと、困惑顔しながらハナマル付けてるに違いない。


子の健やかな成長を願いながらの寝物語。


刺激的な動画配信の前には無力なんだろうか、昔話オールスターズである桃太郎に一寸法師にカチカチ山のウサギどん、肝心な場面で彼等の情緒への影響力ははどこへ行ってしまってんだろう。


スーホの白い馬読み聞かせながら流したあの時の私の涙よ。









2学期もそろそろ終わりから数えた方が早いくらいの時期、


「僕お話し作ってきたよ。」

雪の残る帰り道を上着も着ずに白い息を蒸気機関車みたいに口から吐き散らかしてハァハァさせてるりんごほっぺちゃんは開口一番こう言った。


いつもすり減って味の出ないスルメみたいにグダグダになって帰ってくる息子が、目を凝らしたら"達成感"の三文字がくっきりと浮かび上がってきそうな晴れやかな表情だ。


その日の国語の授業の課題であろうプリントに書かれた難読な文字達。

嬉しそうに私に差し出す息子に対して一抹の不安が胸中をよぎる。ヒエログリフのような難読な文字のら散らばったプリントを受け取りながら、その不安が実現しないことを祈った。


子供は褒めて育てましょう。

自己肯定感を下げないように。

なるべく過程を褒めるのが大切です。



ここぞとばかりに頭の中の育児アドバイザー達がしゃしゃり出てる。



曲がりなりにも母で親でございますな属性の人間である。子供は褒めて育てよう思想はもちろん頭の片隅に、きっちりかっちりとこびり着いてる。

子供の自己肯定感を下げるような親は令和の世には必要の無い落ちこぼれなのでございます。




子供が自分で作ったお話を持って帰ってきて、母に読んで貰おうと差し出している。


今まさに、この日この時この場所ほどに子供を褒めるタイミングもなかろという自己肯定感爆上げのチャンス到来。


千客万来。


一攫千金。


褒めろよ褒めろ息子を褒めろ。


年末歳末大感謝や新春初売りセール並みに阪神タイガース38年ぶり日本一優勝おめでとうセール並みに、ありとあらゆる経験と知識が総動員してさぁ今こそ褒めろと私の背中を全力少年スキマスイッチ。






「僕一生懸命書いたのにそんなふうに言われて傷付いたよ」


愛くるしいお目々を哀しげに伏せて、りんごほっぺちゃんはそういった。





脳内教育アドバイザーの超強力な後押しがあったのにも関わらず、口を突いて出た言葉は子供の心を浮き立たせるお褒めの言葉では無かった。




「おまわりさんコイツです。」


一部始終を見ていた聴衆がいたなら、真っ先に手首捕まれすくっと上に向かって持ち上げれられそうだ。
  

完全なやらかし案件。


謝罪会見はね白シャツに黒いスーツでね、お化粧は控えめで、涙浮かべて時々声なんかつまらせたりして、とにかく全面的に非を認めて深々と頭を下げるんだよ。


って何の話しだ。


全力謝罪案件であるのは、間違いないけどね。


でもね愛くるしいいきいきとした溢れんばかりの達成感が漏れ出る息子から差し出された物語はそれはそれは奇妙な奇妙なお話でございました。





鼠を主人公とした絵日記3ページ分くらいのお話だった。



『うね』


それが主人公の名前だった。




鼠の主人公の話しなのに、


(うね?!)


(畑やん)



鼠要素はいったい何処へ?

風強すぎてお亡くなりですか?


このネーミングセンスは何だろう。


何をどう辿ったらその結論に行き着くのか理解不能な異次元ピタゴラ装置。



チュー太 チュー子 ネズコ 
 


ネズミ要素を必要とし無かったとしても、もう少しなんか名前どうにかならんかったんかいと思わなくもない。



読み始めから早速、顔面に素早いフックを喰らう展開。


なんとなく雲行きが怪しい。



案の定、この鼠のうねは仲間の鼠共に襲われた。


なんと頭を殴って来たそうだ。



突然襲ってくる。


出た、青鬼オンラインの世界観踏襲してませんかねコレ。


だからUU◯Mが憎いんだ。


お話の襲われたネズミのウネは、流石にお亡くなりとはいかず反撃したようだ。


"「ピネ!ピネ!」


と、叫びました。"





初めてサウスパークを見た時の
 オーマイガー のケニーが殺されたのシーンより、息子のプリントに書かれたピネピネの方が衝撃がでかい気がする。




「ピネ!ピネ!」




意味が分からん。


でもその謎の言葉を発した事によって、うねはなんとか危機を脱出することが出来たらしい。



息子は


(このお話考えた僕どう凄いでしょ!さあ遠慮は要らないよ与えれるだけのありったけの賞賛を僕におくれ)


みたいな顔をして私を見上げていた。




うねという言いづらく、語感も悪い名前、突然襲われて頭を殴られる謎のホラー展開、ピネピネという独特過ぎる叫び声。


素敵と呼べる要素がどこにも無かった。


なんか怖いくらいだよ。



思わず口を突いて出た言葉は




「何か変」












その日以降


「ピネピネ」


と叫ぶ遊びが我が家での流行りとなりましたとさ。










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