葵 友香

「せかいと自分を見る視点をほんのちょっとだけ変えることで、見えるものは大きく変わる」と…

葵 友香

「せかいと自分を見る視点をほんのちょっとだけ変えることで、見えるものは大きく変わる」というようなことを色んな形で書いていくつもりです。

最近の記事

かなしみは至高の味わい

朝起きたら 君のみずいろの「かなしみ」が部屋に散乱していた 床やマットやソファの上に たくさん落ちていた 僕はただ拾い集める 君はまた泣いていたのか 拾い集めたかなしみはおっきな塊になった それを僕はキッチンに持って行き 千切りにする ざくざくざくっと素早く刻む 君が急に起きて「かなしみ」を刻んでる僕を見ても 気に病んでしまわないよう うっすら微笑んで 「かなしみなんて屁でもないよ」という顔で 盛大に刻む 「かなしみ」は ただの「かなしみ」だ 君も僕もそれを感じ

    • 寒空のバッティングセンター〈ショートストーリー〉

      あたしにとってバッティングセンターは バッティングをする場所ではない。 三寒四温の三寒は、春を見ながら冬の中にいるようだ。 迷った結果、厚手のコートを選んでよかった。 都会のど真ん中、 ビルの屋上にあるこの古いバッティングセンターは、 暖房なんてきいてないしやっぱりすこし寒い。 1ゲーム15球のバッティングを終えて、 後ろのベンチにどかっと座る。 ここにいる義務を果たして、 ここにいる権利を得た。 水筒に入れて持ってきたあったかいレモンティー。 コップ

      • ウルトラマリンの憂いの中で〈ショートストーリー〉

        赤くて熟れた唇が目の前にある。 漆黒の闇であるあたしは、その赤さに身悶えする。 「あなたは漆黒ではなく群青よ」と赤い唇は言う。 目の前にはトーストの上に乗った目玉焼き。 最高の加減で焼かれた黄身は、唇に負けないほど濃厚。 赤い唇から吐かれるセブンスターの煙。 煙は漂って、夢の中みたいな霞になる。 喫茶店の中は薄暗くて煙たいのに、 唇の赤さや目玉焼きの白と黄色のコントラストは なぜかはっきり見える。 色彩を見つけるのは久しぶり。 せかいはこんなに美しかったの?

        • 愛が詰まった小さな箱 〈ショートストーリー〉

          この冬、君の朝は早い。 まだ暗いうちに起きるとすぐもこもこの靴下を履き、 電気をつけ、ヒーターをつける。 近寄った僕の頭を2、3回ポンポンと撫でると、 そそくさとキッチンに入っていく。 僕は少し離れたところで座って見守る。 コーヒーメーカーをセットして、 ごはんを丁寧に炊いている。 おきまりの手順だ。 ちょっとだけちょっかいを出したくなった僕は、 君の足元まで近づき体を寄せてみる。 僕の毛むくじゃらの体は見事にジャマになり、 「危ないからあっち行っててね。」と、

        かなしみは至高の味わい

          マゼンダ色の傘の向こう〈ショートストーリー〉

          「ゆめちゃんが透明のビニール傘使ってるのってなんか意外。」 強い雨から逃げるように入ったカフェで、 アイスコーヒーを飲みながらソウスケは言った。 たしかに傘立てに入れる私の傘を見て なんだか一瞬止まっていたな。 突然弱点をつかれて心臓がぎゅうっとなった私は、 仕方なくヘラヘラ笑いながら、 向かいに座るソウスケの頭頂部を見ながら答える。 「なくすのが嫌なんだよね。」 私は23歳のある日、 自分のお気に入りの傘を買うことをやめた。 立て続けに2回どこかに忘れてしまったの

          マゼンダ色の傘の向こう〈ショートストーリー〉

          夏と永遠とラムネとめがね〈ショートストーリー〉

          「夏と永遠って似てますよね。」 取引先の女性からいただいた、 ラムネアイスを食べて高揚した私は、 向かいの席のたなかさんに言った。 たなかさんはパソコンから顔を上げ、 「ゆめさんは相変わらずですね。」 とうっすら微笑んだ。 窓の外は、これ以上ないというくらいの青い空と、 こんもりした小さめの森。 セミがうるさくて仕方ない。 たなかさん。 今日はあいつはいないからリラックスしてくださいね。 私は心の中でつぶやく。   たなかさんは、1年前にきた部長にやられている。

          夏と永遠とラムネとめがね〈ショートストーリー〉

          埋没!埋没!!埋没!!! 〈ショートストーリー〉

          母は眉を描くときにきまって、 「ここが人生の勝負時!」とつぶやいていた。 寝ぼけた顔にメイクしながらふと思い出す。 昔ちょっとだけ好きだった3歳年下の彼から 3年ぶりに連絡がきたのは3日前で、 その3日間私は返信できないでいる。 なぜなら私は今人生に埋没しているからだ。 海沿いのファミレスで一緒にバイトしていた彼は、 私の何かに突然腹がたったようで 理由がわからないまま音信不通になった。 そういうこともあるよね、と思って放置してたら あっという間に3年も経っていた。

          埋没!埋没!!埋没!!! 〈ショートストーリー〉

          寒凪の午後、ひとり会議 〈ショートストーリー〉

          他人を無効化しちゃえばいいんじゃない? とゆめちゃんは昨日言っていた。 いつもののんびりしたテンポで、 どうということでもないような雰囲気で。 「無効化ねぇ。」と言いながら洗濯物を干す。 半年ぶりに会ったゆめちゃんは 相変わらず変な服を着て、 ゆめちゃんの世界にいたままで ゆったりと話をしていた。 ここのところ私の現実の彩度が急上昇している。 居心地が悪いベクトルで。 通称「みぃおばさん」の出現のせいだ。 原因はわかっているのだ。 1か月前の異動で、 温和な男性から

          寒凪の午後、ひとり会議 〈ショートストーリー〉

          元気をなくした君に 〈ショートストーリー〉

          「疲れた〜!今日はごはん作れない・・・  飲みに行こう♪」 そんなLINEが週に1回くらい送られてきていた。 世の中がすっかり変わってしまった2年前までは。 やっぱり理由は、これだろうな。 君はお酒が好きだ。 特にお店で飲むことが。 外出を控えなくてはいけなくなったあの日から。 君は目に見えないくらい少しずつのペースで 元気をなくしていったんだ。 俺は最近まで気づかなかった。 ビール1杯で顔が赤くなるほどお酒が弱い俺にとって、 気軽に飲みに行けないことが、 君にとっ

          元気をなくした君に 〈ショートストーリー〉

          失恋の泥に咲く花 〈ショートストーリー〉

          「失恋の最中には必ず、 私の中に大きな花が咲くんだ。」 そう思いながら。 萌は走っていた。 ある時は丸ビルと新丸ビルの間を。 ある時は阿佐ヶ谷パールセンターを。 ある時は根津美術館の前を。 そして「この人!」とピンときたら、 躊躇なく話しかけた。 「せかいは何のためにあるんですか?」と。 だいたい100人くらいの人に聞いたが、 3割の人が何かの勧誘を断るみたいに 「急いでるのでー。」と答え、 3割の人が完全に萌の存在を無視し、 3割の人が顔に恐怖を浮かべて逃げた。

          失恋の泥に咲く花 〈ショートストーリー〉

          途方もなく果てしない恋 〈ショートストーリー〉

          15歳の時の恋をまだ忘れられないでいる。 気がつけばそれから15年経ってしまった。 5年前のことも10年前のことも、 ロクに思い出せないのに。 15歳のあの雪の日。 恋した瞬間の体感覚は簡単に思い出せてしまう。 あの日以来、 自分から出ている色そのものがすっかり変わってしまったようだった。 30歳にもなって、 私はいまだにその沼から抜け出せていない。 「抜け出せていない。」 と言いながら、 半分残ったままのコーヒーのカップを静かにおく。 ピカピカに磨かれた窓からふと

          途方もなく果てしない恋 〈ショートストーリー〉

          私のせかいを変える瞬間 (明け方のひとりごと)

          昨日、感じられない私を直視してみた。 全部を当たり前だと思っていて、世界に対して心を閉じていて、 すべて見慣れてしまっている私。 感謝もしてなくて、イライラしている私。 そしたら私の中の人が悲しくて泣いていた。 でもその直後、見える世界の光度が変わっていた。 好きなものを創っていて、音楽やっていて、お笑いのある世界。 もうずっとこれで生きていきたいと思ったよ。 私はすでに幸せだった。とっても満たされていた。 ブロックも発見。 感じる世界にどっぷり浸かってしまうと、大切な人

          私のせかいを変える瞬間 (明け方のひとりごと)

          裸の心で向き合う (明け方のひとりごと)

          結局むき出しで生きれるかどうかなんだ。 むき出しの望みを自分が自分で目撃できるかどうか。 むき出しの望みは眩しい。 むき出しの望みはどす黒い。 恥ずかしかったり情けなかったり望みはなぜか恥部だ。 どんなにキラキラしていても、どんなに汚らしくてもそれを自分ですくい上げること。 そして、それを目の前に持ってきてしげしげと見つめる強さを持つこと。 おなかに力を入れて、これが私の恥部なのかと目をこらして見る。 どれだけ恥ずかしくてもどれだけ情けなくても、それはまさしく人生で一番の宝物

          裸の心で向き合う (明け方のひとりごと)

          「言葉と思いを一致させる」とは、もうウソをつかないと「決める」こと

          2年前。 もう金輪際うそをつかない!と決断してすぐ。 とても苦手な職場の女性が退職することになった。 私はとてもうれしかった! なぜなら彼女は、「かまってちゃん」だったから。 彼女はいつも、会社の不満を私にぶちまけ、大切にされていないことを怒り、私が共感しないと激怒してきていた。 うんざりだった。 今までの人生、私が「断れない病」であることを察知して、「かまってちゃん」が私に寄って来るということがずっと起きていた。 そしてこのどの場所に行っても繰り返す「かまっ

          「言葉と思いを一致させる」とは、もうウソをつかないと「決める」こと

          執着を手放すではなく、執着が生まれない考え方☆

          想像してみる。 今のこの現実がずっと続いて、 仮に夢も望みも叶わないとしたら・・・ 「そんなの嫌っ!!! 幸せじゃない!!!」 とっさにでてきた思いは、 「そんなの幸せではない」だった。 私は、「幸せ」とは状況や環境ではなく、「幸せだと感じる瞬間」のことであると考えていた。 でも、なんと・・・ それは頭の中だけの話だった、ということに気が付いた。 例えば他人から見る幸せや、承認を得る事には昔から興味がなく、比較もそんなにしてこなかったので、自分の幸せは自分で

          執着を手放すではなく、執着が生まれない考え方☆

          どんな時でも「起点」に戻る。今ここにとどまり続ける心の強さは鍛練でしか得られない☆

          波はだれにでもある。 物質は振動しているから。 ちょっとした体の疲れが心に左右したり、 心の不調が体に左右したり。 自分に注意を向けていると、ほんのちょっとした感覚の違いが軸からぶれていることを教えてくれる。 今朝は少しずれていた。 体感覚に集中できなかったり、 謎の妄想が止まらなかったり、 ちょっとした音に不快を感じたり・・・ 「今ここ」にい続ける強さは一筋縄ではいかない。 その強さを身につけるには、鍛練しかないのだと思う。 前は、ずれてしまった自分に

          どんな時でも「起点」に戻る。今ここにとどまり続ける心の強さは鍛練でしか得られない☆