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サラリーマンでも行ける‼ 3泊5日でヨーロッパ ロシアの旅④

 3日目は、地下鉄に乗って「雀が丘」へ。ここはモスクワ市街地の南にある丘で、展望台になっている。なんでもモスクワ人は結婚すると雀が丘で記念撮影をするのが「イケてる」らしい。
 地下鉄の駅を降りるとそこはモスクワ川。この川の南岸が雀が丘の斜面になっており、スキー場にあるようなリフトで丘に上がる仕組みなのだが、着くのが早すぎたようでリフトの運行開始まで30分ほど時間がある。川沿いに茹でトウモロコシの屋台が出ているので、それをかじりながら川を眺めて時間を潰す。
 すると、目の前を若い女性が通り過ぎていく。ときおり川をのぞき込むなど明確な目的を持っていない歩き方だ。服装からすると日本人のようだ。そのとき直感した。「この女の人、ヘルシンキの広場でパン買っていた‼(フィンランド・エストニアの章参照)」。もちろん顔など覚えていない。でも後ろ姿から醸し出される何となく寂しそうなオーラ、ちょっとうつむき加減にトボトボ歩く姿など、どう見ても同一人物としか思えない。「3年前の8月にヘルシンキにいませんでしたか?」と声をかけそうになるが、さすがに思いとどまる。

 そんな不思議な体験に驚いたりしているうちに、リフトが動き出し、丘の上へ。それなりに観光客が来るようで、マトリョーシカなどを売る土産物屋の屋台がずらりと並んでいる。しかし肝心の展望は曇りで今一つ。振り返ると、これもスターリン様式の建物であるロシア一の名門大学、モスクワ大学がそびえているが、こちらもちょっとかすんでいる。
 新婚カップルは結構な頻度でやって来る。友人と数人でやって来る者もいれば、式場からそのまま駆け付けたのだろうか、バイクの後部座席に純白ドレスの花嫁を乗せた者もいる。ガイドブックで得た情報によると、同行の友人は新郎新婦に向かって「苦い、苦い」と囃したてることになっているそうだ。要は「苦くてたまらないから、お前らの甘いキスを見せてくれよ」ということなのだが、残念なことにそのシーンは見られなかった。
 リフトで川岸まで降りてくると、リバークルーズの案内があったが食指が動かなかったので、昨日いったアルバート通りや郊外の大型店での土産物探しなどに時間を使う。クレムリン近くの旧KGB本部も見学する。もちろん中にのこのこと入れるような建物ではないので外から見学するだけだが。旧本部を写真に収めていると老人が何やら声をかけて来る。ロシア語なので何を言っているのかは全くわからないが、「写真を撮るな」と咎めているような雰囲気ではない「昔、このKGBは、国民に対しても色々とひどいことをしたんじゃ…」そんなことを訴えているのだろうか。
 そして、この日も夕飯のレストラン探しには苦労した。

 旅も最終日。昼にホテルに迎えが来ることになっているので、午前中はクレムリン見物へ。モスクワを代表する観光地だけに、すぐ近くのレーニン廟と合わせて普通は初日に行くところなのだろうが、なんとなく行く気が起きないままに最終日を迎えてしまった。
 現役の政治の中枢地なので入館時のセキュリティチェックは厳しいと聞いていたが、思ったほどではなく、すんなりと中へ入れる。ツアー客が大勢おり日本人の団体もいる。そのガイドをしているのは、あのマリアさんだった。声をかけると、マリアさんもこちらを覚えていて「ビクトールが昼にいきますので、遅れないでくださいね」と念を押してくる。
 クレムリン観光が想いのほか時間かからなかったので、市内のあちこちで看板を見掛た「コーフェハウス」というチェーンのカフェでお茶をする。来店客の大半が外国人観光客と思われる立地だが、店員は一言も英語を話せなかった。
 ロビーで待っているとビクトールさんが予定時刻よりも早めにやってきた。ヨーロッパで現地人との待ち合わせはこちらが30分ぐらい待つのは覚悟の上だが、なかなかに律儀な人だ。
 運転手、ビクトールさんと4人でシェレメチェボ空港へ。行きの車の中ではマリアさんと主に話していたので、ビクトールさんと雑談めいたことを話すのはこれが初めてだ。
 「この後、お2人はサンクトペテルブルクでしたっけ?」
 「いえ、東京に帰りますよ」
 「え…モスクワだけで帰る日本人観光客初めてです」
 

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