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引用,その引力 -飯田美穂「m, △, 連続体」(-1/9)@京都 蔦屋書店

 年末に関西を訪れた際に鑑賞して、ふと思い出しては気になっている展覧会があった。

 展示は終わってしまっているけれど、ここに。

 アーティスト・飯田美穂 個展「m, △, 連続体」@京都 蔦屋書店(2023年12/23-2024年1/9)



既視感と「なぜか気になる」

 作品は、例えば、このような聖母像であったり、

 このようなポージングの兎であったり、

 目は、まるで漫画のように点で描かれているけれど、作品のたたずまいから、「あえてやっている感」が強烈に漂ってきて、目が離せなくなる。

 それに加えて「あれ、どこかで?」といった既視感。

概要

飯⽥美穂は、絵画への愛とマネ、ゴヤ、ルノアールといったオールド・マスターたちへのリスペクトを込めて多様な名画を引⽤、抽象化したイメージを描くアーティストです。

2018年に京都造形芸術⼤学⼤学院油画コースを修了後、愛知県を拠点に国内で精⼒的に個展やグループ展に参加しており、近年ではアートコレクターから⾼い注⽬を集めています。誰もが⼀度は⽬にしたことがあるであろう名画をベースに、点で描かれた表情の⼈物や、簡略化された形態が印象的な飯⽥美穂の作品。鑑賞者の名画を辿る記憶や時間が、彼⼥の視点と重なり合うことで、観る者の⼼に新しいイメージを創り出します。

概要 より

呼び起される記憶

 毎日見ている膨大な情報のなかには、数々の聖母像であるとか、ときに西洋絵画に描かれた吊るされた兎(静物画によくあるポーズだという)は、わたしたちの脳に紛れ込んでいるはずだ。

 それがあるとき、このようにシンプルな姿にかたちを変えて再びインプットされたとき、なんともいえないふしぎな気持ちに誘われるのだろう。


作家の言葉に耳を傾ける

 加えて、作家による、ちょっと謎めいたステートメント。

アーティストステートメント

そのフランスの教会で⾒たマリア像を単純にきれいだとおもった。
それからマリア信仰の教会にも⾏ってみた。
そこでは席に座れないほどにたくさんのひとが祈りを捧げていた。
それぞれの祈りの⾔葉はこころの内に繰り返される。
そうした祈りの⾔葉を持たないわたしは遠くのマリア像をただ眺めた。
それにもうすぐ卯年がおわる。そしてまたあたらしい⼀年が始まる。
そういえばある教会にうさぎがいたのを思い出す。
その⼿の内の切り札は所在なさげにぐずぐずしている。

飯⽥美穂

同上

 ああ、鑑賞者とのコミュニケーションを愉しんでいるんだなと感じる。

 妄想力にも近いような想像力を働かせれば、アート鑑賞とは、なんと奥深くて愉快なものなのだろうかと。

 もちろんアーティストの意図には、程遠いのだろうけれど。

 今写真を整理していて、鑑賞したときの愉しさが再び、よみがえってきている。


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