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ショパンの時代の楽器と現代の楽器の仕組みはどう違うの?

2023年10月5日から14日まで、第2回ショパン国際ピリオド楽器コンクールが開かれています!

2021年10月に反田さんが第2位になった、ショパン国際ピアノコンクールが記憶に新しいですが、ピリオド楽器によるショパンコンクールは、2018年に第1回が開催されて(川口さんが第2位になりました)今回第2回になります。

ピリオド楽器って??

ピリオド楽器って聞きなれないと思いますが、古楽器とも言います。ピリオドは時代ということで、ショパンが生きていたころに使われていた楽器のことを言います。

ピリオド楽器コンクールの特徴は??

モダンピアノ(現代のピアノ)とショパンの時代のピアノは、構造も音色も音域もタッチも全然違います。なので、ピリオド楽器でショパンを演奏することは、ショパンが求めていた音色や、音楽の世界観をより感じることが出来ると思います。
また、課題曲も、ショパン国際コンクールでは、ショパンの曲のみでしたが、ピリオド楽器コンクールでは、第1ステージでバッハやモーツアルト、また何人かの作曲家のポロネーズも含まれています。そしてファイナルでは、ピアノ協奏曲第1・2番のどちらかだけでなく、「モーツァルト《ドン・ジョヴァンニ》の「お手をどうぞ」による変奏曲」Op.2、「ポーランドの民謡の主題による幻想曲」イ長調 Op.13、 「ロンド・クラコヴィアク」ヘ長調 Op.14の中から2曲という選択も可能ということです。

使われる楽器

6台が準備されています。第1ステージでは、色んな楽器を見ましたが、第2ステージでは、ほとんどの方が1842年製プレイエルか1837年製のエラールを弾いてるようです。

※ピアノの基本的な構造を備えた楽器を発明したのは、イタリアのクリストフォーリという人で、その構造を持つ楽器をフォルテピアノと呼んでいます。(1700年までには発明されていたそうです)現代のピアノは、区別するためにモダンピアノと呼びます。フォルテピアノは装飾などもあり、見た目の美しさなどもそれぞれに素晴らしいです!

コンクールでは、
・プレイエル1830年製の複製(2009年)
・グラーフ1835年頃製
・ブッフホルツ1825年頃の複製(2017年)
・エラール1838年
・プレイエル1842年製
・ブロードウッド1846年製

の6台が準備されているそうです。ここで見てわかるように、プレイエルは2台あります。ということは、製造年だったり個体差だったりでずいぶん音色が違うのでしょう。複製楽器は、その個体が忠実に再現されているそうです。
ショパンがこれらの楽器を使って作曲や演奏をしていたというだけでなく、様々な音色の楽器から、演奏者がこの曲はどの楽器の音色がふさわしいかということを考え、舞台に2台から3台の楽器を置き、曲によって弾き分けています!

ウィーン式アクションとイギリス式アクション

フォルテピアノにはウィーン式アクションとイギリス式アクションと2つの系統がありました。
※アクションというのは鍵盤を押して音が出るまでの仕組みになっている部分です。
コンクールで使用される楽器のうち、グラーフとブッフホルツは、ウィーン式アクションのフォルテピアノです。
プレイエル、エラール、ブロードウッドはイギリス式アクション。

ウィーン式アクションとイギリス式アクションを持つフォルテピアノは何が違うのか少し見ていきたいと思います。

ウィーン式アクション

ウィーン式アクションは、はね上げ式とも言われています。鍵盤に連結したハンマーが突き上げて弦を打ち音が出ます。 音色は、明るくコロコロした印象を持ちます。タッチは軽いです。
ハンマーは鹿皮が巻かれています。

ウィーン式アクション

イギリス式アクション

イギリス式アクションは突き上げ式とも言われてます。鍵盤を押すとハンマーに上向きの力が加えられ、弦を打ち、音が出ます。音色は柔らかく豊かな音色を持ちます。鍵盤はウィーン式に比べ深くて重いです。シングルエスケープメントの仕組みを持つアクションは連打が出来ませんでしたが、連打が素早くできるダブルエスケープメントの仕組みが開発されて、現代のピアノにも使われています。ハンマーにはフェルトが用いられていてを持ちます。

イギリス式アクション

音域について

モダンピアノは88鍵あります。7オクターブと3音です。

モダンピアノの音域

今回のコンクールで使われている楽器は、モダンピアノより狭い音域です。

水色で示したのが、1830年製(2023年複製)のプレイエル、1825年製(2017年複製)のブッフホルツの音域です。
黄色で示したのが、1942年製プレイエル、1835年製グラーフ、1846年製ブロードウッドです。
赤で示したのは、1837年製エラール。

これらの楽器の前に座ると、素人の私は、普段モダンピアノに慣れているので、頭が混乱します。音域がいつもと違うと見えるものが全く変わってくるのです。

ピアノの一番大元の、クリストーフォリは、Cからc3の4オクターブだったので、時代とともに音域が広くなってきています。
ベートーヴェンは、ピアノの音域が広がったり新しい技術の改良が進むピアノに、とても感激して新しいピアノにできることを作品にどんどん取り入れた作曲家です。
今すでにある作品たちが生まれる背景には、ピアノの進化とともに生まれる「新しいこと」であったと思うと、作品たちに畏敬の念が生まれてきます。

第2回ショパン国際ピリオド楽器コンクールがもう終わった・・

この記事を書いているうちに、コンクールが終わってしまいました笑
ファイナルが全員、ピアノ協奏曲第1番でした。ファイナリストの演奏を見ると、最後の1音をファイナリストが弾いたときに、皆さんのホッとした気持ちと充実感を勝手に感じ涙ぐむという、すっかり親のような気持ちで見ている自分に気づきました笑

エリック・グオ(カナダ)が見事第1位に輝きました。
Piotr Pawlak(ポーランド)は第2位。
3位入賞は、 アンジー・チャン(アメリカ)、ヨンフアン・チョン(中国)
ということでした!

素人の私は、フォルテピアノのコントロールがとても難しくて、スケールすら満足に弾けないので、あのように感動する演奏を聴かせていただき本当に心がピュアになるようでした。

その時代の曲たちはその時代の楽器で演奏すると、作曲家たちの心の様子に少し近づける気がします。
今は、Aと音は440Hz(442Hzのことも良くあります)で調律しますが、430Hzでの調律だったので、絶対音感がある人には不思議な感覚があるかもしれません。でも、今とは全く違う響き方に、曲とぴったりするものがあると思います。

音色の違いなど、公式サイトからアーカイブが見れるので、ぜひ注目してもらえたらと思います。

このコンクールをきっかけに自分が分かったふりをしていた構造に目を向けてみました。なかなか面白い作業でしたので、また機会を作って知りたいことをまとめてみたいと思います。
ここまでお付き合いくださった方、ありがとうございました笑

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