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第24回 NHK全国俳句大会観覧メモ

第24回 NHK全国俳句大会に行ってきた。

とてもよかった。何がよかったって、先生方の最上級の褒め言葉を聞けることである。今年は35,090句が(有料で)応募されて、その中の特選20句についての10人の先生方の評が聞けるのである。

そりゃあ、自ずと先生方の俳句観も尖って現れてくるわけで、面白くないわけがない。

併せて、その前に開催されたNHK学園の「春のプレミアム俳句講座」にも参加して、西村 和子先生、星野 高士先生、神野 紗希先生、西村 麒麟先生の話も伺えた。そのパートも含めて、印象的だった話をまとめてみる。

選句について

  • 全国大会では予選を経た一定レベル以上の何千句から選句する。この経験をすると「いい句が目に飛び込んでくる」ようになる

  • 「いい句が目に飛び込んでくる」を言い換えると、「なんか読みたくなる、読みたい気持ちにさせる」。入賞を狙っているような句は字からわかる。そういうのを読むのは疲れる

  • 選者にとって選句の発表というのは、「今、俳句のこれが面白い!」を伝えるイメージ。「この選を見るがいい!」というくらいの勢いで選句する。また、「この句があってよかった、ありがとう」という気持ちにもなる

  • ただ、選句には気力も体力も要する 笑。集中力が要求されるので一気にやる。初めて全国大会の選者になった時、先輩の選者の先生にコツを聞いたら「外に出なきゃいけない時も選句用紙を何枚かちぎっていく。それくらい一気にやるのよ」と教わった

俳句の方向性について

  • 先生方に「俳句とは?」を聞くと答えが違う。「好きなこと十七音にぶっこめばいいんだよ!」もあれば「季題の文学です」もある

  • 当然、選も異なってくる(その点、短歌は割とかぶりやすいらしい)

  • 最低限の基本はありつつも、俳句は多様。その中で自分のカラーを打ち立てていくのが俳句の道

  • だから、詠みたい句を詠んで、句会で誰にも見向きされなかったときに、先生にとってもらえるようなことは一生の宝になる。ブレない指針にできる

  • そういう意味でも、早く師を見つけるのが大事

俳句との向き合い方について

  • 飽きずに、諦めずに、焦らずに。自分のペースが大事、俳句は人生経験もモノを言うから、忙しくて俳句に取り組めない時間も焦らない

  • 先生方から話を聞いたりするのも大事。プレミアムなやる気や熱意は伝播する

特選句の選評で印象的だったお話

  1. 新テーマ系

    • パワーワードと取られるような題材を詠むべきではないという意見もあるが、そこに心の揺らぎがあるならばやっぱり詠むべき。俳句は詠みたいから詠む。そしてそれが成功して季語が沁みてくるこの句にはお礼を言いたい

  2. 季語、季題の使い方系

    • 季語が、舞台道具として(あらゆる角度で)完璧に活用されている

    • 季語が平和の象徴という句。静かな反戦の句

    • 季語に呼応して、題詠の「千」が抜群に効いている

  3. 叙述方法系

    • 普通は失敗するありきたりな言葉。それが抜群に効いてリズムを循環させている。ありきたりな言葉が普遍性を持ち得るということを示した

    • 正体のないものを、正体があるように表現する。存在感がないものの、存在感を出す。難しいリフレインでそれをやってのけた

    • 複数の動詞を使うのは難しい。それを動詞の句またがりをきかせて躍動感を最大限に発揮させた

  4. 把握の仕方系

    • 単なる観察ではなく洞察。空間、時間含めて微妙な変化を感じ取る感覚

    • 街中だとあり得ない風の在り方。それを、その場ならではの視覚でつかんだ

    • 人生の一番素晴らしい時間を切り取ったと言える

    • この句は、今の作者の自句自解が最上の鑑賞

  5. 俳句とは系

    • 俳句はやっぱり挨拶の気持ちが大事。そしてこの句は季語に挨拶している。これだけこの季語に挨拶した句はない。愛していると言っていい。自分はその季語をさほど経験していないが、それでもわかる

どんな観点で語るにせよ、先生方は総じて「新規性・意外性」の要素を挙げていたと思う。新しい俳句の地平や、感性を開拓したいと思ったNHK全国俳句大会だった。

来年の大会も楽しみです。先生方、運営の皆さま、素晴らしい俳句を作ってくださった皆さま、ありがとうございました!

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