阿部八富利

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命のひらめきを探したくなる『俳句とは何か』

俳句論の本は20冊くらい読んだと思うが、どの本にも名前が挙がる評論家がいた。 山本健吉。 彼の「俳句は滑稽なり。俳句は挨拶なり。俳句は即興なり」を引用する文に何度出会っただろう。その度に読んでみたいと思っていたが、なかなか手を出せずにいた。 が、年末年始の時間を取れそうなタイミングで、『俳句とは何か』を鱗読書会の課題本にしてもらえたので、ついに読むことができた。 結果。 思っていたよりも熱い本だった。引用先ではテクニカルな話題が多かったけど、それよりもっと情熱のたぎ

    • 第25回 NHK全国俳句大会観覧メモ

      第25回 NHK全国俳句大会に行ってきた。昨年に続き2回目だ。 この大会は基本的には、先生方の選評と受賞者のコメントを聞く会である。単にそれだけなのだが、3万句以上の句から先生方が選んだ一句だけあって、笑って泣ける人間ドラマが生まれる。その感動を味わうのが、この大会の一番の醍醐味だと思う。 なのだが、俳句論や作句の話にももちろん立ち入るので、その部分をメモしておく。 併せて、午前中に開催されたNHK学園の「プレミアム俳句講座」にも参加して、句会形式で木暮陶句郎先生、西村

      • あし俳の歩き方 〜あしらの俳句甲子園2024に参加して〜

        あしらの俳句甲子園(以下、あし俳)に初めて参加した。 楽しかった。 帰ってきてからもポカポカ満ち足りた気分になっている。 多分また参加するだろう。まだ参加したことがない方にもおススメしたい。 同じ形式で開催されるとして、将来の自分に向けて5点だけメモを残しておく。参加者の皆さまが思い出を振り返る材料や、これから参加する方々の参考になったら幸いです。 1. 早く申し込んで、最前列で見よう今回 12月2日 21:00から受付が開始され、うちのチームは8番目に申し込んだ。

        • いい俳句とは ver2.0 & 自選十句

          俳句3年目に突入しようとしている。俳句を始めた頃に「いい俳句とは ver 1.0」というnoteを書いた。その後「いい俳句とは?」の定義が僕の中で更新されたので、このタイミングでまとめておきたい。 2022年5月の自分:いい俳句 = 情景が大きく立ち上がる句 2023年12月の自分:いい俳句 = 感性をリフレッシュする句 である。例によって、僕の考えをまとめるためのメモですので、未熟の極みですが、何かの参考になれば幸いです。 感性をリフレッシュするとはいい俳句に出会う

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        命のひらめきを探したくなる『俳句とは何か』

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          句集の楽しみ方。『かちょふげ』の場合

          初めて句集制作に参加した。 名を『かちょふげ』と言う。 俳句ポスト並盛連盟(以下、俳並連)の二周年記念句集だ。 句集ができてわかったが、句集は多分、作者側の方が楽しく読める。 去年まだ俳並連に入ってなかった頃に、一周年記念句集『ふんわり』を読んだが、その時より今回の『かちょふげ』の方が断然楽しい。 なぜか。 背景の情報が豊富だからだ。俳句を読むのに鑑賞力や知識が要求されるように、句集を読むときにも、関連情報があると楽しみやすい。 もちろん句集である以上、純粋に俳句が

          句集の楽しみ方。『かちょふげ』の場合

          自身の句境を深める選評とは 〜まのあたり句会2023秋を受講して〜

          秋の大まのあたり句会に参加した。まのあたり句会は前々から気になっていたが、今回初めて参加した。 講師の先生方は、 【青山教室会場】 小川軽舟、堀田季何、神野紗希、岩田奎 【梅田教室会場】 岸本尚毅、山田佳乃、若林哲哉 である。豪華!若い! いわゆる先生同士の句会を見るのは初めてで、楽しく学べた。 本講座に参加して考えこと、感じたことをまとめます。 公開句会から考える、先生方の選評の特徴同じ句会の選評でも自分のような俳句初学者と、先生方では何が違うのか。3点挙げてみる。

          自身の句境を深める選評とは 〜まのあたり句会2023秋を受講して〜

          俳句の山のマイルストーンとは 〜道後俳句塾2023の学び〜

          道後俳句塾2023に参加した。 去年に続き2回目である。塾の形式は基本的には去年と一緒なので、気になる方は↓をご覧頂きたい。 ただし、去年変わったことが3点あった。 黒田杏子先生に代わり、西村和子先生が講師を務めた 進行役が新設され、家藤正人さんが務めた 懇親会が実施された 正人さんが進行役に入ったことと、西村先生が会場にいらしゃって直接お話しされたことで、去年に比べて先生方が塾中で喋った内容が多くなったと思う。体感的には3割以上増えた。 なので去年よりも「選評

          俳句の山のマイルストーンとは 〜道後俳句塾2023の学び〜

          五七五の次を考えたくなる『絶対本質の俳句論』

          苗字が同じ俳人は何となく気になる。歳時記で出会うと、ちょっと余分に目を通しておこうという気になる。僕の場合は、阿部みどり女、阿部青蛙、、、そして阿部完市だ。阿部完市の が好きだ。通称あべかん、本記事でも尊敬を込めてあべかんと呼ばせて頂きます。 そんなあべかんが『絶対本質の俳句論』という、インパクト絶大のタイトルの本を遺していた。鱗読書会で教えてもらって、すぐにポチった。 「絶対本質」なんてねぇ、なかなか言えないですよ。このタイトルはどうしたって「巷で言われているのは本質

          五七五の次を考えたくなる『絶対本質の俳句論』

          見慣れたものを見知らぬものに置き換える俳句を詠みたくなる『おいしそうな草』

          詩人の蜂飼耳のエッセイ『おいしそうな草』を読んだ。俳句とは関係ない文脈でオススメされたのだけど、句作に役立ちそうなポイントがあった。 それは「詩や芸術がどうやって生まれるのか」を論じている箇所だ。 僕は句作するとき、「感動」を思い出してとっかかりにすることが多い。が、どういう「感動」をベースにすると、詩になりそうかのヒントがここにある気がする。 4点抜粋します。黒太字は僕が勝手につけました。 3行でまとめると、 習慣に従って生活していると、眠らされてしまう感性がある

          見慣れたものを見知らぬものに置き換える俳句を詠みたくなる『おいしそうな草』

          絵画的な俳句を詠みたくなる『百句燦燦』

          アンソロジー句集『百句燦燦』を手に入れた。 先日読んだ『愉しきかな、俳句』で、装幀家の間村俊一さんが、衝撃を受けた句集として挙げていたからだ。曰く、 歌人の塚本邦雄さんの愛誦句集 塚本さんの完璧な美意識と価値観で、選句されている 独特な活版組の本文がイカれるくらいすごい 余白も美しい。造本のすごさを味わうために持っておくといい この原体験ゆえ、今でもコンピュータじゃなくて活版にこだわってしまう テキストだけなら今でも文庫版で手に入るよ である。ここまで言われて

          絵画的な俳句を詠みたくなる『百句燦燦』

          俳句というツールを磨きたくなる『愉しきかな、俳句』

          9月に道後俳句塾に行く。西村和子先生に初めて句を見て頂く。 せっかくの機会なので、西村先生の著作を読んでおこうと思った。そうして新宿の紀伊國屋で出会ったのが『愉しきかな、俳句』である。各界の著名な俳句愛好者15名との対談集だ。 読み返したくなる言葉がたくさんあったので、抜き出してみます。 ※一部、編集しているところもあります 洋菓子店当主の山本 道子さんと 歌人の永田 和宏さんと 居酒屋探訪家の太田 和彦さんと 歌舞伎役者の坂東 三津五郎さんと 小児科医の細谷

          俳句というツールを磨きたくなる『愉しきかな、俳句』

          『証言・昭和の俳句』で解けた、道後俳句塾の小さな疑問

          黒田杏子先生が逝去された。いつき組の自分にとって、組長(夏井いつき先生)の師匠である杏子先生は大師匠のような存在であるが、お目にかかったことはなかった。 ただ、『瓢箪から人生』で描かれた、 赤ワインを一緒にガンガン飲んでくれる 大柄で創作作務衣を悠々と着こなす 組長再婚時に兼光さんを紹介したときの言葉「夏井いつきは貧乏です! 再婚する以上は、心して支えてやっていただかねばなりません」 の大らかなイメージと、昨年の道後俳句塾でのコメントをお聞きして、いつかお会いできた

          『証言・昭和の俳句』で解けた、道後俳句塾の小さな疑問

          第24回 NHK全国俳句大会観覧メモ

          第24回 NHK全国俳句大会に行ってきた。 とてもよかった。何がよかったって、先生方の最上級の褒め言葉を聞けることである。今年は35,090句が(有料で)応募されて、その中の特選20句についての10人の先生方の評が聞けるのである。 そりゃあ、自ずと先生方の俳句観も尖って現れてくるわけで、面白くないわけがない。 併せて、その前に開催されたNHK学園の「春のプレミアム俳句講座」にも参加して、西村 和子先生、星野 高士先生、神野 紗希先生、西村 麒麟先生の話も伺えた。そのパー

          第24回 NHK全国俳句大会観覧メモ

          『俳句の射程』は、詩の有無のヒントを得られる

          俳句2年生になった。 組長(夏井いつき先生)が秀句を評価するときに、わかったようでわからない言葉がある。それは、 「そこに詩があるのです」 だ。僕にとって、これが難しい。 思えば自分は、詩への苦手意識がある。学生時代、国語は得意教科だったけど、詩は駄目だった。中原中也の『汚れつちまつた悲しみに』は好きだったけど、テストはいつも自信がなかった。例え正解できても、たまたまでしかなかった。 そして今再び、詩の壁にぶつかっている。 俳句の詩性について言語化できないまま一年

          『俳句の射程』は、詩の有無のヒントを得られる

          ミルクボーイ風季語漫才「滝」

          「どうもーミルクボーイですー。お願いしますー」 「ありがとうございますー」 「いま夏雲システムで、コメントなし予選をいただきましたけどもね」 「ありがとうございますー」 「こんなんなんぼあってもいいですからね」 「言うとりますけれどね」 「いきなりですけどね、うちのおかんがね、  好きな季語があるらしいんやけど」 「あっ、そうなんや」 「その季語をちょっと忘れたらしくてね」 「季語の名前忘れてまうってどうなってんねん」 「いろいろ聞くんやけどな、全然わか

          ミルクボーイ風季語漫才「滝」

          『名句に学ぶ俳句の骨法』は、『20週俳句入門』の切字のモヤモヤを解消できる

          バイブルと名高い『20週俳句入門』を読んで、僕がまず思ったのは、 天になる句で「や、かな、けり」入ってる句、ほとんどないやん! だった。そう思った方は他にもいるのではないだろうか。例えばNHK俳句や、夏井先生が選者の投句先において、入選句で切字の「や、かな、けり」が用いられている割合は少ない。 初心者の自分が句作する上で『20週俳句入門』の基本型はとても便利だ。便利なのだが、投句先で基本型にはまらない秀句の衝撃を浴びると「自分もそういう句を詠んでみたいなあ」という憧れを

          『名句に学ぶ俳句の骨法』は、『20週俳句入門』の切字のモヤモヤを解消できる