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専門領域を融合し、チームで経営者の課題を解いていく——少数精鋭の専門家集団・ABEJA CEO室とは

日本を代表する企業の経営者の課題を一緒に解いていくことで、ABEJAにおいて強固な事業基盤を作っていく——。そのようなプロジェクトを推進してきたのが、「CEO室」です。

このCEO室には、過去にABEJAでCOOやCFOなどの役職を歴任してきた執行役員の外木(CEO室長)を筆頭に、さまざまな専門領域を持ったメンバーが集結しています。

CEO室はどのような役割を担う組織であり、実際にどのようにお客様と関わっているのか。室長を務める外木にその全体像を聞きました。

外木 直樹 / 株式会社ABEJA 執行役員CEO室長
1988年生まれ。愛知県名古屋市出身。名古屋大学経済学部在籍時にVOYAGEGROUP名古屋ラボの立ち上げに参画し、事業責任者としてスマートフォン関連の新規事業開発に従事。2012年に新規事業立ち上げのコンサルティングを得意とするプロフェッショナルファームへ新卒入社。複数の大手一部上場企業の新規事業立ち上げ、PJマネジメントを経験。2013年6月に株式会社ABEJAに参画。同年9月に取締役に就任。COO・CFOなどの主要役職を歴任。2017年3月よりシンガポールを中心とするASEAN事業・組織を統括。2020年12月より現職。

当事者として「トップがやるべきことを代替できているか」

——   早速ですが、ABEJAにおけるCEO室の役割から教えてください。

明確な定義があるわけではないのですが、キーワードを挙げるとすれば「CEOの岡田さんの拡張」でしょうか。

もし岡田さんを拡張できるとした場合、優先的に解決しなければならない会社の悩みごとは何か。その中でも、他の人がなかなかやれないことは何か。それを考え、果敢に挑戦しながら成果を出していくことがCEO室の役割だと考えています。

私自身は“右腕”といった表現があまり好きではなくて......。“当事者”として「会社のトップがやるべきことを代替できているのか」を意識しながら、チームで業務に取り組んでいます。

——   外木さんはABEJAに入社してから、COOやCFOなど主要な役職を経験されています。CEO室長の前にはシンガポール法人のCEOも務められていました。ご自身が経験してきたことの影響も大きいのでしょうか。

シンガポール時代の経験は自分にとって大きかったです。本当の意味で全責任を負う立場であることや難しい意思決定をし続けることなど、経営者の大変さを身をもって感じましたし、「経営者が求めるものは何か」を毎日のように考え続けました。

自分なりのその問いの答えの1つが「『経営者の立場であれば、どのような課題を解決してくれるとありがたいか』を高い解像度で理解し、課題解決に向けて動いてくれる存在」がいたら、どれだけ救われるかということです。
だからこそ、自分はそのような存在になれているのかと常に考えながら仕事をするようになりましたし、結果として案件を失注することも一切なくなりました。

それはシンプルに経営者や経営層の方々の視点でものごとを考え、求められている存在になろうとしているから。「圧倒的な当事者意識」が自分の中に芽生えたからこそだと思っています。

——  「会社のトップがやるべきこと」と聞くとかなり範囲が広いようにも感じます。例えばどのような業務が該当するのでしょうか。

これまでであれば「トップラインの売上の拡大」が大きなミッションでした。

具体的にはSOMPOホールディングス様やヒューリック様など、日本を代表する企業の経営者の課題を一緒に解いていくこと。つまりABEJAのコアとなるような大きな案件を獲得し、会社自体を強くしていくことに注力していました。

創業期はこの役割を岡田さん自らが担ってきた部分も大きかったんです。それをCEO室として、チームで力を合わせることで牽引していこうと。

このようなプロジェクトはお客様の「ミッションクリティカル領域(事業のコア領域)」に関わるため、技術的な難易度が高いです。短期間で終わるものでもなければ、プロダクトを提供してすぐに解決するという類のものでもありません。経営層の方々と深く関わっていくことになるからこそ、周囲からは「AIコンサルっぽい」というイメージをもたれることもあります。

ただABEJAがユニークなのは、もともと「Insight for Retail」というSaaSを祖業としていることです。2012年からAI領域でプロダクト開発を始めており、「ソフトウェアとAIの組み合わせ」を試行錯誤しながら、そこで培ってきたものを武器にお客様の課題解決に伴走してきました。

——  たしかにAI×SaaSの領域からスタートしている点はABEJAの特徴ですよね。「ソフトウェアとAIの組み合わせ」という話も出ましたが、どのようなアプローチでプロジェクトを進めていくのでしょうか。

ABEJAではDay1の提案段階からデザインツールのFigmaでプロトタイプのモックを作ったり、HuggingFace Spaceを使ってAIアプリのデモを開発したりしています。簡易的なものではありますが、実物をお客様に示しながら、提案や議論を進めていく。これは岡田さんが初期からやっていた、ABEJAのスタイルなんです。

私たちの役割の1つは、経営者の方々が思い描いていることを具現化し、解像度を高めていくことで「壮大な世界観と足元のプロダクトやプロジェクトを繋げること」だと思っています。

どうしてもビジョンが壮大なものであればあるほど、足元とのギャップが生まれやすく、従業員や周囲の人たちとの間に温度差も生じやすい。ロジカルだけを積み上げていくと、一見「こんなことは達成できない」と思われてしまうこともあります。

だからこそ、経営者の目線に立って技術とビジネスの両面からそのビジョンを理解し、実際に手を動かしながら高い解像度で具現化していくことが重要なんです。それができれば、ビジョンと足元の事業の間のギャップを埋めながら、従業員や関係者がワクワクできる状態を作っていくこともできる。お客様からもその点を頼りにしていただけていると感じています。

また、プロジェクトから得られた経験を1回限りのものにするのか、他のプロジェクトでも応用できるように「標準化」していくのか。頭の使い方次第でプロジェクトから得られるものも変わってきます。ここもABEJAの文化が色濃く出ている部分です。

ABEJAには「ソフトウェア思考」や「プロダクト思考」といった考え方が根付いています。だからこそ得られた知見を機能としてプロダクトに組み込むことで再利用できるようにしたり、ベストプラクティスを社内に蓄積したりといったことが当たり前のように行われている。外からは見えにくい資産が、爆速で社内にたまっていっているんです。

お客様にとっての“CDO”のような存在、CEO室の業務とは

—— 外木さんはCEO室の室長としてさまざまなプロジェクトに携わってこられたと思いますが、その中で共通する「ABEJAのエッセンス」はありますか。

重要なポイントは「ソフトウェア思考」「経営視点」「当事者意識」「先端テクノロジー」といったところでしょうか。一例として、SOMPOホールディングスさんとの取り組みを簡単に紹介します。

SOMPOホールディングスさんの場合、最初はPalantir Technologiesのデータ統合基盤をうまく使いこなせるような体制を整えながら、その上でAIモデルを実装したり、アプリケーションを開発するところからプロジェクトが始まりました。

SOMPOホールディングスさんはグループ全体を通じて介護やヘルスケア、モビリティ、物流などさまざまな領域のデータを保有されています。大量のデータを統合していくことで可視化できるものが増えていくわけですが、統合すること自体はゴールではありません。それを十分に使いこなせる状態を整えることで、多くのものを得られるからです。

多様なデータを統合し、資産として事業推進に活かせる環境を作っていくこと。これが先方の大きなミッションでした。

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そもそも当時の日本には、AIを始めとした先端テクノロジーを社会実装できる集団がほとんどいなかったんです。

その点、ABEJAはAIやデータの扱いに慣れていて、多くの企業と社会実装に向けたプロジェクトに取り組んできた。さらにグローバルで事業を展開しているということもあって、可能性を感じていただけたのだと思います。

ABEJAはこれまでの約10年間、AIベンチャーとしてプロダクトの開発やお客様のDXのご支援を続けてきました。特に自分たち自身でSaaSやプラットフォームをゼロから開発し、運用してきた知見があります。まさにAIを現場で使えるようにする「プロダクト実装力」や「事業開発力」は、ABEJAの大きな強みです。

だからこそ、AIやデータを活用してDXを推進するにあたって「何をどのような順番で進めるべきか」をお伝えできる。データが溜まっていない状態であっても「3年後にはどれくらいのデータを蓄積でき、具体的にどのようなことが実現できるか」を高い解像度で描けます。

また、その3年後を見据えた時に、どのようなソフトウェアを開発するべきか。それを経営者の方々と一緒に、当事者の視点で考え、プロジェクトを進めていくんです。

今までの経験の中では、当然ながらうまくいかなかったこともありました。私たちは成功体験と失敗体験の双方をお伝えしながら、それを基に経営レイヤーの課題に向き合っています。

具体的な話になるほど、自分たちが経験しているからこそ、当事者の目線でお伝えできることがある。その点がアドバイザーやコンサルティングとは異なる部分だと考えています。実際に経営の臨場感というか、本気度を評価いただけることが多いですね。

企業のデジタル変革に必要なソフトウェアを集約した「ABEJA  Platform」も、これまでの経験を詰め込んだ仕組みです。

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——   AIの領域において、約10年の事業経験がある会社は日本ではかなり珍しいように思います。その経験は明確な武器になりそうですね。以前、別の取材では「お客様にとってのCDO(Chief Digital Officer)のような存在でいたい」というお話もされていました。

そうですね。究極的には1人でCDOのような役割を担えれば理想かもしれませんが、そこは数人のチームで補い合いながら取り組んでいます。通常の会社が何個も事業部を作ってやっているようなダイナミックなことに、2〜3人のチームでチャレンジしているようなイメージです。

例えば、あるメンバーは高校時代から自分でスマホアプリを開発していて、デザインもできる。新卒で入社したゲーム会社でエンジニアとして働いた後、ABEJAに加わりエンジニア兼デザイナーとして活躍してくれています。

私が経営戦略とエンタープライズアーキテクトの領域を、彼がデザイン領域からプロダクト開発領域を担当すれば2人で幅広い業務をカバーできる。そこに大企業で研究員として15年ほど機械学習に携わってきたメンバーが各々を加味した研究開発を行うといったように、全員が複数の強みを保持して、その強みを掛け合わせることで本当にほぼ全ての領域に対応できるんです。

「テクノプレナーシップのどこに強みがあるか」は個人によってグラデーションがあるのですが、個々の専門分野を融合することで、チームとして経営者の課題を一緒に解いていく——。そんな専門集団ができあがってきています。

ABEJAが掲げる「テクノプレナーシップ」について、詳しくは以下の記事で代表取締役CEOの岡田が解説しています。
https://note.com/abeja/n/n938f6c918d30

「型化」することで、一人ひとりができることが増える

——  お話を伺っていて、改めてCEO室の守備範囲が広いと感じました。もともとSaaSから始まったABEJAがこのような取り組みをしているのも興味深いです。

逆説的ではあるのですが、ソフトウェアから始まった会社だからこそ「ソフトウェアだけで稼ぐことの難しさ」を感じてきました。例えばABEJA Platformを開発して以降に私がお話を伺ったお客様は、以下のような共通の悩みごとを抱えていることが多かったんです。

  • AIモデルのPoCをたくさんやってきたけれど、目ぼしい成果にはつながっていない

  • 数が増えていくにつれて「どこで何のプロジェクトをやったのか」を正確に把握できなくなってしまっている

  • 数年経つとモデルが古くなり、チューニングをしないと最先端には追いつけない

  • それを統合管理する仕組みもなければ、社内にどのようなアセットがあるのかもわからない

前提として、お客様は決して「AI」が欲しいわけではない。経営課題の解決手段を探しているんですよね。だからこそ、このような課題に対してはソフトウェアを提供するだけではなく、その手前の段階から一緒に整理を進めていくことが必要だと思うんです。そもそも深く入っていかなければ、部署をまたぐ大きな課題を解決することはできないですから。

——   AIという未知の領域だからこそ、まだ誰も答えを知らないというか、複雑性が高い部分はありそうですよね。

おっしゃる通りです。一方でお客様の経営課題を解決し、ABEJAが目指している「ゆたかな世界」を実装するためには、AIやテクノロジーの力が不可欠です。

人とAIが共創することで、人間の力だけでは難しかったことが実現できるようになる。さまざまなソフトウェアを搭載したプラットフォームとして標準化していくことが、より多くのお客様のDXを後押しし、社会を変えていくことにもつながると考えています。

ABEJAがInsight for RetailというSaaSから始まり、現在ABEJA Platformを展開しているのも、使える技術にすることに大きな価値があると考えているからです。

だから「どう技術を使うか」「どうAI化するのか」という考え方が会社のDNAとして根付いているんですよね。

私たちも創業から数年間は「AIを使って何をやるか」をずっと試行錯誤していました。その期間は事業としても鳴かず飛ばずで、うまくいかないことも多かった。でも2016年ごろから風向きが変わり始め、さまざまな企業が「AIを使って何かやってみたい」と考えるようになったんです。
私たちはお客様と一緒に何百件ものプロジェクトに取り組みました。言わば「(AIプロジェクトに関する)何百ものシャワー」を浴び続けたことで、世の中が進む方向や、共通項のようなものが見えてきたんです。

例えば製造業と食品と自動車。一見全く違う業界に見えても、実は経営者の方々の課題が多くの部分で共通していたり。サプライチェーン・マネジメントという切り口で見ると製造業と物流会社、小売企業の抱える悩みが似ていたり。

そういったプロジェクトを積み重ねてきたからこそ、共通項をソフトウェア化したものを集約し、1つのプラットフォームとして提供できているのだと思います。

——  「ソフトウェア化」していることは、ABEJAで働く人にとっても大きな価値がありますか?

ABEJAが磨いてきた武器を有効活用することで、ABEJAのメンバーがお客様の課題や社会課題の解決により多くの時間を使えるようになりますし、その質も高くなると思います。

私の感覚値では、頭の使い方的には70%くらいは過去に経験してきたことと共通している部分があります。過去にInsight for RetailというSaaSを展開することで培ってきた経験や、現在ABEJA Platformというデジタル版EMSを提供する中で蓄積している資産。個人としてはアジアで事業開発に携わった際の学びや、大企業の経営陣の方々と会社変革に取り組む中で得られた経験もそうです。

この全てが現在の仕事にも活かされていますし、私だけでなくABEJAのメンバーが経験してきたことを「型化」していくことで、「一人ひとりのできること」がどんどん広がっていき、ABEJA自体もさらに成長していけると思っています。

これまでを振り返っても、通常のスタートアップではできないような仕事をやれている実感があるんです。日本を代表する企業のミッションクリティカル領域の課題を、経営層の人たちと一緒に解いていく。そのようなダイナミックなプロジェクトに、20代でも関われるチャンスがあるわけですから。

——  これから入社する人にも同じようなチャンスはあるのでしょうか。

もちろんです。むしろ、今のタイミングだからこそABEJAが創業期からやりたかった「ゆたかな世界を、実装する」ためのプロジェクトに挑戦しやすい環境があると思います。

会社として苦しい経験もしながら、長い時間をかけて技術や知見をためてきました。今ならそれらを存分に活用しながら、チャレンジができる。また小間さんを中心に組織化も進めてきたので、今まで以上に爆速で成長できる環境が整ってきています。

そもそも自分たち自身も20代からやってきたからこそ、若い人であっても「全然やれる」と感じています。

——  最後にABEJAに興味を持ってくださった方へのメッセージをお願いします。

2022年以降LLM周辺のテーマが加速しており、2012年のディープラーニングの勃興から10年経った今でも、AIの面白みが尽きません。現在のABEJAはまさにその最前線で、自身の好奇心とテクノプレナーシップを存分に発揮しながら、大きな挑戦ができる環境が整いつつあります。

ABEJA全体としてはもちろん、CEO室においても、一緒にゆたかな世界を実装していく仲間となってくれる方をお待ちしています。


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