見出し画像

コラム:23-24 PSM振り返り

 直近2年間のユヴェントスを表現するなら何だろうか? 「虚無」?「失望」?貴方が思い付く言葉はきっとどれも正しい。第二次アッレグリ政権下のユーヴェは内容・結果共に不甲斐ない試合を繰り返した。まるで自らがユーヴェであることを忘れているかのように。しかし、例年の如く参加したアメリカツアー、イタリアに戻ってからのユヴェントスNext Generationとの“紅白戦”を見ると今季のユーヴェは一味違うと期待しないわけにはいかない。この2年でピッチ内外合わせてもポジティブな要素がほとんど見られなかったクラブが、たった2週間で少なくともピッチの上ではファンを楽しませることが出来ている。

7月28日 ミラン戦のスターティングⅪ

 ミラン、レアル・マドリー、Next Generationとの3試合で得られたポジティブの一つにキエーザが怪我前の輝きを取り戻しつつあることが挙げられる。身体にキレが戻りドリブルの成功数自体が上がったのもそうだが、無闇に敵陣に突っ込んでボールロストすることがなくなった。ファイナルサードの打開役が不在だったユーヴェにとって、キエーザの本領発揮は最大の補強と言えるかもしれない。

 キエーザの1vs1勝率がある程度保証されれば、相手はダブルチームを組んで対策してくる。となると必然的に他の選手がフリーになりやすい。PSMのユーヴェはキエーザにある程度自由にボールを持たせることを許容しつつ、ミレッティやカンビアーソとのコンビネーションで左サイドを崩して行く場面が少なくなかった。

 特にカンビアーソはキエーザがサイドでボールを持てば、内側を追い越して行くか或いは後方で逃げ道を作る。キエーザが内側でボールを持てばサイドに開くなど、状況に応じたポジション修正が素晴らしかった。


 もう一つ、見てわかるレベルで変わったなと思うことが、ビルドアップの練度向上。嘘か誠かは定かでないが、「去年はほとんど出来なかったビルドアップのトレーニングが今年のキャンプは出来ている。」とブレーメルが発言。横パスマシーンと化していたブレーメルが、縦パスを度々入れるようになり、CBの両脇がボールを持っている時は深さを作るか、列上げサポート、時間とスペースがあれば自らボールを運ぶようになった。

 3バックを採用するチームは、バイタルエリアまでボールを運んだ時にCBが+1を作れるか作れないかで、チームとしてのクオリティが大きく変わる。インテルのバストーニやアタランタのスカルヴィーニはこの+1を作れる能力がとても高い。今季のユーヴェはCBでプレーするであろう全員がバイタルエリアで+1を作れるような意識付けをしているのではないかと思う。

 全員にフォーカスを当てたらキリがないので最後にティモシー・ウェアについて。8月10日現在、レンタルバック組を除けば唯一の補強だが、デビュー戦から高いクオリティを示し続けている。本当に€10mで獲得したのか目を疑うレベルだ。ただ、複数人が絡んで打開を図る左サイドとは裏腹に、右はウェアの身体能力にかなり依存している節があるので、ウェア不在時にチームとしてどう戦って行くのかは考える必要がある。そして、右のWBを実質ウェアひとりで回すことは是が非でも避けたい。このポジションにカスターニュかホルムを加えれば、スクデット獲得の最右翼に名乗りを上げられる。

 私は今季のセリエAのスクデットはユーヴェとインテルの一騎打ちだと思っている。理由は直近2年では感じなかった内容の充実感。そして、欧州戦がない日程面でのアドバンテージを得られること。最後のPSMとなるアタランタ戦、開幕のウディネーゼ戦を見ないと何とも言えないが、もしかしたら我々は5月にはアッレグリに謝罪の言葉を並べているかもしれない。手のひらを返す準備だけは常にできている。ロメル・ルカクが来なければの話だが_____________________、




(了)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?