中国人転校生 2012年の思い出

目前为止今天是最让我感受到学了汉语真好

 中国人の転入生Zくん。13歳。先週、お母さんと転入手続きに学校に来た。しかし、日本語がわからないから学校に行くのはイヤだと言って、校舎の玄関で泣きながら立ち往生してしまった。先生たちも中国語が話せず、なだめることもできない。そこで、隣のクラスの担任のあびが呼ばれた。
 あびが、中国語で話しかけると少し顔が緩んだ。少しずつこっちを向いて、受け答えをしてくれた。だけど、その日はとりあえず帰った。聞けば、ハルビンから着いたばかりだという。無理もない。
 週が開けて、今日、その子とお母さんが放課後学校に教科書などを取りに来た。そのとき、あびは他の子のことで忙しくてその場に行けなかった。その用事を終えて職員室に戻ると「Zくんが、あび先生に会いたがっています」と他の先生が呼びに来た。
 Zくんらのいる部屋にあびが入っていくと、Zくんの顔がほころんだ。「また君に会えてうれしい!」と中国語で言うと、いきなりハグされた。見ると、彼は胸にあびの書いた「ええぞ、カルロス」の中国語訳を抱きしめている。これは僕が担任の先生を通じて彼にプレゼントしておいてもらったものだ。
 「先生は二組の担任なのか。僕は一組になったけど、二組に入りたかった」と(中国語で)言われた。あびもそうしてあげたい気持ちもあったけど、ほかにもいろいろな問題があるので、今回はこういう判断になったのだ。「先生の国語の授業はいつか。僕はそのときから、学校に行く」と彼は言った。「明日の三時間目だ。だけど、一時間目から、おいで。先生が君のクラスに行って、君を紹介してあげるから」と言うと、一時間目から来ると約束してくれた。
 僕のこんな片言の中国語でも、学校にひとりでも中国語を話す先生がいて、彼にはとても心強かったのだ。僕は今日ほど、中国語を勉強していてよかったと感じた日はない。
 これから毎日、僕が君に日本語を教える。君は僕に中国語を教える。友だちだ。と言って握手した。明日ちゃんと朝から来てくれるといいな。

ええぞ、カルロス 多言語版|長澤靖浩 #note https://note.com/abhisheka/m/m17d8d70f6eb5

もしも心動かされた作品があればサポートをよろしくお願いいたします。いただいたサポートは紙の本の出版、その他の表現活動に有効に活かしていきたいと考えています。