らいとらいたあ

何かを感じた、考えた、ひらめいた、思い出した、やってみた、しくじった、上手くいった………

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何かを感じた、考えた、ひらめいた、思い出した、やってみた、しくじった、上手くいった……。 あまり決めずにいろいろ書いています。気が向いたら覗いてください。うれしいです。

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連載小説『ヰタ・セクスアリス・セーネム』四章 レンタル彼女(五)

「お前はどう思うた?結局レンタル彼女とジイってどうなん?」という順平の問に西本が答えた。 「オレが思うに、若い男性がレンカノのシステムで、恋愛やら婚活に必要なノウハウを習うたり、デート気分を味わいたい欲求を満たしたりするのが、まあ本来の趣旨で、健全っちゃあ健全な気がする」西本が続けて「ジイの場合は、キャバ嬢と比べた場合のメリットで選んでるんとちゃうかな。よりシロウトっぽい、うぶな感じの娘との出会いがほしいとか。同伴やら来店の誘いがしつこいキャバ嬢に嫌気がさしたとか」 「なるほ

    • ワーニャ伯父さん、生きていきましょう。長い長い日々を、長い夜を生き抜きましょう。運命が送ってよこす試練にじっと耐えるの。  チェーホフ『ワーニャ伯父さん』 家族争議や失恋の痛手にも耐え、ソーニャは健気に立向います。失意の伯父をも励ましながら。

      • 連載小説『ヰタ・セクスアリス・セーネム』四章 レンタル彼女(四)

         西本がホームページのメニューをタップして調べている。 「順平見てみ。デートにお誘いするまでの手順の説明や」 西本が上から読み上げていく。「まず、『1.好みの娘を選ぶ』や。写真と簡単なプロフィールがのってるわ。お前好みの娘はおるか?」 「それは後にせんかい。手順を一通り読んでみ」と順平が先を促す。 「わかった。『2.ラインかメールをその娘に送る』や。そうすると『3.彼女から返事が来る』そうやで」と西本。 「なんかドキドキしてきた」興奮とともに西本が一気に読み上げていく。「『4

        • 連載小説『ヰタ・セクスアリス・セーネム』四章 レンタル彼女(三)

          「なあ健一、前にキャバ嬢とジイのテーマで、お前の知り合いのおっさんから聞いた話をオレにしてくれたやんか。おぼえてるやろ」と順平が問う。 「ああ、レポートつくった、あれやろ。嫁さんにわからんようにデータを印刷して俺の引き出しの奥に入れといた」と西本が重要文書の可視化をわざわざしたことを知った。  まあ、健一のリスク管理の甘さにあきれながらも、よその夫婦の事まで構もうておられんわいと順平が続けた。「……でな、お前がレストランで出くわしたのが、ほんまにレンタル彼女とそのお客さんかど

        連載小説『ヰタ・セクスアリス・セーネム』四章 レンタル彼女(五)

        • ワーニャ伯父さん、生きていきましょう。長い長い日々を、長い夜を生き抜きましょう。運命が送ってよこす試練にじっと耐えるの。  チェーホフ『ワーニャ伯父さん』 家族争議や失恋の痛手にも耐え、ソーニャは健気に立向います。失意の伯父をも励ましながら。

        • 連載小説『ヰタ・セクスアリス・セーネム』四章 レンタル彼女(四)

        • 連載小説『ヰタ・セクスアリス・セーネム』四章 レンタル彼女(三)

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          連載小説『ヰタ・セクスアリス・セーネム』四章 レンタル彼女(ニ)

           西本親子が食事を終えて、お母さんは婦人雑誌に夢中で、西本はスマホをみている体で、コーヒーをゆっくり飲んでいる。西本には詮索するつもりもないが、ますます気になってきた。となりに聞き耳を立てて会話を聞く。  男性が話す内容は、先日の健診の結果がどうこう、肥満だとかBMIを挙げて数値のわるさ加減や、普段の生活習慣の乱れを笑い話にしている。よくある自虐ネタだ。それに一応彼女も付きあって笑い声も立てたりしている。  一方で女性が、〇〇フェアーに間にあってよかったね、などと言っているの

          連載小説『ヰタ・セクスアリス・セーネム』四章 レンタル彼女(ニ)

          連載小説『ヰタ・セクスアリス・セーネム』四章 レンタル彼女(一)

           西本が「きたでー」と順平の部屋を訪ねてきたら、  順平が「おらんでぇ」と自分の不在をこたえる。 「おるやん」と西本がツッコめば、 「おれちゃうでぇ。ひと違いや」とボケる。  今日も軽快なあいさつを交わす順平と西本だ。和美が友達と出掛けたのでこわいものなしの西本がイチゴのパックを差し出してしゃべる。 「これ、かずちゃんに」和美への気配りというか、ご機嫌取りのつもりだ。「どや、肩のぐあいは」と順平への気づかいも一応する西本。 「まあまあ、可もなし不可もなしっちゅうとこや」と順

          連載小説『ヰタ・セクスアリス・セーネム』四章 レンタル彼女(一)

          チェーホフ戯曲の短編『プロポーズ』と『熊』を読んで、クスクス。カフェや電車でなく部屋で読んでいたら、ゲラゲラ笑い声を出していたかも。 海外小説を読んでいて、翻訳にがっかりさせられることは少なくない。だが、浦雅春さんのこなれた文章は出色だ。原著以上の出来栄えではないか。知らんけど。

          チェーホフ戯曲の短編『プロポーズ』と『熊』を読んで、クスクス。カフェや電車でなく部屋で読んでいたら、ゲラゲラ笑い声を出していたかも。 海外小説を読んでいて、翻訳にがっかりさせられることは少なくない。だが、浦雅春さんのこなれた文章は出色だ。原著以上の出来栄えではないか。知らんけど。

           すべて、何も皆、事のとゝのほりたるは、あしき事なり。し残したるをさて打ち置きたるは、面白く、生き延ぶるわざなり。 (徒然草 第八十二段)  完成形を目指すのは良いが、そうしてしまうのは余情に欠ける。あえて、やり残した部分をつくる。なにをどう作るか、それが個性であり、創造性だ。

           すべて、何も皆、事のとゝのほりたるは、あしき事なり。し残したるをさて打ち置きたるは、面白く、生き延ぶるわざなり。 (徒然草 第八十二段)  完成形を目指すのは良いが、そうしてしまうのは余情に欠ける。あえて、やり残した部分をつくる。なにをどう作るか、それが個性であり、創造性だ。

          連載小説『ヰタ・セクスアリス・セーネム』三章 キャバ嬢(五)

          る 西本の講義も佳境に入ってきた。<結局キャバ嬢とジイってどうなのか>という論点だ。いい時間になったので、和美が出かける時につくっておいてくれた夕食をチンして、西本とビールを飲みながら話は続く。  和美が戻ったら、こんな話はご法度だ。だが、女子会が盛り上がってまだ、帰っては来ないだろう。西本の話の続きは十分聞けそうだ。  思えば、和美との四十年近い夫婦生活は、今や単調な日常の繰り返しで、それなりに平和で穏やかな空気のようなものなのでよいことだと思う。  だが、反面、昔のよう

          連載小説『ヰタ・セクスアリス・セーネム』三章 キャバ嬢(五)

          連載小説『ヰタ・セクスアリス・セーネム』三章 キャバ嬢(四)

           料金やシステムについての講義がひととおり済んでから、順平は次の疑問を講師の西本にぶつけた。それは、<店の雰囲気とふるまい方>だ。  順平は、現役時代に取引先の役職者を接待したりするために、大阪の新地や京都の祇園の店に行った経験がある。会社の特別な行事などの際にも利用したことがあるので、ラウンジやクラブやバーといった場所については知識もある。それらとキャバクラの違いはあるのかないのか、西本にきいた話をかいつまんで言うとこうだ。  一般的には、前者は後者よりもひとクラスグレー

          連載小説『ヰタ・セクスアリス・セーネム』三章 キャバ嬢(四)

          連載小説『ヰタ・セクスアリス・セーネム』三章 キャバ嬢(三)

           西本の講義が一通り済んだので、順平はいくつか掘り下てみようと思った。まずは、<料金やシステム>からだ。 「なぁ健一よ、昼キャバっちゅうとこは、ぶっちゃけいくら位掛かるんや」と順平が問う。 「場所やら店にもよるやろ。時間帯で差も出る。早い時間帯ほど安いわな。これ見てみ」と西本がスマホに某キャバ店の料金システムを表示した。 「この店は、昼の三時からが5000円で、二時間きざみに料金がかわっていくやろ。五時から6000円、七時から7000円、九時からが上限の8000円や」 「そ

          連載小説『ヰタ・セクスアリス・セーネム』三章 キャバ嬢(三)

          はい、句

          夜桜に言葉失くして阿吽形 (よざくらにことばなくしてあうんぎょう) 菜の花や湯掻いて人も犬猫も (なのはなやゆがいてひともいぬねこも) 夕まぐれ勿忘草に息を吹く (ゆうまぐれわすれなぐさにいきをふく) 木蓮のグラス列べて宴盛ん (もくれんのぐらすならべてえんさかん) 人酔わす花ならずとも命なり (ひとよわすはなならずともいのちなり)

          連載小説『ヰタ・セクスアリス・セーネム』三章 キャバ嬢(ニ)

           そのとき、部屋のドアが開いて和美がふたり分のコーヒーを運んできた。「駅前のスーパー行くけど、なんかほしいもんある?」  順平があごで西本を示して「こいつに使いたいから、拷問用品買うてきてくれ」と応じた。 「わかった、痛そうなやつ見つけてくるから。けんちゃん、帰らんと待っとかなあかんで」と和美も乗ってくる。西本が自分の肩を抱くようにして応じた「おお、こわ。拷問夫婦やぁ」  和美が出かけたので、声を落とす必要もない二人はさっそく本題に入った。 「知り合いから聞いた話やけどな」

          連載小説『ヰタ・セクスアリス・セーネム』三章 キャバ嬢(ニ)

          連載小説『ヰタ・セクスアリス・セーネム』三章 キャバ嬢(一)

           しづえママのひとことから、思いがけない自身の混乱状態を経験した順平だった。店を飛び出してからどこをどう歩いたか、西本もいない。ふと気づくと児童公園が目にはいった。  順平は頭を冷やそうと公園のベンチにすわって、しづえママのひとこと「順ちゃんが好みなの」の意味を落ち着いて考えなおしてみた。そうすると、自分があまりにひとりよがりの妄想をしていたのだと気づくにいたった。  ママはあれだけの美形だ。世の男が打ち捨てておくはずがない。きっといい人がいるだろう。してみれば、オレがなん

          連載小説『ヰタ・セクスアリス・セーネム』三章 キャバ嬢(一)

          連載小説『ヰタ・セクスアリス・セーネム』二章 喫茶店のママ(五)

           順平にとって、しずえママの存在はあこがれの人だ。小学、中学時代から始まる順平の片思いの相手の面影を並べたら、最後の一人はズバリしずえママなのだ。西本にも伝えていない、秘中の秘とはこのことだ。唐突に、妻の顔が脳裏に浮かぶ。  妻の和美は高校の同級生だった。高校に入ったうぶな順平は、それまでのプラトニックラブの相手のおもかげをクラスに探していたところ、和美に行き当たり、また片思いを始めた。それが両思いになった馴れ初めはこうだ。  順平の意思が通じたかどうか定かではないが、ある

          連載小説『ヰタ・セクスアリス・セーネム』二章 喫茶店のママ(五)

          連載小説『ヰタ・セクスアリス・セーネム』二章 喫茶店のママ(四)

           さすがにこの店でさっきのキャバクラの話を西本にされては、しずえママの手前まずかろうと順平は危惧していた。  しかし西本もそこは心得て、いつもの無難なパフォーマンスを始めた。ママがふたりにアイスコーヒーを運んできたときだ。 「しずえママぁ、いつになったらオレとデートしてくれるんなぁ。待ちすぎて悶死寸前やねんけど」いったい何回目になるだろうか。あきもせずおなじセリフを西本が臆面もなく言うので、またかと順平は苦笑しつつ思った。西本が言うその戯言が常連客の微笑み(また言うてるわ)

          連載小説『ヰタ・セクスアリス・セーネム』二章 喫茶店のママ(四)