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【第19回公演】第14回盛岡市民演劇賞大賞受賞「 風流怪談 露と答へて ~鬼の業平 仏の双六~」劇場版再演

 実は拓さんの作品を再演するのは初めてのことだ。わたしよりずいぶん多作な拓さんは、新作が次々に出てきてしまうので、再演をするヒマがなかった。今回そんなわけで、再演してみることになったのだが、劇場版であることや、初演の寺の雰囲気などを考えると「初演のが良かった」というような声は必ず聞こえてくるだろうと予想している。とまあこんな風に言っとくと、そう言いづらくなるだろうという予防線を張っておく。
 役者は初演のキャストを揃えるつもりだったが、諸般の事情で一人入れ替わっている。この、一人遅れて入ったはずのキャストが、いつの間にかベテラン勢のセリフの危うさを飛び越えて、稽古をリードしていたりするのだから面白い。
 しかし、ベテラン勢も衰えをものともせず、初演以上の味わいを魅せている。その味わいたるや、グルタミン酸×イノシン酸×コハク酸×グアニル酸くらいのうま味である。ちなみにそのうま味の元は昆布と鰹節と貝類と干しキノコである。
 加えて今回は生音の充実を画策した。そういうことが出来るメンバーが揃っているというのがありがたい。そういったもろもろの要素が複雑にからまり合い、初演より、枯れとか深みとか渋みとかが増し増しとなっている再演である。

2017年10月6.7.8日公演の当日パンフレットに書いたもの

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