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収納上手で機能性抜群!なウバユリの実を知ってるかい?|油山福岡*植物ブログ②

みなさん、こんにちは。お元気でしょうか。
冬の森を歩いていると、いろんな植物の実に出会います。
その中でも抜群に収納上手で、その整理整頓ぶりに惚れ惚れしてしまうのが「ウバユリ」の実です。

今回はしいたけのほだ木ゾーンで発見!

ご覧ください!
カラカラになった実の中を見ると、3つの仕切りがあり、うすーい種子がぎっちり敷き詰められています。無駄なスペースも、列を乱している種子も全く無しっ!

ウバユリの実を割った様子

↑真ん中の茶色い部分が種子です。まわりにある薄い膜みたいなものは「翼(よく)」と呼ばれ、風の力を使って種子散布する植物でよく見かけます。

←左:イロハモミジの種子  オトコエシの種子:右→
これらも風に乗って遠くまで飛んでいけるような仕様になっています。

ウバユリの種子はとにかく薄くて軽いっ!!
薄すぎて、これで発芽できるのかと心配になるくらいです。
その代わり、ひとたび風にのれば気持ちいいくらい飛んでいきます。

後ろの字も読めるくらい薄いっ!!

この種子が風に舞うと…というのをうちのセンター長に再現してもらいました。それがこちらっ!
(センター長!最後おでこに種子が乗っかっちゃってます!)


ちなみにウバユリの実の裂けた部分からは繊維が左右出ており、ネットのようになっています。

左側は種子を飛ばした後の実。ちょっとやそっとでは種子がこぼれないようになっています。

このネットのおかげで種子たちは横からちょっとした風が吹いてもぱらぱら落ちずにすんでいます。無駄死にしない工夫です。
この子たちが旅立つのは下から吹き上げるような強めの風が吹いた時だけ。
その時は上の開口部から一気に舞い上がり、運が良いものは風に乗って遠くへ飛んでいきます(上記の動画をご覧ください)。

空になった実の中を撮ってみました。

根を張る植物たちが移動できるのは人生(花生?)で2度だけ。
ひとつは花粉というカタチで。
もうひとつは種子を散布するというカタチで。
運も大きく左右する中で、ここだ!というチャンスを逃さないため無駄を排除し、効率を重視した結果、ウバユリはこの実の形になったのでしょう。
何度見ても整然と種子が並んでいる様子は見入ってしまいます。

今、市民の森エリアでは周回路沿いや水の森の林道などで種子がぎっちり詰まったウバユリの実を見ることができます。ぜひその機能美を実際に観察してみてください。


■本日登場した植物

ウバユリ <姥百合>
ユリ目ユリ科
山地の湿った林内に生える多年草
花期は夏。本州(関東地方以西)、四国、九州に分布
花期に葉が枯れていることから「葉(=歯)がない」→まるでおばあさん→ウバユリと名がついたとのこと。(ですがおじいさんだって歯がない人はいますよねー。若い人だって歯を大事にしてないと!ですよねー)
ちなみにひとつの果実に種子は300~400ほど。
その種子が発芽して花をつけるまでに6,7年かかるといわれています。

参考文献:
山と渓谷社「山に咲く花」
誠文堂新光社「草木の種子と果実632種」
文章・写真:
ABURAYAMA FUKUOKA自然観察センター 土屋




ABURAYAMA FUKUOKA 自然観察センター

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「自然観察センター」森のひろばから徒歩約3分の場所にひっそりとあります。
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