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天使が結び合わせてくれた家族

数年前のお盆休み、我が家に「天使」がやって来た。
混じりけのない、真っ白な文鳥だった。

ある朝、外に出ていた母を呼びに行こうと、私は玄関を出た。
すると、向かいの家のそばに、なんと白い文鳥が飛んでいたのだ。
これがもし茶色の羽だったなら、スズメか何かと勘違いしたかもしれない。
しかし、白粉をはたいたように真っ白な小鳥だった。
こんなキレイな小鳥、野生であるはずがない。きっとペットショップで買われたやつだろう。それが、どこからか逃げてきたのかもしれない。

家には猫を二匹飼っている。若い猫と、初老の猫だ。
とにかく猫に見つかったらまずい。私は人目もはばからずに、アスファルトに這いつくばり、文鳥の方へゆっくりと手を伸ばした。

おいでおいでと言ってはみるものの、なかなかこちらに来ない。
猫が来やしないか、しきりに家の方を見やり、時が経つごとに焦りが強まった。

すると、近所のおばさんが通りかかった。
おばさんの家は、庭先にバードテーブルを設置している。事情を話すと、おばさんは、すぐにアオマイというスズメの餌を持ってきてくれた。

私はそれを餌に、もう一度トライしてみた。
すると、白文鳥はしばしの攻防の末、私の手に乗ってきた。
と言っても、すぐに餌にありつくでもなく、「そんなに頼むなら乗ってあげるわ」というような軽いノリだった。

猫に気を付けながら、そうっと家に連れ帰り、私の部屋へ入った。
その間、白文鳥は騒ぐでも逃げるでもなく、ずっと大人しかった。

さて、これからどうしよう。
まさか猫がうろついている家で、文鳥を飼うわけにはいかない。

やむを得ず、関東に住んでいた兄を呼び寄せることにした。
兄は文鳥を二羽飼っていた。どうしたらいいかわからないので、引き取りに来てほしいと頼んだ。

ちょうどその頃、新型コロナウイルスが流行し始めていて、兄はしばらく家に帰ってきていなかった。くわえて、リモートワークをさせられており、スケジュールに融通が利くらしかった。
兄は、二つ返事でオーケーしてくれた。

白文鳥は、とても人懐こい性格だった。兄と初対面の時も、すぐに兄の手におさまり、うとうとと船を漕ぐほどだった。
これなら兄ともうまくやっていけるだろう。そう思われたが、私は文鳥の餌や鳥かごなど、一式をホームセンターで買いそろえたところで、寝起きをともにしていた。
別れが寂しくなってしまったのだ。
結局、手放すことができなくなり、兄にはそのまま帰ってもらった。

兄は、ずっと家に帰ってきたいと思っていたようだ。
帰りたいと思っても、母に新型コロナウイルスのことが原因で「帰ってこない方がいい」と断られていた。そのことが、ずっと寂しく感じていたのだろう。
天使のような姿をした白文鳥は、距離のできていた家族を引き合わせてくれた。

そんな白文鳥も、去年他界してしまった。明日で一年になる。
よく「虹の橋を渡った」という表現をされるが、うちの白文鳥は違う。今も家の庭にこっそり住んでくれている。

あれから環境が変わり、私はアマチュアで作り始めたゲームの、キャラクターデザインをすることになった。
主人公は、天使だ。
真っ白な翼を持つ子供である。

だが、もともと私は背景イラストレーターだったのであって、人物イラストは下手くそだ。技術も知識も備わっていないため、上手に描けない。
こんな絵じゃ、全然天使に見えない。
天使と言うのは、力強い真っ白な翼、いつも元気いっぱい、歌と踊りが大好き。
そんな、神秘的で、この上なく可愛い、唯一無二の存在なのだ。


ポケモンのギャロップのイラストを描いている途中、何度も邪魔をされた

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