見出し画像

「笑い袋」

大人になった今でも時々思い出すおもちゃ、それが笑い袋だ。

とにかくこうした唐突に発売されたジョークグッツは、私が子供のころは数多く爆発的にヒットしていた感覚がある。その中でも独自のインパクトで、不動の存在感を維持し続けているのがこの笑い袋である。

笑い袋が初めて家に来た時はドキドキした。この赤い巾着袋。中に何かが入っている。社会通念上、普通は巾着袋の中に入っているモノに価値があると考える。ところが笑い袋は違う。この巾着袋そのもので楽しむのである。この不条理さも私のツボをグイグイと刺激したのである。

さっそくボタンを押してみた。

「わぁーはっはっはっはっ!ウィーヒィッヒィッヒィッ!」

聞こえてきたおじさんの笑い声に家族全員大爆笑した。巾着袋に描かれているのは大笑いする変なおじさんの顔。このイラストによる適度なイラツキが笑いのスパイスとなっている。加えて、聞こえてくる声は古いレコードみたいな粗雑感に包まれており、笑いに拍車がかかった。

15回ほど家族全員でボタンを押して笑った後には、私ひとりで200回ほどボタンを押して笑い続けた。なんか笑いすぎてちょっとちびっている気もしたが、笑いに忙しくてトイレどころではなかった。かつてこれほどまで笑わせてくれたおもちゃはあっただろうか。どう考えてもこの笑い袋は群を抜いて面白かった。

しかし、この面白さにはいろいろと考えさせられる。本来人間は、笑うためには事象を認識し思考しそこに生まれた意外な差異で笑いが起きるものだと思っていた。ところがこの笑い袋はその理論を簡単に崩壊させた。笑い袋は認識や考えなど理由はどうでもよく「そこに笑い声があるから笑ってしまう」このシンプルな図式のみで成り立っている。こうした同調心理とでもいうものを発動させて成功した、類まれで高度なおもちゃなのである。

こう考えると、多少応用した商品も考えられそうだ。

「野々村袋」

数年前に話題となった元議員のあの方である。あの有名な記者会見時の阿鼻叫喚の声を、巾着袋に詰め込んだ商品である。ボタン一つでいつでもあの絶叫声を再生できるのだ。あの感極まる声を聴くだけで「こうした人もいるんだな」「また明日から頑張ろう」と思える方も多いのではないだろうか。少し気分が落ち込んでいる方用とし、一定のニーズはありそうだ。

「真由子袋」

「このハゲー!」の怒号と暴言によって社会全体に衝撃が走った。特に世の中のハゲている方、あるいは薄毛で悩んでいる方全員を震撼させたことは記憶に新しい。この怒号の声を巾着袋に詰めた商品である。これを購入する方は少しMっ気がある方や、気合を入れてほしい時用であろうか。

「ささやき袋」

これも有名な高級料亭による多数の食品偽装疑惑に対しての釈明会見でのささやき女将のことである。このときのささやきを巾着袋に詰め込んでみた。通常の笑いに飽きた方、女将のささやき指示に従ってみたい心情の時に効果を発揮するだろう。少々マニアックなカテゴリーに分類される商品である。

この記事を書いていたら、これらの声たちをまた聞きたくなってしまった。感情を揺さぶる声は私の心をとらえて離さないのだ。あぁ、こうした魔力を持った声たちを巾着袋に詰め込んで、どなたか商品化してくれないものだろうか。

ではまた。

画像1

需要あるかな?



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?