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パラドキシカル・リーダーシップ-今、求められるリーダーシップは?-

パラドキシカル・リーダーシップという言葉をご存じですか?
私は先日、あるきっかけでこの新しいリーダーシップの概念を知りました。
従来のリーダーシップは「either / or(二者択一)」でしたが、これからは、矛盾したことを受け入れる「both / and(両立)」の発想が重要という考え方です。
Harvard Bisuness Reviewの記事はこちらになります。

なぜ、パラドキシカル・リーダーシップが必要なのか?

テクノロジーの進化が加速するにつれて、ビジネス環境の変化も激しく複雑化し予測が困難な状況にあることより、「VUCAの時代」(Volatility:変動性、Uncertainty:不確実性、Complexity:複雑性、Ambiguity:曖昧性)と言われていますが、このような時代において、ビジネスリーダーは、矛盾または逆説的な課題への対応が必要であると言われています。
例えば、
・短期的な経済利益と長期的な環境への配慮のバランス
・既存事業の継続・発展をさせながらの新規事業へのチャレンジ
・組織文化を守りつつ多様性の実現
などの矛盾した課題への対応が迫られています。
企業経営におけるパラドクスの具体例は、pwcのサイトで説明されていましたので、こちらのサイトを参照してください。

そもそも、パラドクスとは何か。

上記のHarvard Business Reviewの記事の筆者であるウェンディ K. スミス氏(デラウェア大学)とマリアナ W. ルイス氏(シティ大学)の別の論文「Toward a Theory of Paradox: A Dynamic equilibrium Model of Organizing」ではパラドクスを「矛盾しているが相互に関連しあうAとBが継続して存在する状況」と定義しています。そして、パラドキシカル・リーダーシップは、この矛盾を矛盾として、AとBの両方を、言い換えるならば二元性を受け入れることが重要と言っています。
類似した言葉であるジレンマは、長所と短所を持つAとBについて、どちらかを選ばなければならない状況と説明しています。正に二律背反、二者択一の状況です。
また、弁証法は矛盾するAとBについて、高次元の概念Cを構築する考え方ですが、次に高次元の概念Cと矛盾する概念Dが発生すると説明されています。

パラドキシカル・リーダーシップに必要な素養

北京大学のヤン・チェン氏の論文「PARADOXICAL LEADER BEHAVIORS IN PEOPLE MANAGEMENT: ANTECEDENTS AND CONSEQUENCES」では、AとBの両方を受け入れる(二元性を受け入れる)ために具体的な行動として、
例えば、
・部下との距離を保ちつつ親密さをつくりだす
・部下一人ひとりの個性を認めつつ、グループ全体の整合性を考える
などをあげていますが、実際に矛盾したことを行動するのは難度が高いと思います。チームメンバーが戸惑ってしまうこともあると思います。
しかし論文では、リーダーのこのような矛盾した行動は、メンバーの仕事の熟達度、適応的行動やプロアクティブ行動に対して、ポジティブな影響をもたらすことが、調査結果から導き出されています。

時代とともに求められるリーダー像が変わる

20世紀に入りリーダーシップ論の研究が盛んになりますが、その時代の社会の状況を踏まえて、求められるリーダーシップが変化しています。
日本能率協会マネジメントセンターから出版されている『これからのリーダーシップ 基本・最新理論から実践事例まで』では、

最初は、優れたリーダーに共通している「特性」に着目したようです。
そして、1940~1960年には優れたリーダーの「行動」にフォーカスした研究が多く、1960~1970年には、コンティンジェンシー理論や条件適合理論などリーダーを取り巻く「状況」に着目した状況適合理論の研究が多くなったとのことです。
1970年代に入り、リーダーシップはリーダー個人のものではなく、「リーダーとメンバーの関係性」で生まれるものであるという交換関係理論の研究が主流になりました。
次に1980年代には、「変革」を推進できる経営トップの強力なリーダーシップが求められるようになりました。著名なところではゼネラル・エレクトリック社のジャック・ウェルチ氏でしょうか。
その後はインターネットの登場により変化が激しくなる中、チームのメンバー全員でリーダーシップをシェアするという考えのシェアード・リーダーシップが出てきました。リーダーだけではなく「フォロワー」の存在が重要という考えです。
フォロワーの大切さを表現した有名な「裸の踊る男性」があります。


このように、社会環境によって求められるリーダーシップが変化してきています。

今、世界規模のトランジション(体制移行)の中にいると、アカデミーヒルズの竹中平蔵理事長は、「2023年の新年のあいさつ」で述べられています。トランジションの先にある未来を予想することは難しいと思いますが、社会の動向をしっかりと見定めて、どのような社会になるのか、ライフスタイルがどのように変化するのか、そしてその時代に必要なリーダーシップは何か?など、アンテナを高く持ち敏感でありたいと思います。

アカデミーヒルズヒルズ 熊田ふみ子

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