見出し画像

「信頼感+信頼性=信頼関係」か?

オンラインによるセミナーやミーティングが常態化しました。
オンラインによるサービスが普及したことで、今まで遠隔では参加できなかったイベントへ参加できることや、ミーティングでは参加者のオンラインのリテラシーが向上したことで、リアルのミーティングとほぼ同じ感覚で進められるようになったと思います。(資料のシェアなどは、オンラインの方が便利だったりしますね。)

一方で、「やはり、リアルが良い!」という声が根強くあります。
アカデミーヒルズでは、2022年の4月から規模を絞りながら少しずつリアルでイベントを開催し始めました。
俗にいう「ちょっとした会話」はリアルならではの醍醐味です。
また、初めて会う人とはリアルな方が適しているのではないでしょうか。その要因の1つとして、「信頼関係を築くにはリアルの方が良い」という意見があります。
そこで、信頼をキーワードに本をさがしていたら、『社会的信頼学 ポジティブネットワークが生む創発性』という本に出合いました。
この本で、「信頼感」と「信頼性」について記載されている興味深い内容がありましたので、紹介したいと思います。

サーカスの空中ブランコやナイフ投げが例えとして出てきます。
空中ブランコは、フライヤーはキャッチャーを信頼し、キャッチャーは信頼される立場です。その場合にキャッチャーは、
①受け止めてくれる高い技能があること、
②受け止めてくれる意図があること、
この2つがそろって「信頼される人」になり、それを「信頼する人」としてフライヤーがいます。

この構図がより明確になるのがナイフ投げです。
立ち手が「信頼している」ことと、投げ手が「信頼に値する」ことを観客に見せることで成り立つ芸です。

ところで、誰かを「信頼している」状態は、誰かに対して「信頼感をもっている」状態と言えるでしょう。そして、ある人が誰かから「信頼を受けるに値する」状態にあるとき、ある人は誰かに対して「信頼性がある」と言えるでしょう。

そこで、まず信頼性について、英語では、reliabilityとtrustworthinessの2つの単語があります。
reliabilityは、専門用語として日本工業規格では「アイテムが与えられた条件で規定の期間中、要求された機能を果たすことができる性質」と定義されています。正に最初に説明した①の高い技能があることを意味しています。
一方で、trustworthinessは②の意図を含めた信頼性を意味するそうです。

そして、信頼感の定義は「他者の信頼性の推定値」だそうです。信頼感が高いということは、推定値が高くなっている(=期待が高くなっている)状態と言えるでしょう。
『不平等が健康を損なう』では、「信頼感の多い社会は、信頼感の少ない社会よりも、経済資本を生み出す基礎となる資本=ソーシャル・キャピタル(社会関係資本)が多く、さらには平均余命まで含めたライフチャンスが拡大する」と説明されています。

改めて、「信頼関係を築く」ということは、信頼感を高く持つこと、そして信頼性として、期待された意図と高い技能をしっかりと持つことの関係だと認識をしました。
単に、お互いが信じあうという理解から一歩踏み込めた気がします。

※ところで、サーカスのナイフ投げに関連して、志賀直哉の『范の犯罪』を読みました。信頼性と信頼感を認識した上で読むと一段と奥深いと思います。

アカデミーヒルズ 熊田ふみ子

#アカデミーヒルズ #信頼 #志賀直哉 #范の犯罪 #リアル #オンライン


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?