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大学法人の経営における「競争回避の戦略」とは

① 競争回避の戦略とは
前回お話しした5フォースモデルの1つに「新規参入企業の脅威」があります。
その脅威を回避するためにはどのような戦略が必要なのか。
これが「競争回避の戦略」です。

具体的な戦略の1つに、「参入障壁を築く」という手段があります。
まずは、「参入障壁」とは何かをご説明します。


② 参入障壁とは
「参入障壁」とは、ある業界に新規参入しようとする企業にとって、
その参入を妨げる障害のことです。
参入障壁が高いと、新規企業は業界に入りにくいし、
参入障壁が低いと、新規企業は業界に入りやすいことになります。

参入障壁の主な要因として以下のものがあります。
1.業界内で扱われている製品(サービス)が差別化されていること
2.新規参入企業にとって、巨額の投資が必要であること
3.政府の許認可が必要であること

教育業界全体で考えた場合には、前回もお話したように、参入障壁はかなり高いといえます。
その理由は上記の2と3の要因があるからです。

しかし教育業界をもう少し細分化して見てみると、各大学にそれぞれ様々な学部が存在するように、
例えば医療系・教育系・理工系・情報系など様々な業界があると思います。
ある大学が新規に学部を設立しようと考えた時、その学部が所属する業界があり、そこに対しては新規参入という形になります。その際には、参入障壁についての分析が必要となります。

参入障壁を築くための戦略として、「規模の経済性」と「経験曲線効果」があります。
次に、「規模の経済性」についてお話します。


③ 規模の経済性とは
規模の経済性とは、企業の規模や生産性が増大するに従い、製品(サービス)1個あたりの生産コストが逓減していく現象のことです。

ここでいう生産コストとは、施設やシステムなどにかかる固定費ではなく、人件費や材料費などの変動費を主に指しています。つまり、サービスの拡大縮小に変動して費用が増減するものです。

この生産コストが、企業規模や生産性の拡大により逓減することを「規模の経済性」といいます。
このことは、法人規模が大きい大学には「規模の経済性」が働き、他の大学法人の新規参入を妨げていることを想起してもらえればイメージしやすいかもしれません。


④ 経験曲線効果とは
経験曲線効果とは、製品(サービス)の累積生産量が増加するに従い、製品(サービス)1個あたりの生産コストが一定の割合で減少するという経験則です。

この経験曲線効果の構築にはある程度の時間が必要となりますが、積み重ねた経験はその自体が新規参入を妨げる要因となります。つまり、長期間その業界で経験を積み重ねてきた大学法人には、経験曲線効果がみられるということです。


⑤ 競争回避の戦略と競争優位の戦略について
今回お話した「競争回避の戦略」は、新規参入企業の脅威に対抗するための回避戦略です。つまり、どちらかといえば、既存業者が行う防御戦略です。

価値観の多様化が進む現在、新たな事業展開は大学法人にとって必須だと思いますが、今所属している業界での立場を死守することも重要なことです。今回のお話はそうした防御戦略だとご理解ください。

次回お話するのは、「競争優位の戦略」です。こちらはどちらかと言えば新展開を考える際に必要な戦略となります。次回もぜひ読んでください。


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『協育の伴奏者』代表 角 幸範

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