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どんぶり金魚 ~金魚と仲良くなれるとっておきの飼い方を“金魚博士”岡本信明先生に教えてもらいました。

古くて新しい飼育スタイル

 金魚は水槽でしか飼えないと思っていませんか。そもそも日本の家庭において金魚を水槽で飼うようになったのは昭和30年代頃から。それまでは庭の池の他、甕(かめ)や鉢などに入れて気軽に飼っていました。私がおすすめする、小さな器で飼う「どんぶり金魚」は、実は金魚飼育の原点にも近いスタイルなのです。また、従来の飼い方が金魚を鑑賞するためのものだとすると、どんぶり金魚では金魚と〝友だち〟になることができます。
 とはいえ、どんな金魚とも仲良くなれるわけではありません。金魚のルーツはフナで、突然変異や交雑の繰り返しにより多様な品種が生み出されてきましたが、フナに近い和金などはまず人に懐きません。もっと改良の進んだ出目金、琉金、らんちゅう、ピンポンパールなどの方が懐きやすい。個体差もありますから、たくさんの中から選ぶときは、こちらに目線を合わせてくる金魚を選ぶとよいでしょう。

どんぶり金魚の飼い方

 金魚の代謝産物として排出され、フンの分解でも生じるアンモニアは、高濃度になると金魚に害を与えます。そのため水替えが何より大切。小さな器は簡単に水替えできます。毎日行ってください。
 金魚はエサをやればやるほど体が大きくなります。しかし2週間くらいは何も食べなくても実は平気。欲しがれば多めに与えてもよいですが、エサを増やすとフンも増えて水が早く汚れます。フン掃除をよりこまめに行い、水替えを忘れないようにしましょう。そしてエサの時間は、金魚と仲良くなるための絶好の機会です。浮上タイプのエサを一粒ずつ水に浮かべ、金魚がエサを口に入れる瞬間を狙ってそっと指を差し出します。これを重ねると徐々に指に慣れ、やがて指を見せれば自ら近づいてくるようになります。
 1週間程度なら留守番も可能。家を空けるときには大きめの器に金魚を移し、出掛ける2日前からエサをやめ、フンによる水の汚れを減らす配慮をします。
 夏の風物詩といわれる金魚ですが、水温を下げない限りは年中活発に動いてくれます。生活空間の中に金魚を置き、お世話をしながら触れ合うことで、そのかわいさをぜひ実感してみてください。

金魚に似合う器探しもどんぶり金魚 の楽しみの一つ。岡本先生の職場 のテーブルに置かれていた器は九谷 焼。小さなピンポンパール2匹が愛 嬌たっぷりに出迎えてくれた
底にたまったフンはストローの端を指で押さえ吸い上げて除去。やってみる とこれが楽しい。金魚をお世 話しているという実感も湧く
近づけた指に寄ってくる 金魚たち。毎日お世話を 続けているとこんなにも 懐く。かわいい

どんぶり金魚 飼い方アドバイス

水替えは毎日行う。水はカルキを抜いた水道水がベスト。汲み置きするか市販のカルキ抜き剤で中和して使う。ミネラルウォーターは不向き。温度差の大きな水に移動させると体に負担がかかるため、新旧の水の温度合わせを行っておくとよい。

飼い始めや体調不良時には、2週間ほどのトリートメントを。大きな器にカルキ抜き水道水を入れ、食塩を加えて0.5%塩水をつくる。この中に金魚を入れ3日間断食、4日目からごく少量のエサを与える。数日おきに塩水を取り換え、様子を見ながら養生させる。

話:岡本信明さん(おかもと・のぶあき)
1951年愛知県生まれ。東京海洋大学長を経て、学校法人トキワ松学園理事長、横浜美術大学長。研究分野は魚病学・遺伝育種学。監修書に『育てて、しらべる日本の生きものずかん14金魚』『ときめく金魚図鑑』、川田洋之助との共同監修・著書に『金魚 長く、楽しく飼うための本』『原色金魚図鑑 かわいい金魚のあたらしい見方と提案』『どんぶり金魚の楽しみ方』『金魚』などがある。

写真:松嶋愛


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