新しい価値観は、感動とともに浸透させたい。
2021年夏から1年半お世話になったWEB広告会社の加藤社長(仮名)が、ある日クライアントさんに送った文の一部である。
私は真っ先に違和感を感じた。
22歳から33歳までの11年間の会社勤めでは、こういう場合は、上司が
「新しい動画は、長橋が作りますので、しばらくお待ちください」
とか
「新しい動画は、長橋に作らせますので、しばらくお待ちください」
と言っているのを見てきたからだ。
社外の人に対して、「〜さんがやってくれる」という言い方をしてしまって、違和感を持たれないか、気になって仕方がなかった。
また、私自身もクライアントさんに対し、この業務は私ではなく加藤社長がやります、ということを伝えるときに、
今までの私の習慣のまま、
「弊社の加藤がさせていただきますね」と送るべきか、
加藤社長流に
「弊社の加藤社長にやってもらいますね」とか「弊社の加藤さんにやっていただきますね」と送るべきなのか悩んだ。
クライアントさんとは、必ず加藤社長も入っているグループで連絡を取り合っていたから。
ある日思い切って、加藤社長に聞いてみた。
そうすると、すぐに加藤社長から返信がきた。
明確な意図があって、そうしていたのか…
しかも業務委託だから、とか関係ないし…
「社内の人を呼び捨てにしないと非常識と思われる」
「呼び捨てが当たり前」
そんなふうに思い込んでいた私にとって軽く衝撃で、しばらく呆然とした。
かつて、取引先の人に対し、上司のことも呼び捨てにするのが普通だった。
「弊社の渡辺(部長)と参ります」
と言ったとき、(部長、呼び捨てにしてごめんなさい)とかすかに胸が痛んでいたことを思い出した。
それをしなくていいなら、快適だな。
そうだよね、社内の人間は、身内じゃないしね…
いや、身内のことだって、へり下る必要ってないんだよな。
よく子育て本にも、「謙遜して、我が子を悪く言うのは、子どもの自己肯定感を下げます」みたいなことが書いてあるけど、それに通ずる気もした。
我が子が褒められると、つい「いや〜全然です、まだまだ赤ちゃんですよ」とか言っちゃうくせが抜けないけど、
「本当ですか。嬉しい。そうですよね、頑張ってると思います」とはっきり言える母親になりたい。我が子のためにも。
どんなに身近な人であっても、1人の人間として尊重すること。その気持ちがあるなら、それを隠さずに、たとえ仕事においても、そのまま言葉にしたっていいんだ。
それを加藤社長に、感動とともに気付かせてもらった気がした。
これが、長年正しいと思ってきたことを疑う、という初めての体験だったかもしれない。
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