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雪解けに願いを込めて

僕の相手をする人間は総じて皆被害者だ。友人であれ、恋人であれ、家族であれ。僕は他の人よりも独占欲とかこの人のことを知りたいと思う気持ちが強い気がする。他人に興味がある、と言えば聞こえはいいが、少々度が過ぎている。好意を持った相手のプライベートスペースに踏み込みたくなってしまうから、他人との境界線をきちんと引く人にとっては鬱陶しい存在だ。同時に自分の心にも土足で踏み込んで欲しいと思ってしまう、執拗さも兼ね備えている。それらは全て自分に自信がなかったり、自立していないことから生まれる自己嫌悪が原因なんだろう。特に最近は思考がネガティブな方向へ走ってしまうことが多くて、相手からしたらすごく嫌なヤツになってるんだろうなと勝手に考えてしまう。自己嫌悪への堕サイクルだ。

人は等しくそれぞれの人生を生きていて、次から次へとぶつかる悩みと戦っている。他人に構う暇なんてないし、個人を居場所をすることなんて危うくて出来ない。だから、今あるものをほどほどに大切にしていくんだろう。絶対や永遠なんてものは存在しないから。恋心も友情も、物事に対する感情も、瞬間的な輝きがあるから尊い。それは二十年という長くはない時間を生きてきただけでもよく分かったし、嫌というほど身に染みている。それでいて尚、僕は人間が独りであることに絶望する。

家族もいるし、友人もいるし、今はいないが恋人も出来たことがある。関係性に絶対は無くても、これまでの人生は1人で生きてきたわけじゃない。体調を崩せば心配をしてくれる人間がいて、くだらない話で笑ってくれる人間がいて、こんな僕にも好意を抱いてくれた人間がいて、とても恵まれている。分かってる。僕は幸せ者なんだ、そんなことは分かってる。ただ、それでも、僕の絶望は無くならない。

いくら長い年月を共に過ごしても関係が切れる時は一瞬だ。あんなに仲良かったのに環境が変われば会わなくなった友人。たくさんの感情を共有したのに些細な積み重ねで離れ離れになった元恋人。人と人の関係なんて少しの出来事で断たれてしまう。きっと今仲良くしている友人の何人かも、僕から連絡しなければだんだんと疎遠になっていくのだろう。それが嫌だから、たくさんその人のことを知りたいし、僕のことを知って欲しい。でも現実はそれすら許してくれない。もがけばもがくほどに僕の好意は薄汚いものに変化していくのを感じる、それはもはや付き纏う悪霊だ。

今年最初の雪は珍しく大雪で、地面を覆い隠した。訳あって白い世界が苦手な僕にとっては少々目を瞑りたくなる光景だ。まだ綺麗なままの雪の絨毯に仰向けに寝転んでみた。なんか感じることあるかなって期待したけれど、特に何も感じなかった。いつもより冷たい地面を感じて、降りかかる雪は少しだけしょっぱかった。背中一面がびしょ濡れになった代わりに地面に大きな跡がついた。次の日に見にいったら、そんな跡はもう無かったのだけれど。雪だるまがそこかしこに作られていて、溶けて腕が折れている。雪だるまを神様に見立てて手を合わせた。僕の被害者が幸せになってくれることを祈って。いなくならないでくれ、離れていかないでくれと願いを込めて。明日には綺麗に溶けているんだろう、そんなもんだよな。

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