酒を辞めるための無駄だった努力(2):ショットグラスで上品に飲めば酒量をコントロールできるのでは
二日酔いから目覚めたとき、昨夜アルコールを制御できなかったことを最初に後悔する。諸悪の根源は飲み過ぎたことである。では、その酒量を少しずつにすればいいのではないか?
今回はそんなお話。
■寝酒の作法
わたしは寝酒としてアルコールを常用するようになり、そのために酒を飲み始めた。アルコールに対して味は求めていない。
酒に求めているのは2つ。値段(安いこと)とその効果だ。
安い酒は焼酎(甲類焼酎)でも、ウイスキーでも美味さなど求めてはいけないもので、薬のような味でも文句を言ってはいけないものだと思っている。
だから、味わうことなどせずに息を止めて、早く胃の中に放り込むのがマナーなのだ。
なお、この時のコツは鼻で息をしてはならない。まずは、一回大きく 口で息を吸い込み、息を止めながら飲み下す。
これが私の「強くて安い酒」を飲むときの作法だ。
■強い酒を飲むときの「儀式」
強い酒を鼻呼吸で飲むと、喉を通過したアルコールが鼻を刺激し、しばしばむせる原因になる。
強いアルコールが喉を通過する際、体が危険を感じてこの液体を排除しようとするのであろう。
強い酒でむせると、鼻の奥に沁みて非常に苦しい。
これを経験して、一杯目は体が反応してしまうのは仕方がないと割り切る。
リラックスし、息を止めながら飲むことで 穏便にアルコールを摂取する。これはもはや 安酒を煽るときに必須の「儀式」といってもいい。
例えるならば、銭湯の冷たい水風呂に入るときのように、静かに心を落ち着けて ゆっくり入る時と似ている。
ただし、二杯目からは体が慣れ、一杯目よりもスムーズに飲むことができるようになる。
■湯呑で飲むから二日酔いになる
そういうわけで、強い酒を大きな湯呑で一気に飲む習慣が身についた。
この方法では確かに素早く酔えるが、その後の二日酔いが増えてきた。
自分にとっての適量を見極めるのが難しく、「とりあえず1杯」と始めて、「もう少し酔いたい」と思って半杯追加し、「さらに少しだけ」と思いながら結局はグラスを溢れんばかりにしてしまい、「せっかくだから」と飲み干す。
このように、大きな湯呑ではついついアルコールを過剰に摂取してしまうことが多いのだ。
■なぜ適正飲酒で抑えられないのか
結局、自覚なく飲み過ぎてしまうことがある。
酒飲みは誰しも、酔っているときは自分がどれだけ飲んだかを把握できないのだ。
その理由は、飲んだアルコールが胃から吸収され、血液を通じて脳に到達するまでには時間がかかる(タイムラグがある)ためである。
さらに、脳にアルコールが届くと、酔いが深まり判断力が鈍る。だから、飲めば飲むほど、適度な飲酒量でやめることが、だんだんと難しくなっていく。
■今週も 二日酔い、予定通り。
「ちょっと飲みすぎたかも」と思い始めた時には、実はもう手遅れで、飲み過ぎている。そこから数分で、気を失うように深い眠りに落ちる。
翌日の休日は、ひどい頭痛に見舞われてしまい、夕方まで布団から出られないことが多い。「何かを変えないと」とは考えるが、その瞬間は、ただ辛い頭痛を何とかしのぐことに全精力が集中する。
変わらなければならないと自覚はあっても、その時は痛みが優先されるのだ。
「このままではダメだ」とは、二日酔いを経験するたびに感じる。おそらくこれは世界中で共通して、二日酔いの際には多くのアルコール依存症患者は「こんな生活を続けてはいけない」と反省するはずだ。
そして、二日酔いがやっと解ける夕方になると、体も少し回復し始め、空腹も感じてくる。
■「ショットグラスで飲む」という冴えたアイディアを思いつく
二日酔いがやや治ってきた頭の中には 脳ではなく、砂袋が詰まっているような 何も考えられない状態になっている。
そんな砂袋であっても、二日酔いからシラフに戻る貴重な数時間で「大きな湯呑で酒を飲む行為が そもそも問題なのでは?」という真理をひらめく瞬間があった。
では、その解決法は?
答えは単純で、小さなグラスを使って飲む量をコントロールすることだ。
これで自己管理ができ、適量を守り、二日酔いなど防げるはず。
素晴らしい!
どうやら私は 「もう二度と二日酔いにならない方法」を見つけてしまったようだ。
夕方になり、二日酔いに苦しみながらも、日常のルーチンに従ってスーパーでおつまみ(安いイカのフライなど)と酒を買う習慣は、酒飲みにとっては心の支えであると同時に、アルコール依存症に向かう危険な習慣でもある。
正直、日常の楽しみのトップに「晩酌とおつまみ」がランキングしている人は多いだろう。少なくても私はそんな生活だったし、何なら晩酌意外の楽しみは あまりなかったとも言える。
ただし、今回だけはいつもとは違う。
100円ショップでショットグラスを買うというアイデアが、飲酒量をコントロールするための 輝かしい一歩となる(筈)のだ。
ショットグラスを使うことで、一度に飲む量が減り、飲逄速度を落とすことができる(筈)。
「これは、過度な飲酒を防ぎ、健康的な飲酒習慣へ移行するための実用的な方法(の筈)だ」
自分を褒めつつ、財布を握りしめて100円ショップへ向かう。
■ショットグラスで飲んでみたら
新しいショットグラスに、いつものブラックニッカ クリア(アルコール度数37%)を注ぐ。
透き通ったグラスに映える琥珀色の液体は、まさに映画の中の一幕のように美しい。
そして、いつもの儀式のように、ショットグラスを手に取り、ウィスキーを喉の奥へと流し込む。
感想:・・・うん!駄目だ!量が少ない!(即答)
普段は湯呑みで息を止めて大量にウイスキーや焼酎を飲む習慣があるため、たった一杯のショットでは全然 物足りないのだ。
すでに喉は 危険な液体が通過したことで 警戒しているものの、酔いは全く訪れる気配はない。つまり、最悪の状況だ。
そのため、すぐに湯呑みに戻り、二杯目を いつもより慎重に息を止めて飲む。舌の奥に残るアルコールの不快感を感じながら、今回の試みが失敗に終わったという屈辱も一緒に飲み干した。
これは 作戦失敗した自分に対する「罰」でもあるので 覚悟を決めて飲み干さなければならない。
しかし、次の瞬間には「この不名誉も 酒に溶かして忘れることにしよう」、という酔いどれ特有の 支離滅裂な思考に翻弄され、翌日は更にひどい二日酔いになってしまったのは言うまでもない。
■酒を飲まない人への解説
今回のショットグラス作戦について 酒を普段飲まない人にも理解してもらうために、この状況を食事に例えてみよう。
例えば、とてもお腹が空いている時に美味しいカレーが目の前にあると想像してほしい。
目の前には非常に小さいスプーンと普段使っている大きなスプーンがある。
最初の一口はその小さいスプーンでカレーを食べるルールだとする。
さて、一口食べた後、次はその小さいスプーンを使い続けるだろうか?
ほとんどの人は大きなスプーンを使ってたくさん食べたくなる。
それが酒飲みが感じる心理と同じだ。
お酒も 大きいコップでグィッと飲みたいのだ!
結論:ショットグラスで適正飲酒ができるかと思ったが、効果はゼロであった。
結局、このショットグラスはこの一回限りの使用でお役目を終えることになった。
#さて、今晩の夕食は、カレーにしてみるのもよいですね
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