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助産師経験談 vol.13

ある壮絶なお産のお世話のお話を...

ってずっとこんな感じですが
いつも寄っていただき
嬉しいです。

遂に10まで来ちゃってるぅ(苦笑)

普通は、赤ちゃんの頭は
下にあります。
反対だと骨盤位といって
一般的に逆子って言います。

逆子だと今では予定をたてて
帝王切開になりますが
わたしはまだ骨盤位分娩を
行なっていた最後の頃に
助産師になったので
骨盤位分娩の介助もしてました。

骨盤位分娩はドクターの
特殊な技術を持ってお産となるので
今ではその技術を教えたり
見せて盗ませたりできるドクターも
減っているでしょう。皆無かも...

骨盤位の最大のリスクは
臍の緒が先に出てくる事。
臍の緒が先に出てきちゃうと
赤ちゃんの心拍が止まりかけますので
もうお産云々の騒ぎじゃなく
即帝王切開で赤ちゃんを
それこそ「可及的速やかに出す」
事が最大のポイントになるんです。

稀に臍の緒を戻せる事もあります。
そうできればいいんですが
陣痛があるとなかなか難しい。

今では骨盤位は陣痛にならないうちに
オペですので、そう言うリスクも
ほぼないでしょう。

ただ臍帯が先にって
これが頭が下であっても
あり得るんです。
その稀なケースに当たってしまった...

わたしの受け持ちだったGさんは
順調に陣痛が来ていました。
しかし子宮の入り口が
6cmから進みません。

しかもこのGさんNICUのナースで
お父さんは整形外科医でした。
分娩の流れはわからないにしても
専門用語やスタッフの動きなどで
ある程度の事は理解されていました。

相手がドクターだと
こっちのドクターもやりづらい面とか
あったようで、なーんか歯切れの悪い
いいかっこしぃにも取れる
態度や説明に
心底アホらしって思ってましたけど

あ、爆弾発言しちゃった(爆笑)
だって赤ちゃんに何も関係ないし!

Gさんはわたしのお世話が
とても安心だと信頼してくださり
赤ちゃんの誕生を一緒に迎えてほしい
わたしの勤務帯でお産になりますように
ってずっと微笑みながら
話してくれました。

わたしが付いている間
主治医は診察もしづらそうに
遠慮とはちょっと違って
Gさんの信頼がわたしにある
ヤキモチ?嫉妬?
今思えばそんなところのせいで
わたしがその日のリーダーに状況を
報告に行っているものの5分の間に
別のスタッフを連れて診察してました。


この時、物っっっっ凄い
嫌な予感がしたのを覚えています。

わたしは診察に行くのかと
横目で黙認できたので
すぐGさんのところへ走ったんですが
すでに診察していました。

多分、いや絶対主治医は
自分が勤務帯の時に無事に
お産になる様にという意図があったと思います。
なので、人工破膜と言って
お産を進めるために破水を起こす
それをやったんだろうと思います。

わたしがベッドに着くや否や
ドクターが
「全員集合!!!すぐオペだーーー!!!」
「小児科も呼べー!!!」
「器械出せーーー!!!」
と怒号のように叫ぶんです。

わたしは受け持ちだったので
破水してなかったのに
破水していること
主治医が馬乗り気味で
もう診察の手を動かせない事を
見て、急げ!!!
と頭フル回転。
フルも振り切ってた。

やっぱ脳ってすごいと
思い出しても思う...

Gさんのそばを離れず声をかけ続け
状況を説明し続け
腰を抜かしている診察についたスタッフに
しっかりして!
走れ!!
叫べ!!
人を呼んでこい!!
と叱咤し
ナースコールを押し
分娩室でオペです!!!
手の空いてる人分娩室へ
師長へ報告もお願い!

そんな色んな人の叫び声で
耳が変になる程の中、

静脈麻酔をし
オペしました。

どっばーーーっと
ドクターが外来ストップしてダッシュで
やってきて、診察した主治医は
医局長に「臍帯脱出です、すんません
すんません、助けてください」って
小声で言ってて
小児科の先生にも「すんません、
助けてください」って言ってた。

赤ちゃん出すまで診察の手は
動かせないので、主治医がものすごく
邪魔なんだけど、仕方ないので
消毒をぶちまけ、
赤ちゃんの蘇生の準備と確認を
他スタッフに指示しつつ
Gさんのモニター装着を指示し
手の余っているスタッフに
書類と記録時系列でと言い
オペ後の準備をお願いし

わたしは器械出してくれてるスタッフから
器械をオペしてるドクターにわたしつつ
大声でGさんに声をかけて...

全てがスローモーションの様に
記憶に残ってます(驚)。

そしてあれが同時になぜできたか
は、よくわからなーい
神のみぞ知るセカイに近いと思う。
とにかく口も動いたなぁ(苦笑)

メスが入った時の
Gさんの叫び声、耳に残ってます。
タオルを口に入れましたが
麻酔が浅いので痛いはず。

こっちが泣きそうになりました。

だんだん麻酔が効いて
Gさんが眠った頃
2分後くらいかなぁ
赤ちゃん生まれました。
ぐったりしてました。
でも、とーーーーいところででも良い
おめでとうという声を
届けたくて

赤ちゃん生まれたよ
おめでとう
頑張ったーーおめでとう!

って叫びつつ
小児科の先生の蘇生を見守りました。

心拍が止まっていたので
心臓マッサージをし
すぐ蘇生できたのですが

アプガースコア1分後1点
5分後6点
10分後8点

アプガースコアとは
生まれた時の赤ちゃんの
状態をスコア化したものです。
10点満点で評価します。
8-10点は問題ないという指標。

3分後には泣き
一気に戻ってきてくれた赤ちゃん

だけど、脳へのダメージも心配
ってのが正直心配なところでした。

お父さんと赤ちゃんは小児科へ。
Gさんのオペが終わって
静脈麻酔から覚めた頃
彼女はわたしにこう言ってくれた。

「すごい大変だったし
色んな人がいっぱいいて
声かけてくれたんだけど
あなたの声しか聞こえなかった。
あなたがわたしの担当でいてくれて
本当に良かった。
聞こえてないはずなのに
おめでとう〜って聞こえたのぉ
安心した〜」と。

届いてた...
よかったぁと心底思いました。

だけど、もう、申し訳ない思いで
張り裂けそうでした。
そんな有難い言葉を頂く資格なんかない
と猛烈に申し訳ない思いでした。


後に訴訟を起こしてもいいケース
という話も上がりましたが
お父さんと主治医は同じ大学という事と
赤ちゃんが奇跡的にダメージ無しで
普通に3日後には
Gさんのお部屋に戻って
すくすく
ぷくぷく育った事などから
普通に退院できました。

その後一ヶ月検診や
訪問もしました。
赤ちゃんはすっかり大きくなり
太鼓判の健康優良児。

本当に良かった...



お産に医療者のエゴが絡むと
本当に何一ついいことがない
という事と

医療が介入すると拗れる事と

赤ちゃんは
それすらも受け入れて
こちら側の経験を
見守って命かけて教えて下さる
そんな尊き存在である

という事。
また改めて感謝です。



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