【斉藤壮馬さん インタビュー後編】「生誕1250年記念特別展 空海 KŪKAI-密教のルーツとマンダラ世界」音声ガイド
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奈良国立博物館で、2024年4月13日~6月9日まで「生誕1250年記念特別展 空海 KŪKAI-密教のルーツとマンダラ世界」が開催中です。
音声ガイドナビゲーターの斉藤壮馬さんのインタビュー後編をお届けします。(前編はこちら)
印象深い空海のエピソード、空海の言葉は・・・
―ガイドで紹介したエピソードで気になったものはありますか?
斉藤さん:今日、ナレーションを声に出して収録していて感じるものがあったのは、師匠の恵果が空海を待っていて、「君が来るのをわかっていた」という有名なエピソードです。
僕は割と、宿縁というか、どこかで何かが結ばれていると、素直に思っているタイプです。なので、空海の言葉も語っていて楽しかったんですが、恵果和尚の言葉を口にした時、恐れ多くもすごくしっくりきました。
ガイド、ナビゲーターを務める場合、あまり芝居をつけすぎると、かえってくどくなって観覧の妨げになってしまうかもしれない……というようなことを考えたりするのですが、恵果の言葉はなぜかすっと身体になじむような感覚があったんです。こういう瞬間もまた、ナビゲーターをやらせてもらえる嬉しさの一つですね。
―恵果の言葉に合わせて頂いたお声、本当にぴったりでした。恵果の肖像を見ながら聞いても違和感がないというか…
空海の言葉で心に刺さるお言葉はありますか?
斉藤さん:「仏法遥かに非ず、心の中にして即ち近し。真如、外に非ず、身を奔てて何んが求めん」という言葉が印象的でした。仏の教えや万物の真理は、どこか遠くではなく己の心の中にある。それまで空海の半生や思想を辿ってきたからこそ、より心に染み入る気がして。
また、智泉というお弟子さんが亡くなった際のエピソードも非常に印象的でしたね。
―本展担当の奈良国立博物館の斎木研究員が語ってくださるトラックですね。
斉藤さん:はい。悼む気持ちやその感じ方に絶対唯一の正解があるわけではないと思いますし、そういうところに空海の人としてのゆらぎやあたたかさを感じました。
音声ガイドのナレーションへのこだわり
―色々な音声ガイドをやられていますが、いつも気を付けてらっしゃることはありますか?
斉藤さん:大げさに表現をつけすぎない、ということをいつも大事にしていいます。でもこれは難しくて、完璧にフラットに読めば情報はわかりやすく伝わるのかというと、意外とそうでもないんです。特に今回はナビゲーターという形で、正確無比なナレーションとはまた少し違う立ち位置だと思うので、基本的には引き算なんですが、引きすぎないようなバランスを考えました。
例えば、『三教指帰』の中で儒教、道教、仏教それぞれを司る登場人物の主張があるじゃないですか。それをわかりやすくお芝居するのはあまり難しいことではない。でも、オーバーで説明的な芝居よりも、聴いてくださった方が各々感じ、考えるヒントになるくらいのバランスがちょうどよいのではないかな、と思っています。
―今回は、空海や恵果の言葉をセリフっぽくも読んで頂きました。
斉藤さん:今までやらせて頂いたガイドではあまりなかったセリフのような部分も、今回はすごく楽しかったです。自分がお芝居の勉強を始めて最初にやったのが朗読でした。語りや朗読、ナレーションなど、声優の仕事にもいろいろありますが、自分にとって「読み、語る」「それを届ける」というのが一番のルーツであると思っています。
そしてやっぱり一番大事なのは「あ、これは楽しいな」とか「好きだな」という感覚に素直になること。技術としてはもちろん、よどみなく正確に語れるよう努めますが、気持ちとしては結構ウェットな感じで、人情とか情感を大事にしたいという思いでやっています。
―おっしゃる通りで、やはりその匙加減が、ただの情報としてだけでなく、心に残るか、記憶に残るかの差だと思います。それでは、最後に、展覧会にいらっしゃる方へのメッセージをお願いします。
斉藤さん:たくさんの巡り合わせの先に、こんな素敵な展覧会のナビゲーターを担当させていただきました。自分で収録をしていても学びになる点がたくさんありましたが、現地に行って、現物を見て、思考してみることで、この展覧会のよさをもっともっと感じられるのだと思います。このインタビューを読んでくださったのも、まさしくご縁。ぜひ多くの方に、空海生誕1250年という記念すべき年に開催される素晴らしい展覧会をご堪能いただきたいです。何卒よろしくお願いいたします。
―ありがとうございました。
斉藤さんのこだわり、空海への思いがたくさん詰まった音声ガイドと共に、ぜひ展覧会を堪能してください!(タカハシ)
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