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1日15分の免疫学(112)自己免疫と移植⑤

自己免疫疾患の発症について

本「多くの自己免疫疾患は、単一のエフェクター機構で発症するわけではない」
大林「推しだけが原因ではないということ?」
本「自然免疫系の細胞が組織損傷の大きな原因になっている。ILCもバリア組織の表面など自己免疫疾患の病変部位で見つかっている。自己免疫疾患における役割は不明だけど」
大林「そうなんだ。現場にいるってことは関係者っぽいな」
自然リンパ球(innate lymphoid cell: ILC):リンパ球類似の形態をもち、Tリンパ球と同様のサイトカインを産生する、抗原受容体をもたない細胞。

自己免疫疾患が慢性化する理由

本「自己免疫疾患の場合、免疫応答を収束させる重要な機構が適用されない」
大林「あぁ…自己抗原はそうそうなくならないもんね…いつまでも攻撃が続く」
本「そう。自己抗原持続的に存在するので、慢性炎症が誘導され、組織が損傷して、損傷した組織から更に自己抗原放出される」
大林「おぉお……悪循環だ」
本「その上、ダメージを受けた組織から放出されるサイトカインやケモカインに応答してマクロファージ好中球などのエフェクター細胞が誘引され、持続性・進行性自己破壊が起こる」
大林「あぁあぁああ」

エピトープ拡大について

本「このように自己免疫応答が進行すると、新しい自己抗原上の新しいエピトープに反応する特異的なリンパ球クローンが動員される。これはエピトープ拡大epitope spreadingと呼ばれる」
大林「どんどん事態が悪化するのか……怖い」

本「エピトープ拡大はいくつかの方法で起こる。抗体に結合した抗原は、効率よく提示されるため少量であってもB細胞にとりこまれ、そして処理されることで、隠れていた新たなペプチドエピトープが潜在性エピトープcryptic epitopeとしてT細胞に提示されるようになる」
大林「なるほど、そしてまた新たに抗体をつくり、、」
本「さらなる自己反応性B細胞クローンがつくられ、多彩な抗体がつくられ、その抗原と結合した他の分子も細胞内に取り込む」
大林「うぇえ~嫌な連鎖だ。応答を始めた自己抗原とは異なる自己抗原を提示してどんどん拡大していく…」

本「SLEでは、クロマチンの蛋白質とDNA成分に対する自己抗体がある」
大林「え……それって、全細胞被害不可避やんけ」
※SLE:systemic lupus erythematosus全身性エリテマトーデス


本「細胞が死んで崩壊するときに放出される成分に対する自己抗体が作られ、免疫応答が拡大し続ける。たとえばヌクレオソームの構成成分に対する自己反応性CD4T細胞は、複数の異なる自己反応性B細胞を刺激する」
大林「え?!1ペアじゃないの、複数?ナンパ野郎だ!?」
本「まぁ、一つのT細胞一度に一つのB細胞としか相互作用できないが、実際には同じT細胞クローンに由来する別の細胞が異なった特異性のB細胞と相互作用できる」
大林「そっか、クローン増殖するもんな」

自己免疫疾患の分類

本「自己免疫の標的である抗原抗原群と、その抗原のある組織傷害される機序によって、自己免疫疾患の病理と臨床病態が決まる」
大林「分類難しそう」

本「アレルギーやアトピー性炎症疾患の原因となるIgEを介した2型応答は、自己免疫疾患ではそれほど重要ではない」
大林「そうなんだ。じゃあ、他のクラスの抗体や、Th1や17ってこと?」
本「自己抗体が組織傷害を起こす自己免疫は、3型(Th17)または1型(Th1)免疫、T細胞非依存的IgM産生B細胞の生成が特徴」
大林「ほぉ」

本「自己抗体による組織傷害は、特定の細胞や組織を標的にする場合と、免疫複合体特異的な血管床に沈着することによる場合があるので、臓器特異的の場合も全身性の場合もある」
大林「標的になる場合だけじゃなく、免疫複合体も関係するのか」
本「ほとんどの自己免疫疾患では複数の機構が働いていると考えられる」
大林「複合的な原因か…解決は一筋縄ではいかないってことね」
本「たとえば、1型糖尿病と関節リウマチでは、T細胞と抗体の両方によって組織傷害が起こる」
大林「自己免疫疾患起こるところに抗体とT細胞あり……」

自己抗体と組織傷害について

本「では、自己抗体がどのように組織傷害を起こすかを説明するね」
大林「推しは?T細胞は?!」
本「自己反応性T細胞と自己免疫疾患についてはそのあとで」
大林「うぉおお」
本「IgGIgMが、血球細胞表面の自己抗原に反応するとどうなると思う ?」

◆復習メモ
免疫グロブリン(イムノグロブリンImmunoglobulin、略称Ig):5種類ある(IgG,IgM,IgD,IgA,IgE)。「Y」の形をしていて、上の「V」部分はFab領域、の「I」部分はFc領域と言われる。
免疫細胞表面にあるFcレセプターが「I」部分と結合し、「V」部分が抗原と結合すると、免疫細胞にシグナルが伝達される。
すべてのナイーブB細胞IgMIgDを発現している。

IgM:一部はクラススイッチ前の通常B細胞conventional B cellが産生し、大部分は腹腔や胸腔内に存在するB-1細胞と脾臓の辺縁帯B細胞が産生する。

免疫グロブリンの覚え方①



大林「その赤血球は貪食細胞に食べられる…自己免疫性溶血性貧血autoimmune hemolytic anemia」

本「そう。IgGIgM結合した赤血球貪食細胞によって循環血液中から速やかに除去される」
大林「めちゃめちゃ怖い……貧血っていうか酸素が……」
本「この反応は脾臓でよく起こる」
大林「脾臓なんだ…」
WEB「脾臓とは,左脇腹にある造血・リンパ器官であり,(略)通常10cm x 6cm x 3cm程の大きさで,乳幼児期の血球(赤血球,白血球,血小板)産生の担い手です」

本「赤血球破壊にはもう1つ機序があって、補体の膜侵襲複合体形成による自己抗体感受性赤血球の溶血
大林「なにそれ呪文?」
本「自己免疫性血小板減少性紫斑病だよ」
大林「名前が長い!血小板に対する自己抗体がつくられて紫斑もできるってことか」
本「この疾患では、GpⅡb/Ⅲaフィブリノーゲンレセプターや血小板特異的表面抗原に対する自己抗体がつくられる」
大林「血小板が減るとやばいな……出血が止まりにくくなる」
日大「免疫性(特発性)血小板減少性紫斑病(immune thrombocytopenic purpura以下, ITP)は免疫の働きに異常が生じて自らの血小板を異物と認識してしまい,血小板に対する抗体が作られて,血小板が壊され減少してしまう疾患です」


本「有核細胞は、補体制御蛋白質によって防御されているので、二つ目の機序のような破壊は起きにくい」
大林「補体制御蛋白質なんてものがあったのか……」
本「補体制御蛋白質は、補体成分活性化阻害して免疫系の攻撃から細胞を保護する」
大林「そんな防護服みたいなの持ってたのか有核細胞。あっ、赤血球は核が無い!」
本「まぁ、この防御をもっていても、自己抗体の標的になると貪食細胞やNK細胞などに破壊されるけどね」
大林「治療法は?」
本「赤血球や血小板、白血球などの血球細胞の主な処理場である脾臓摘出や、大量の非特異的IgGの投与(IVIG,免疫グロブリン静注療法)でFcレセプターによる抗体結合細胞のとりこみを阻害し、抑制性Fcレセプターを活性化して炎症物質産生を抑制する」

今回はここまで!
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