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1日15分の免疫学(105)アレルギー疾患⑩

本「局所的な過敏反応アルサス反応Arthus reactionと呼ばれる。感作抗原に対するIgGがあると、抗原が皮下に入ると循環血液中から皮下に入ったIgGが局所で免疫複合体を形成する」
大林「その免疫複合体がマスト細胞のレセプターに結合する?」
本「そう、マスト細胞や他の白血球のFcγRⅢなどのレセプターに結合して、局所炎症反応と血管透過性亢進を起こす」
◆復習メモ
マスト細胞は、腸管や気道の粘膜下組織や皮膚直下の真皮など血管が多い上皮組織直下の結合組織に特に多く見られる。
・マスト細胞表面にはIgEFcレセプター(FcεRⅠ)IgGのFcレセプター(FcγRⅢ)がある。
・これらに抗体が結合するとマスト細胞は活性化され顆粒を放出し、炎症性脂質メディエーターサイトカインを分泌する

大林「今更気づいたんだけど、IgGのレセプターだからγ(gamma)、IgEのレセプターだからε(epsilon)なのか」

大林「で、血管透過性が進んだら白血球が血管から炎症部位に入る……」
本「特に多核白血球が入る」
大林「好中球のこと?」
東邦大学「好中球、好酸球、好塩基球の核は、いくつかつながったように見えるので、多形核白血球ともいう。ただし核を複数持っているわけではない」

本「免疫複合体は、補体活性化して補体断片であるC5a産生を促進する」
◆復習メモ
抗体は、抗原と結合しているとFc部分で補体の古典的経路を活性化する
・補体の古典的経路が活性化されると切断が生じてC5aC5b6789ができる
・C5b6789は別名『膜侵襲複合体』、細菌に穴を開けて破壊する
C5a好中球遊走させ、C5aC3aマスト細胞も活性化して血管の透過性亢進も引き起こし、炎症細胞が組織に移動しやすくする

血清病について

本「全身性の過敏反応である血清病serum sicknessは、不十分に異化された外来性抗原の多量投与によって起きる」
Wiki「血清病(けっせいびょう)は、ヒト以外のタンパク質に対するアレルギー反応の一種」

大林「不十分に異化とは???」
本「ウマ抗血清を投与した後に高頻度で起こったため、そう名付けられた」
大林「ウマの血清か~」
本「抗生物質のない時代ウマ肺炎連鎖球菌免疫を獲得させることによって作られた抗血清を肺炎連鎖球菌感染症の治療に用いていた」
大林「なるほどね。その際に過敏反応が起きていたってことか」
本「ウマ血清投与の7~10日後に発症する。この期間はつまり、外来性のウマ血清抗原に対するIgGが用意されるに必要な期間と一致する」
大林「血清病ってどんな症状?」
本「悪寒、発熱、発疹、関節炎、ときに糸球体腎炎。蕁麻疹は血清病に特徴的な発疹だね」
大林「蕁麻疹ということはマスト細胞のヒスタミンか」

本「血清病は一過性免疫複合体誘発性症候群典型例で、外来性蛋白質の単回投与は、抗ウマ血清抗体応答を引き起こし、その抗体が外来蛋白質と循環血液中で免疫複合体を形成する」
大林「そしてその複合体が血管に沈着して補体やマクロファージを活性化して…」
本「発熱、皮膚や結合組織の血管炎腎炎関節炎を起こし、外来タンパク質を取り除かれると改善する」

本「血清病でのマスト細胞の脱顆粒は、IgGを含む免疫複合体のFcγRⅢへの結合や、免疫複合体による補体活性化でつくられたC3aとC5aによって起こる。血清病は通常自己限定的の疾患で、2度目の抗原投与後に発症する場合は1~2日以内に症状が出る」
大林「早くない?」
本「10-14をみて」
大林「えらい戻るな、今14-15やで。えーと、ある種の抗原はB細胞応答を誘導するためにT細胞の補助を必要としない……胸腺非依存性抗原か!」
◆復習メモ
一部の抗原はT細胞の補助を必要としない(ペプチド特異的ヘルパーT細胞に依存しない)胸腺非依存性抗原(TI抗原)と呼ばれ、IgMと一部のIgGの抗体産生を惹起し、初期の防御免疫応答を担う。
※胸腺依存性抗原thymus-independent antigen(TI抗原)。TI-1とTI-2の二つのタイプがある。
この場合、限られたアイソタイプへのクラススイッチであり、メモリーB細胞への分化誘導はない
しかし、T細胞応答を惹起できない病原体に対する生体防御において非常に重要。


本「獲得した抗体反応が感染性病原体を排除できず抗原持続的に存在する場合、免疫複合体病的沈着が起こる」
大林「え、せっかく手に入れた適応免疫が……つら…」
本「増殖し続ける抗原に多量の免疫複合体が作られ、微小血管に沈着し、皮膚・腎臓・神経など多くの組織や臓器を損傷する」
大林「せっかく手に入れた武器が不完全なばかりに…」

本「吸入したアレルゲンがIgE反応よりIgG反応を誘発した場合にも免疫複合体は発症する」
大林「そんなことあるの、IgEのイメージだけど」
本「アレルゲンが大気中に比較的多量に存在すると起こる」
大林「大量だとIgGも誘発されるの?ちょっとよくわからない……胸腺非依存性抗原の確率が上がるってことかな」

本「高用量で再暴露した場合、肺胞壁内免疫複合体が形成される」
大林「肺機能障害されるじゃん」
本「干し草のホコリやカビの胞子などを繰り返し曝露される農夫などの職業では農夫肺farmer's lungを発症し、抗原曝露が続くと肺の内壁は非可逆的に損傷する」
Jstage「農夫肺は, 酪農従事者 (サイロでの干し草, 堆肥作成作業など) に認められる, 過敏性肺 (臓) 炎の一種である。 欧米では, 最も古くから知られている過敏性肺 (臓) 炎である。 本邦では北海道, 岩手県, 北陸に多発する。 発症の季節は, 主に11月から3月の冬季間に集中する。」

大林「非可逆的な損傷……つまり、治らないってことか」

今回はここまで!(夏コミの新刊作成がようやく終わら……しかしまだやることが…やることが多い!)
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