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1日15分の免疫学(111)自己免疫と移植④

ここまでのまとめ

本「ここまでのまとめ。自己免疫の抑制免疫能バランス調整のため、自己反応性リンパ球完全には排除されず、正常な免疫レパートリーに存在するが、通常は活性化されていない」
大林「未知の抗原に対応するために……そして、その通常から離れて活性化してしまうのが自己免疫疾患か」

自己免疫の抑制機構について

本「自己免疫が起こらないようにさまざまな抑制機構がある」
大林「まず最初に、T細胞胸腺B細胞骨髄自己に反応する細胞は排除されるよね」
本「CD4T細胞は、自己反応性FoxP+T細胞(内在性Treg細胞)集団が産生されて自己免疫応答を抑制する」
大林「ヒューッ!免疫界の守護神!かっこいい!」

本「次に、末梢性免疫寛容にはアネルギークローン除去誘導性Treg細胞の産生がある」
大林「Treg細胞はどう反応して抑制してるのか説明おくれよ」
本「弱い自己反応性をもつリンパ球は末梢で活性化すると、Treg細胞が抑制する」
大林「ほぉ、それはどんな仕組みで?」
本「Treg細胞認識する自己抗原自己反応性リンパ球反応する自己抗原近傍に存在する場合、Treg細胞はその自己反応性リンパ球を抑制できる」
大林「えぇ……よくわからん。Tregは自分が認識してる自己抗原の近くにある自己抗原に反応する細胞を抑制する……Tregの認識って守るべきものって感じ?だから近くにある自己抗原に反応するのを止める……???感覚的にはわかるけどその仕組みが構築された流れがわからん」
本「これにより、制御性細胞は自己免疫による炎症部位へ遊走して炎症を抑制できる」
大林「突然Tregが遊走した!ケモカインとか関係ないの?え?結局よくわからないんだけど?もっと詳細に説明しておくれよ」

本は答えない!!!まだまだ大林の知識が足りないようだ!

本「最後の機構は、活性化リンパ球に内在するプログラムによるアポトーシスFasによる外因性アポトーシス誘導シグナルへの感受性の獲得
大林「すごい表現するな?!つまりは死ぬための自殺スイッチをみんなに押せるように細胞表面に出すってことじゃん!ヒイッ、つらい、萌える!」

自己寛容喪失による組織損傷について

本「自己寛容喪失が自己反応性リンパ球を活性化して組織損傷を引き起こす機序について紹介する」
大林「おぉ…本来であれば病原体排除の機構が自己に牙を……」

本「病原体とは異なり、自己蛋白質除去されることはないので基本的に慢性的に持続する」
大林「まぁ……そうだよね、自己を構成する要素だから」

本「自己免疫は自己抗原特異的な適応免疫応答によって引き起こされている」
大林「つらい……本来、適応免疫はピンポイントで敵を狙ってカスタマイズ攻撃するから強いのに…それが自己に向いてしまうなんて」
本「しかし、何が引き金となって自己免疫疾患を発症するのか我々は理解していない」
大林「まだ謎だらけってことか。どの自己抗原に反応してるかはわかっていても、何がきっかけなのかはわかっていないということか」
本「感染性微生物によって引き金が引かれる自己免疫もあるが、明白の感染性微生物の関与なしに免疫系との内的破綻によって引き起こされるものもある」
大林「感染性微生物によって引き金が引かれるケースは自己抗原と似てるから?」
本「そう。似たエピトープを発現するから」
WEB「エピトープとは、抗原蛋白質のうち、抗体が結合する部位のこと。 抗体は、相手とする蛋白質が持つ特定の立体構造に反応して結合する。 これがエピトープで、5~10個ほどのアミノ酸や糖の集まりで構造が作られている。」


本「自己免疫疾患は、臨床的観点からは臓器特異的自己免疫疾患と全身性自己免疫疾患にしばしば分類される。どちらも数少ない例外あれど慢性化する」
大林「自己抗原はなくならないもんね。例外って?」
本「1型糖尿病」
大林「え、β細胞は攻撃され続けるのではなく、滅ぼされてしまうってこと?」
日本内分泌学会「1型糖尿病(急性発症)は、膵臓にあるインスリンを分泌するβ(ベータ)細胞が破壊され、インスリンが出なくなるため慢性高血糖状態となり、発症します」
大林「ということは1型糖尿病の患者の体内にはもうβ細胞がいないのか…」


本「臓器特異的自己免疫疾患では、1つまたは複数の臓器由来の自己抗原が標的となる」
大林「そしてその臓器が標的になるわけか。臓器特異的自己免疫疾患ってたとえば?」
本「甲状腺を標的とする橋本甲状腺炎Hashimoto's thyroiditisとグレーブス病Grave's diseaseや、インスリン分泌膵臓β細胞が標的となる1型糖尿病など」大林「橋本病?聞きなれてる病名だけど、自己免疫疾患だったのか!」

本「全身性自己免疫疾患は、SLEやシェーグレン症候群など。これらは皮膚、腎臓、脳などさまざまなな組織が同時に傷害される」
※SLE:systemic lupus erythematosus全身性エリテマトーデス

※シェーグレン症候群:涙腺、唾液腺をはじめとする全身の外分泌腺に慢性的に炎症が起こり、外分泌腺が破壊されてドライアイやドライマウスなどの乾燥症状が出現する病気

大林「脳は特に怖いな……生命維持まで脅かされる…いや、脳以外も生命維持に大事だけどさ」
本「橋本病では甲状腺ペルオキシダーゼに対する自己抗体がつくられる」
甲状腺ペルオキシダーゼ:甲状腺ホルモンを合成するために不可欠な物質
※甲状腺ホルモン:体の新陳代謝を促進するホルモン。すべての臓器の機能と代謝調節をするために大変重要な役割を果たしている。

大林「1型糖尿病はインスリンに対する自己抗体がつくられるよね」
本「そう。一方、SLEは細胞内のクロマチンに対する抗体や、mRNAスプライシングに関与する蛋白質スプライソソーム複合体に対する抗体など、全身のどの細胞にも大量に存在する抗原に対する抗体」
大林「怖……そりゃ全身で起きてしまうわ」

本「臓器特異的自己免疫疾患と全身性自己免疫疾患は厳密に区別することはできない」
大林「微妙な事例があるってこと?」
本「自己免疫性溶血性貧血は、単独で起これば臓器特異的自己免疫疾患だが、SLEの一症状として起これば全身性自己免疫疾患の一部」
大林「なるほど、そういうことね」

IBDについて

本「慢性炎症性疾患として炎症性腸疾患inflammatory bowel disease:IBDがある」
大林「有名だよね、潰瘍性大腸炎」
本「IBDは、潰瘍性大腸炎ulcerative colitisとクローン病Crohn's diseaseの2種類に分けられる」
大林「ulcerative colitis……UC。『腸よ鼻よ』でUC食って出てたけどそのUCか!自己免疫疾患なの?」

本「いや、IBDは自己抗原標的にしないけど、自己免疫疾患多くの特徴を有している」
大林「何が標的?」
本「腸管に定住する常在細菌叢由来の抗原」
大林「オゥ……そういうことか。あれ、この章では常在細菌は自己と見なすんじゃ…」
本「だから、IBDは厳密には自己免疫疾患の境界例だね。IBDでは免疫寛容の破綻が起こり、異常な免疫応答による組織破壊が腸管に限定される」
大林「まるで臓器特異的自己免疫疾患じゃん」

エフェクターT細胞による自己免疫疾患

本「エフェクターT細胞が主な原因とされる一般的な自己免疫疾患は、1型糖尿病、乾癬、IBD、多発性硬化症」

大林「推しが主な原因……いや、まぁ、適応免疫が自己免疫疾患を起こしてるのであって、適応免疫はT細胞とB細胞が担ってるから、そりゃ推しが主因の確率1/2だよね……」
本「MHC分子と結合した自己ペプチドまたは常在細菌叢由来ペプチドの複合体を認識した特異的なT細胞が集まり、自然免疫系を活性するかまたは組織の細胞を直接傷害して局所に炎症を起こす」
大林「なるほど」

本「疾患の発症における抗体の役割は妊婦証明できる」
大林「なんで?」
本「胎盤をT細胞は通過しない」
大林「あ!IgGだけか!通過するのは。胎児は半分は自己とは異なるから、攻撃されないように適応免疫から守られてる」
本「胎盤を介して胎児新生児自己抗体が伝搬されることで発症する自己免疫疾患もある」
大林「母親由来の抗体だからそのうちなくなるよね?」
本「そうなれば症状は消えるよ。でもその前に自己抗体が臓器傷害を起こす場合がある。SLEやシェーグレン症候群の母親から生まれた新生児で房室ブロックが起こるのはそれ」
大林「房室ブロックとは?」
WEB「房室ブロックとは、房室結節の働きが悪くなり、心房の興奮が心室まで十分に伝わらない状態
大阪医療センター「心房は動いているけれども心室の脈がなくなってしまうのが房室ブロックです。心臓の働きの主役は心室なので、心房がいくら動いても、心室が止まっていては心臓全体が止まっていることと同じになります。」
大林「やばいやつや」

今回はここまで!
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